第2302話 総長と青空会議。(魔法師不足を実感しよう。)
アーキンとブルックは今、ブラージとボナッタの狼形態での対戦をしている。
「・・・なるほどね。
盾に当たって突破しようとする者とその後ろから飛び越えて後ろを攻撃する者が1組で突っ込んでくると。」
武雄が見ながら言う。
「ええ、至って簡単で誰もがわかっていますが、これが厄介です。
盾で防いだとしても・・・ほーら、飛び越えて後ろに回り込まれるでしょう?
後ろに控えている者達は基本盾はありませんからね・・・まぁ、我々はシールドで対応しますけど。
兵士達では下手したら混乱してしまいます。
あ、アーキン達が負けましたね。」
総長が言う。
「・・・なるほどね。
確か、前にヴィクターに聞いた時に本気で突撃をしたらこちらが盾で防御していても3割は抜けられるだろうと言っていましたか。」
「ふむ・・・元指揮官が3割と言うのであればそれは確実にでしょうね。
実際は5割は盾を抜けて2割が討ち取られ、3割が敵陣で暴れると考えての発言かもしれませんね。」
「5割も抜けられたらこっちの被害が甚大ですよ。
・・・これは参ったな・・・」
「あれが2500名でしたか・・・これで2足歩行型の獣人が2500名・・・これは大変ですね。
対応策は?」
「・・・盾に突っ込まれる前に前に出て倒しちゃいますかね。」
「うん、盾の意味がないですね。
ですが、そうはいかないでしょう。」
「ですね。
となると、盾を抑える者と飛び越えて来た者を迎撃する者が必要で・・・総長、飛べる距離を知りたいです。
数回全力で飛んで貰って最長距離と最高到達点を教えてください。」
「わかりました。
なら、今始まったのが終わってから確認させましょう。
おい、指示をしておいてくれ。」
総長が少し後ろに控えている部下に言う。
「了解しました。」
王都守備隊員が集合している部隊に小走りに向かう。
「・・・1000名の内2小隊、あとは各小隊に数名ずつか・・・」
「ん?・・・あぁ、地方の魔法師の人数ですか。」
武雄の呟きに総長が頷く。
「回復戦法もありますし、迎撃に回す火力が足らないかぁ・・・」
「ええ、どこでも聞く悩み事の1つですね。
魔法師専門学院に入れる数を増やして魔法師とさせたいのですけどね。
ま、今年から基準が下がったようで魔法師の数は徐々に増えるでしょうけど・・・直ぐにという事ではありません。」
「事ここに至って、魔法師不足という実感が湧いてきました。」
「それは何よりです。
ですが、今直ぐにどうもしようがない事です。」
「足らない足らないと叫んでいれば増やしてくれるものではないでしょうからね。
・・・んー・・・どうした物か。」
「まぁ・・・飛ばせないように牽制するという事であるなら弓ですかね。」
「そう言えば弓を使いませんね?
何かあるのですか?」
「あー・・・そうですね、説明しておいた方が良いかもしれませんね。
弓は有効攻撃距離が100mです。
魔法師が200m~250mで撃つので戦場では活躍しない物と見ておりますね。
一応、城壁からの防衛時に使用すると想定はしていますけど・・・備蓄は少なかったはずです。
冒険者には良く使われている武器になります。」
「まぁ、戦闘で魔法師が居たら弓が届かないでしょうけど・・・備蓄が少ないとは?」
「はぁ・・・城壁の防衛に使う程度しかないという事は常に使う訳ではありませんからね。
それに弓はまだしも矢は消耗品です。
作ってしまうと保管しているだけでも劣化が進みます。
一応、未使用で3年、使用した物は軸が曲がっていなければ再度利用はしますが、使用して1年で破棄です。
・・・経費がかさむんですよ。」
「予算ですか。」
「はい、まぁ・・・ここだけの話、ウィリプ連合国相手には使用するだろうと隊内では考えていますけどね。
特に軍務局が考えている防衛の砦ではね。
弓は魔法師と違って矢さえあれば一般兵が使えますし、一斉に放てて牽制が出来るのは良い事です。
費用さえかさまなければ。」
「・・・一研にもそれは言っています。
矢の大量生産をする必要性が高いだろうと2つの研究所は見ています。」
「・・・供給元があれば何とかなるでしょう。
軍務局がいつ依頼するかはわかりませんけどね。」
「先行手配をするにしても総長の言う使用年数に限度があるのなら今からは出来ないですよね。
総長、もし先行で手配するのなら軍務局に『研究所に先に言って手配をかけた方が良い』と言っておいてください。
私達なら独自判断で素材を備蓄出来ますから。
お値段も据え置きにしておきますよ。
それに直前に言われても数万、数十万は作れませんし、素材の奪い合いをしては意味がありませんからね。」
「そうですね。
それとなく言っておきましょうかね。
それと弓は大丈夫だとは思いますが・・・キタミザト殿は作った方が良いと思いますか?」
「んー・・・作っても良いのですけど・・・私の仕事の客先に弓が得意と思われる種族が居るんですよね。」
「あー・・・部下にも抱えていましたか。
輸入物を?」
「国内物で良いと言われるかもしれませんが・・・輸入しても良いとは思います。
一応、輸入出来そうな弓の種類と価格を聞いてみますか?」
「そうですね。
うちでは使わなくても軍務局から何か聞かれるかもしれませんから知っておいた方が良いですかね。
まぁ、すぐにという事ではないですので戦争が終わり次第で結構ですよ。」
総長が言うのだった。
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