第2312話 マイヤーが閃いた。(町を落とす簡単な方法はわかっています。)
研究所の3階 総監室。
「爆発音もなく、報告も飛び込んで来ない・・・成功したな。」
マイヤーがお茶を飲みながら開けている窓を見ている。
「これで、当初の目的の足掛かりは出来たと・・・盾の試作も4つとも終えて、あれは明日の試験だったか?
所長が帰ってくる前に終わらせておいた方が良いし、何か改善点があるなら所長が戻る前に修正したいだろうしな。」
「失礼します。
総監殿、決裁をお願いします。」
ヴィクターが入ってくる。
「はい、机に置いてください。
・・・とりあえず、大丈夫なようですね。」
「はい、走りこんで来ないので問題ないのでしょう。
それにしても・・・まさか、魔力を使って物が動かせるようになるとは思いもしませんでした。」
ヴィクターが言う。
「ええ、それは私も驚いていると同時に感動しています。
・・・魔法師は戦争の道具でしたが、これからは用途が変わって・・・違いますか、もっと生活に魔法が使われるという事ですね。」
「確か、適性は国民の半数という事でしたね。」
「はい、一応、統計的にはそうなっています。
魔法師は魔法師と結婚が奨励され、強い魔法師を生み出す事を望まれている・・・そう教えられてきました。
ですが、人の恋愛という物は適性だけで成り立つ物でなく、適性がある者と無い者が結婚をする事も多いのが現状です。
強い適性を持つ者は比例して魔力量が多く、兵士になっています。
そして適性が弱く、魔力量が少なく兵士になれないのなら冒険者や治癒、建設の石造りの仕事がある。
と思っていましたが、今度はそこに操船の仕事があるようですね。」
「物流の要になっていただかないといけませんね。」
「ふむ・・・ヴィクター殿、例えばですよ?」
「はい。」
「今の魔法師専門学院に入らない子達を集めて、魔力量を伸ばし、特定の魔法を徹底的に鍛える・・・そんな学院があっても良いと思いませんか?」
マイヤーが言う。
「・・・進む道を限ったという事でしょうか?
ケアを専門にする道、石材を作り出す事を専門にする道、操船を専門にする道・・・ですか?」
「ええ、魔法の適性がある者が皆、兵士になりたいと思うとは限らないでしょう。
戦闘は苦手という子に道を用意してあげるのも良いかもしれません。
まぁ、うちの息子がそれに当たりますが。」
「そうでしたね。
王立学院にご入学されて、ジーナの監視を・・・出来ているのでしょうか?
親の私が言うのも変ですが、ジーナは物事を卒なく熟しているように見えているはずです。
子供の頃から努力している姿は外には見せないように教育もしていましたから・・・たぶん、今も出来ていると思うのですがね。
なので、王立学院内でも外に居る時はジーナは完璧な者に見られている可能性が高いのです。」
「はぁ、監視がどういった事をしているかはわかりませんが・・・ジーナ殿は素養が高いですから、監視の意味合いは低いと思います。
それよりもうちの息子は授業に付いていけているのかを心配します。」
「ははは、そこは大丈夫ではないでしょうか。
王立学院に入ったのです、余程の堕落をしなければ学べる環境に居れば自ずと学ぶ物でしょう。」
「そうですかね・・・」
「特化した教育というのも良いかも知れませんが、費用がどうなるか・・・ではないでしょうか。
兵士になるなら王都にでしたか。
言葉は悪いですが、現状では魔法師になれない子供達の救済となってしまうでしょう。
今は王都でというのは難しいかもしれませんし、なにより、その考えは地域の振興に加わる為の教育と捉えられます。
我が家や研究所では今の所、運営は出来ないと思われます。
この案はエルヴィス家の管轄になると思います。」
ヴィクターが言ってくる。
「ですよね・・・ん~・・・構想だけでも所長経由でエルヴィス家に提出して見ますかね。」
「そうですね。
折角、良い案が出たのです。
構想案だけでも向こうに提出をして、こういう考え方もあるとお伝えするのも良い刺激になると思われます。」
「なら、所長が帰って来るまで案を作っておきますかね。
・・・所長が楽しそうに内容を書き足しそうですね。」
「まぁ、そこは主ですし。」
マイヤーとヴィクターが苦笑しながら言うのだった。
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王都の壁の拠点の街の城門が見える街道沿い。
武雄達が休憩をしていた。
「・・・」
武雄が足を投げ出してリラックスした体勢で座っている。
目線の先には城壁があった。
「所長、もう少ししたら出立しましょう。
予定では、この次の町まで行きます。」
アーキンが言う。
「ええ、そこはいつもの事ですので問題ありません。」
「何かあるのですか?」
「いや・・・魔王国の軍を率いていたとしてあの城門の突破をどうやるかな・・・と。」
「・・・所長、私、簡単な方法を思いつきました。」
「ドラゴンは使っちゃダメですよ。」
武雄が即答する。
「・・・方法がなくなりました。」
「それをやられたら我が国では誰も勝てませんよ。
基本的にアズパール王国が魔王国に勝てない要因ですからね。
なので、想定としてはドラゴン抜きの王都の中央軍でやった場合です。」
「・・・訓練は見せて頂きましたが・・・城門を落とすしかないですよね。
どうやって落とすか・・・」
「所長、馬達に飼葉と水をやり終えました。
ミア殿とクゥ殿が馬達と雑談しています。」
ブルックがやって来る。
「はい、ありがとうございます。
ブルックさんも座って、休んでください。」
「はーい。
で、所長とアーキンは何を話していたんですか?」
「うん?魔王国の軍を率いる者となったと仮定して、あそこの城門を突破する方法は何があるかなと。」
「所長、私、短時間で落とす方法を思いつきましたよ!」
ブルックが嬉しそうに言ってくる。
「ドラゴンは使っちゃダメですからね。」
「となると難しいですね。」
ブルックが目を逸らしながら言うのだった。
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