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第2291話 255日目 寄宿舎に帰ろう。(エイミーは強者です。)

武雄の部屋にて。

「そうそう、スミス坊ちゃん、寄宿舎に帰ったら、ちょっと深刻そうな顔をしていないといけませんよ?」

「そうなのですか?」

スミスが武雄に聞く。

「それは・・・ねぇ。

 一応、スミス坊ちゃんとジーナは周りから見れば今日、戦争の事を(・・・・・・・・)知らされた(・・・・・)のですからね。

 にこにこしながら『戦争になりました』なんて言おうものなら気が触れたと思われますよ?」

武雄が言う。

「いや、タケオ様。

 いくら何でも笑顔で『戦争になりました』なんて言いませんよ。」

「うん、私もスミス坊ちゃんはそうであってくれると信じています。」

「・・・で、タケオ様、深刻そうな顔というのは?」

スミスが聞いてくる。

「言葉の通りですよ。

 ま、今日1日くらいはそういう顔をしておけば良いのではないですか?

 寄宿舎に帰って、誰かに話しかけられても『今日は疲れたから』と早々に部屋に入り、『何かあったんだ』と思わせれば追求は今日はされないでしょう。

 そして明日になったら普通に話せば良いと思います。

 ま、あまり楽しそうに話すとスミス坊っちゃんの人格が疑われるでしょうからね。

 胸のうちはどうあれ、今日は表面的には繕わないといけないですね。」

武雄が言う。

「大丈夫ですよ。

 タケオ様の言う通り、今日はこのまま戻って寝る事にします。」

「ご主人様、エイミー殿下には言わなくて良いのですか?」

「大丈夫だと思いますよ?

 それにスミス坊ちゃんがそんな態度を取れば・・・

 あ、ジーナ、ちなみにエイミー殿下とスミス坊ちゃんは何でも話している感じですか?」

「はい、良く話はしています。」

ジーナが答える。

「なら、明日の朝にスミス坊ちゃんがエイミー殿下に戦争の事を言えば問題ないでしょう。

 スミス坊ちゃんが置かれた立場はわかってくれると思います。」

「わかりました。」

ジーナが頷く。

武雄は「こういうのってギャップ萌えだっけ?エイミー殿下はすぐに陛下に朝一にでも聞きに行くんだろうなぁ。」と思っていたりする。

「さ、今日は遅いですからもう帰りなさい。

 送りましょうか?もしくは王城に泊まりますか?」

「タケオ様、夜とはいえ僕とジーナなら問題ないですよ。

 マリもいますし。」

「はい、私とパラスもいますので。

 何かあれば精霊間で連絡を入れます。」

「わかりました。

 気を付けて帰りなさい。」

武雄が2人に言うのだった。

・・・

・・

寄宿舎の玄関まであと少しの所。

「出来た・・・こんな感じですかね?」

「ん~・・・スミス様、それも作っている感じがありますよ?

 やはり3つ目のが一番良いと思われます。

 口調も少しゆっくりの方が良いかと。」

スミスが何回目かになる表情の確認をジーナにしていた。

「あんまり抑揚は付けない方が良いのかもしれないね。

 それにしても3つ目のかぁ・・・確か割と考え事している風だったよね。

 えーっと・・・こう?」

「はい、やはりその表情の方が他の方も今日は声をかけないと思います。」

「なら、これで部屋まで戻ろうかな。」

「はい、スミス様、冷静に行きましょう。」

スミスとジーナがそんな事を言いながら煌々と明かりが付く寄宿舎の玄関に到着する。

「・・・開けます。」

「うん、冷静に行こうね。」

スミスが頷くとジーナが玄関を開ける。

「おかえり。」

エイミーが居た。

「ただ今、戻りました。」

スミスが先程採用した顔で冷静に少しゆっくりとした口調で挨拶をする。

「・・・スミス、何があったの?」

エイミーが少し目を見開いて聞いてくる。

「すみません、エイミー殿下、明日の朝には言いますので、今日の所は。」

スミスが少し俯き、エイミーに目線を合わせないようにして言う。

「・・・そう・・ね。

 もう夜も遅いし、今日は寝なさい。」

「はい、すみません。

 明日の朝には説明しますので。」

「うん、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

スミスがそう言うとジーナがお辞儀をして部屋に戻って行く。

「・・・」

エイミーは何も言わずに後ろ姿を見ている。

「エイミー殿下、振られちゃいましたね。」

ドネリーが言う。

「もう就寝時というのはその通りよ。

 ・・・だけど。」

「・・・」

ドネリーは何も言わずに頷く。

「スミスにその手の教育をした方が良いのかしらね?」

「それはエイミー殿下がお決めになった方が良いのではないでしょうか。」

「はぁ・・・どうしようかなぁ・・・

 嘘をつくのが上手くなるスミスというのは私にとっては嫌なんだけど。

 貴族としては身に付けておいて欲しい物なのよね。」

「交渉事において百戦錬磨のエイミー殿下にあの程度の演技は無意味でしょう。」

「そこまで修羅場の交渉はしてないわよ。

 だけど、まぁ・・・わかり易いわよね。

 ・・・ドネリー、これどっちが仕掛けたと思う?」

「どちら・・・陛下かキタミザト様かですよね?

 ・・・どちらも普通ならしなさそうですけど、どちらも突発的にしそうではあります。」

「そうなんだよね・・・今日の集まりの内容というのは、まぁ、明日になればスミスが説明してくれるでしょう。

 だけど・・・ああいう対応をした方が良いと言ったのがどちらなのか・・・」

「深く考えると、意味合いがちょっと違うかもしれませんね。」

「・・・これは明日、スミスの話を聞いたら王城に行ってこようかな。」

「どちらをまずご訪問しますか?」

「・・・今回、大広間なのよね・・・お爺さまは忙しくしているだろうからタケオさんかな。」

「で、あるのなら朝一にでもご訪問する旨の約束を取ってきます。」

「あ、精霊通信するから良いわ。

 アル、お願い。」

「はい・・・パナから了解したと返事がありました。」

チビアルがエイミーの肩に現れて言ってくる。

「精霊殿が居ると便利ですね。」

ドネリーが言う。

「ドネリーも精霊魔法師になれば?」

「そんな簡単になれないでしょう。」

ドネリーが呆れるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ??「割りとあっさりなれちゃいますが?精霊術師なってみる?」 ドネリーはそのあたりいろんな属性持ってそうだからなぁw
[一言] スミス坊ちゃんにジーナ、腹芸失敗してるぞよ(苦笑) こればかりは特に貴族との対人経験が少ない辺境育ちのスミスにはまだ難しいかな。 でも伯爵家当主になる以上、爵位を継ぐ前にある程度は覚えないと…
[一言] ドネリーは隠してるような有能さがある感じなので精霊魔法師になれそうだしなったら有能さ増しそう。
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