第2307話 第3皇子一家と戦争の話。(将来的に関の強化は必須です。)
「はぁ・・・戦争かぁ・・・私としては実家にいる時も王城に居る時も待っているだけだったからさぁ。
不安しかないんだよね。」
アルマが言う。
「そうですね。
お爺さま方は行かれますが、私達は留守を守り、報告を待つしかないですよね。」
レイラが言う。
「ふむ・・・タケオさん、今回の慣例の戦争では変化がある・・・と聞いています。」
ウィリアムが言う。
「変化ではなく、魔王国の事情に巻き込まれただけです。
それはお聞きに?」
「ええ、今回の慣例の戦争に地方貴族ではなく魔王国の中央軍が派遣される。
だが、それは見せかけであり本命は慣例の戦争の終結後にある。
魔王国中央軍は南部にあるデムーロ国という国家を蹂躙する為と伺っています。
これはタケオさんが収集した情報ですね?」
「ええ、私が魔王国に行って聞かされたことです。」
ウィリアムの言葉に武雄が頷く。
「父上は警告と威圧と自慢をされたと認識していましたよ。」
「自慢?・・・私から言わせれば自慢ではなく、事実を見せられたと思っています。
下手な幻想を企てても何にもならない決定的な力の差を教えられた・・・これだけです。」
「ふむ・・・対魔王国は厳しい物があるのですね?」
「ええ、事実を見て・・・戦力を見比べれば我が国の戦力は防衛が何とか出来るだろう程度しかありません。
それを魔王国に面した貴族達だけで押し留めるという戦略は・・・良く今まで国家が維持出来ていたなと言わざるを得ません。
率直に言って、アズパール王国における対魔王国の戦略は間違っていたと評価しなければなりません。」
「・・・厳しい現実ですね。」
「はい、残念ながらこれが現実です。
王都の方々は『今までは何とかなっていた』『対している貴族が軍備の強化を怠った』とか言うかもしれませんが、そうではなく、正しく認識をするのなら『魔王国にやる気がないから生かされている』だけです。
ウィリアム殿下、正しい認識を持ってください。
魔王国側の貴族の話ではなく国家としてそう思わなければなりません。」
「・・・うん、そうですね。
わかりました。
クリフ兄上への引継書にその辺の事は最重要として認識するように促します。」
「はい、今の魔王国国王はアズパール王国に理解があります。
が、次期国王が理解があるとは限りません。
慣例の戦争が終わり次第、次期国王の情報を取りにはいきますが、容易に知れる内容ではないでしょう。
最悪はわからないと考えてください。」
「タケオさんがわからないのなら現時点ではアズパール王国の誰も知り得ないでしょうね。
で、タケオさん、負けない国家を作る方法はあるのですか?
魔王国で『簡単に負ける気はない』と言ってきたのですよね?」
ウィリアムが聞いてくる。
「まぁ・・・関の強化案しかないのですけどね。
相手がいくら強大でも全軍が一気に攻めてくるというのは考え辛いでしょう。
それに関に到着する道幅を狭くして対峙戦力を局地的に少数にさせる方法はゴドウィン伯爵と話しています。」
「道幅を狭く?」
「はい、関の城門に達する前に道幅を狭くし、2列ぐらいでしか進めないようにします。
そして守る側は道の横に登れないくらいの壁を作り、壁の上から攻撃が出来る物とします。」
「・・・タケオさん、それ黒板に書いてくれますか?」
ウィリアムが言う。
「ええ・・・簡単に書くとですね。
関の門がここで・・・通常は真っ直ぐ行けますけど、戦時はそこにこうやって蛇行させる道を作って、上から攻撃を出来るようにしてあげるんですよ。
剣と矢が尽きるまで来る者を徐々に減らすという私達は体力が、向こうは忍耐力が問われます。」
武雄が黒板の前に書きながら言う。
「それは・・・エゲツナイ方法ですね。」
ウィリアムが言う。
「負けない方法を考えるとこうやって少しずつ減らしていくのが一番です。
私が魔王国で言ってきたのは『我々は勝てる、だが、その為には相当な犠牲者が出る。
勝ち取った領土に対して犠牲者数が割りに合わない』と思わせる戦略をする・・・です。
『1万名用意して、死傷者が4000名出たとして、それは勝利なのでしょうか?』という問いかけをしています。」
武雄が言う。
「なるほど・・・タケオさん、この案をする上で問題は?」
「建設予算と維持予算。」
「なるほど。」
ウィリアムが頷く。
「どう考えても魔王国側の貴族の兵士数では魔王国への侵攻が出来る訳もなく、そもそも向こうの領土を手に入れたとして対応する人員が居ない。
地元民からの反発も予想されるし、そもそも言う事を聞く可能性は低い・・・そんな土地は要りませんよ。
なので、魔王国側において重要な事は、どうやって防衛をするかとなります。
しかし、今までの想定では防げないというのがわかりました。
新たに発覚した対峙戦力を元に防衛計画を考えないといけません。
それは、私とエルヴィス伯爵、ゴドウィン伯爵だけの問題ではなく、魔王国側の貴族全員で考え、そして国家としてどうするかの判断を王都で最終的にして貰わないといけません。」
武雄が言う。
「はぁ・・・わかりました。
それは王都で僕が皆にそれとなく言っておきます。
ですが、僕が王都に居るのはあと少しです。
領地異動をして魔王国側の総意として王城に提案するしかないでしょう。
その際の資料は作ってくださいね。」
「ははは、私は陛下直属、作るのはゴドウィン伯爵に任せましょう。
同様な内容を私は研究所からの案という形で上げる事になるでしょうけども、全く一緒でなくても良いのでしょうからね。
最終的にはウィリアム殿下が3伯爵と話して決めればよろしいでしょう。」
「タケオさんがまとめた方が早そうですけどね。」
「早い、遅いではなく、現場の領主達が決めたというのが大きいですよ。
私は領主ではないですし、上司が違います。
相談には乗りますよ?でもそれまでです。
あとは実務者達で話してください。」
武雄が言う。
「ちなみに、タケオさん、タケオさんが報告する案はどんな感じにするの?」
レイラが聞いてくる。
「それはもちろん、採算度外視でやりたい事てんこ盛りの強固な関案を書く気でいますよ。
それがお仕事ですからね。」
「あー・・・その報告書見たくないです。」
ウィリアムが巡り巡って来るであろう面倒事に嫌そうな顔をさせるのだった。
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