第2305話 ジーナとスミスが来ましたよ。(ジーナもスミスも優秀です。)
15時くらいの王都守備隊の訓練場。
「「今日もよろしくお願いします。」」
体操服姿のジーナと動きやすい格好をしたスミスが来ていた。
「はい、今日もよろしくお願いします。」
訓練の指揮をとる王都守備隊員が返事をする。
「我々は既に始めていますので、お二人ともお好きな時に入ってくださって結構です。」
「はい。」
「はい、わかりました。」
スミスとジーナが返事をする。
「・・・で、1つ質問なのですが、あそこに元配下が打ちひしがれているのですが。」
ジーナが項垂れているボナッタ達を見ながら言う。
「あー・・・午前中にキタミザト様が来られまして訓練を付けて頂いたのです。」
「え!?ご主人様が!?・・・来たかった!」
ジーナが残念がる。
「・・・ジーナ殿、その・・・狼形態の時はどうやって戦うと考えていますか?」
「普通なら相手の周りをまわりながら爪で攻撃しつつ、相手を疲れさせてから止めで噛み付きでしょうか。
不意を突いていきなり噛み付くというのもありかもしれません。」
ジーナが考えながら言う。
「ふむ、やはり最後は噛み付きですよね。」
「はい、ですが、普通ならばです。
ご主人様には通用しないと思いますが。」
「ええ、そうですね、事実通用しませんでしたね。」
「ご主人様の防御の要はシールドを縦横無尽に展開させる事です。
これを噛み付きや速度を乗せた爪といった狼程度の攻撃では・・・破れるとは思えません。」
「そのとおりでしたね。」
「ご主人様を負かすのならご主人様が対処できない速度で攻撃するか、シールドを展開させられても破るだけの力で挑まなければなりません。
ドラゴンのブレスやアリス様の渾身の一撃並みの力が必要です。」
「・・・我が国にはキタミザト殿に土を付けられる者は居ないでしょうね。
ジーナ殿は出来ますか?」
「・・・私の剣では難しいかと。
スミス様の精霊のマリに手習いはしていますが・・・今は速度も力も足らないと思います。
今のままではご主人様に攻撃が通じるとは思えません。
ハルバードや槍といった物を全力で振り回してなんとか出来るかと思うのですが・・・」
「ハルバードはともかく・・・槍ですか・・・
適した木材が我が国にはあまり無いですね。」
「はい、そう伺っています。
それにハルバードを作るのも費用がかかりそうですし、使ったからといって勝てる訳もなく、武器に慣れないといけないという事はどなたかに教わらないといけないかと・・・使い手がわからないのでハルバードは使えないとなってしまいます。
なので、ご主人様には勝てる気がしません。」
「それは・・・良い事なのでしょうか。」
「見上げる壁が大きいのが辛いです。」
「大きすぎるのはどうなのでしょうか。
・・・さて、参加しますか。」
王都守備隊員が言ってくる。
「はい、よろしくお願いします。
・・・ちなみにあそこまで打ちひしがれているのは何かあるのですか?
訓練で普通に勝ったり、負けたりの日常ですよね?」
「あー・・・キタミザト殿が一撃で勝ちましたから。」
「?・・・狼形態を一撃で?
いつものご主人様の攻撃方法を考えると・・・シールドで防いで首辺りを切りつけたのでしょうか。」
「・・・それも常人からしたら異常な攻撃方法なんですが・・・今回は違います。
噛み付いてきた口に手を突っ込まれて、魔法を放ちました。」
「ご主人様、なんてことを・・・」
ジーナが両手で顔を押さえる。
「んー・・・僕達もそれが出来るようになりますか?」
ジーナと王都守備隊員の話を聞いていたスミスが聞いてくる。
「スミス様、ご主人様だから出来る事です。
スミス様は真似もしてはいけません。
腕を持って行かれます。
避けてください。」
「そうですね。
当主になるのです、そういった危険な事はなされない方が良いでしょう。」
ジーナと王都守備隊員が言う。
「・・・タケオ様は現当主ですが?」
「あそこのご夫婦は別格ですので。
ただの人間である私達は個々で危険は冒さずに集団で対処する事を覚えないといけません。」
「そうですか・・・うん、僕は凡人ですからね。
天才を真似てはいけないのでしたね。」
「そうです、我々は平均よりかは少し上の能力や適性を持っているだけで、天才方からすれば誤差の範囲でしょう。
地道に努力をしないといけないという事です。」
「そうですね。」
スミスと王都守備隊員が意気投合している。
「いや、スミス様?
同年代の者達からすればスミス様は秀才の域だと思いますが。」
「ジーナ・・・僕は凡人なのです。」
「はい、先ほどもスミス様は言っておりましたね。
自己評価において過大な評価をされないのはご立派だと思います。
ですが、客観的に見てスミス様は天才ではないかもしれませんが、凡人ではなく秀才の方に入ります。
努力をし、鼻にかけず、他者に意見も聞き、冷静に判断をされております。
それに精霊魔法師になられており、精霊を従え、次期当主に相応しいと周りも認めるでしょう。
これを秀才と言わずして何を秀才と言うのでしょうか?」
「・・・周りがそう思っていれば良いんじゃないですか?
ですが、アリスお姉様やタケオ様を見ていると僕は何も出来ない凡人です。
家柄の差、教育の差で何とか対応をしていますが・・・僕は何もしていないのです。
与えられた事を熟しているだけ。
・・・だから僕は凡人なのです。」
「ならば、スミス様は秀才にならないといけません。
これからエルヴィス伯爵領は大きく変わるでしょう。
凡人のままでは治めきれない可能性があります。」
「うん・・・少なくとも皆が認めてくれるような判断や行動が出来るように今から知識と体力を付ける努力をしないといけないね。」
「はい、私も凡人の端くれ。
ご一緒に努力していきます。」
ジーナが言う。
「・・・いや、ジーナこそ優秀という言葉が似合う者はいないと思うけどね。」
スミスが呆れるのだった。
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