第2321話 262日目 久しぶりの出勤だ。(まずは報告だ。)
研究所の3階 所長室。
「・・・書類が溜まってる。」
武雄が出勤してきて机の上の書類の山を見て呟いていた。
「所長、おはようございます。」
マイヤーが所長室の扉の所から言ってくる。
「おはようございます。
マイヤーさん・・・これ多くないですか?」
「注文書関係ですからね、しょうがないです。
仮発注は私の方で終わらせているので、業者への注文はされていますよ。」
「ありがとうございます・・・多いなぁ・・・」
武雄が愚痴りながら席に座る。
「所長、王都での事で打ち合わせしますか?」
「あー・・・一息入れたらしましょう。
10時くらいで。」
「わかりました。
なら・・・まずは私とヴィクター殿で良いでしょうか。
所長からはどのような話を?」
「主に西側の情勢と王都の動きの話ですよ。
あと、今回の魔王国との戦争期間中に王都の壁に試練を・・・違った、試験をするそうです。」
「試練と試験・・・同じようで違っていますよね。
それは面白そうなので聞きましょう。」
マイヤーが頷く。
「マイヤーさんの方からは?」
「研究室の盾と駆動部の試験は1回目が終わっています。
報告書は明日期限ですので、回ってくると思います。」
「マイヤーさんの事です、トレーシーさんから口頭報告を受けていますよね?」
武雄が聞く。
「はい、物として大きな破損もなく想定通りの成果は出たとの事ですが、共に課題も見つかったとの事です。」
「・・・耐久性かな?」
「そちらは報告書をお待ちください。
こちらとしては、慣例の戦争関連の準備状況の報告をしたいです。
試験小隊と戦争の方は私から、物資の方はヴィクター殿からとなると思います。」
「わかりました。
現時点で緊急を要する物はありますか?」
「所長の机の上の決裁書類が一番の緊急事項ですね。」
マイヤーが言う。
「打ち合わせまでに見ておきます。」
武雄が苦笑しながら頷く。
「はい、では・・・10時に所長室で良いでしょうか?」
「私としてはどこでも良いですが、ここが一番楽でしょう。
あ、それと朝一ですみませんが、お菓子とお茶を用意してくれるようにアスセナさんに言ってください。
たぶん、それなりに喉も乾くでしょうしね。」
「わかりました。」
マイヤーが所長室を後にするのだった。
「とはいえ・・・この量を10時までに見るって結構大変なのかもなぁ。」
武雄は愚痴りながら書類の山の一番上の書類を取りながら言うのだった。
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研究所の2階 研究室。
「「・・・」」
トレーシーと鈴音が自身の机で記述していた。
「・・・はぁ・・・上手くSL-01液(赤スライム体液)が機能しなかったなぁ・・・
ピストンが最上部に到達した時に天井部分との隙間にSL-01液が入るようにして、一気にピストンが下がって気化すると思ったんだけどなぁ・・・」
鈴音が書くのを止めて天井を見上げる。
「スズネ、ピストンが下がる時に気圧の減少でSL-01液が気化して、それをピストンが上がる時に圧縮して爆発の宝石が反応してピストンを強く下げる・・・だよね?」
チビテトが言ってくる。
「そう。でも、元々爆発の魔法だけでも動かせるようになっている所に、潤滑性の向上と馬力アップが出来るようにSL-01液を使用しようと思っているのよ。
圧縮率はそこまでなくて良いし、完全に気化しなくてもと思っていたんだけど・・・想定以上に気化しなかったなぁ・・・
駆動部をバラしてわかったけど、SL-01液が大量にシリンダー内に残っていたんだよね・・・」
鈴音が言う。
「2ストロークにしたからじゃない?さっきの流れなら、4ストロークの機構が良いと思うよ?」
「4ストだと考えないといけない構造部が2ストよりも多くなると思うし、その分大きくなりそうなんだよね。」
「でも、今のままだとスズネが考える船用の駆動部にはなりえないんだよね?」
「そうだねぇ、少なくともSL-01液の気化率の上昇と消費魔力を下げる為の宝石の極小化が欲しいんだよ。
そうすれば何とか物が出来ると思うんだけどなぁ。」
鈴音が考えながら言う。
「色々試行錯誤して行くしかないだろうね。
タケオへの報告書終わったの?」
「まだ・・・課題部分までは書いたんだけど、その解決方法の見通しが書けないんだよね。」
「・・・報告書に課題の解決方法まで書くの?」
「書いた方が良いと思って・・・だから考えているの。」
「そこは今回の報告書では課題を列記して、『取り組みます』で終わらせて、次の実験でスズネなりに解決方法を試して~、と報告書に書けば良いんじゃない?
その時に上手く行ったならその通りに、ダメならこの時に他の方法も記載してさ。」
チビテトが言う。
「ん~・・・確かに当初の『まずは上手く動かす』という所はクリア出来ているんだよね。
そこをまずは強調して書いた方が良いのかなぁ?」
「だと思うよ。」
「期日は明日だからそういう風にしようかな・・・上手い解決方法が浮かばないし。」
鈴音が悩みながら報告書を書くのだった。
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