第2285話 さて・・・向かいますか。(うん?エイミーの様子がおかしいね。)
ちょっとした同期会を終え、部屋に戻って夕食を済ませて、制服に着替えていた。
「所長、私達は隅っこに居れば良いんですね?」
「ええ、隅で良いですよ。」
ブルックの質問に武雄が答える。
「タケオ、私は見ていれば良いんっスか?」
「ええ、時雨は見ていれば良いですよ。
後でエルヴィスさんやマイヤーさん宛の報告を作りますからその時に陛下達の言葉の確認をさせてくださいね。」
「わかったっス。」
時雨が頷く。
「主、私とクゥはシグレと居ますね。」
「きゅ。」
「ええ、お願いします。
アーキンさんとブルックさんも一緒にいますから何かあれば頼ってくださいね。」
「「はーい。」」
「きゅ~。」
時雨とミア、クゥが返事をする。
「さて・・・あと1時間か・・・しょうがない、行くか。」
武雄が時間を確認してから、消極的な気合を入れて言う。
「所長、何がそこまで億劫にさせているので?
戦争で気になる事があるのですか?」
アーキンが聞いてくる。
「うん?別に今更、戦争の事でどうのこうのするような気分ではないですよ。
ダニエラさんが企画して、我らの陛下が『やれ』というならやるまでですよ。」
「では?」
「同期以外の貴族会議のお歴方がね・・・」
「あー・・・」
アーキンが疲れた顔をさせる。
「爵位授与の時やクリフ殿下の挙式等で数回話しましたけど・・・挨拶ばかりでね。
で、今日も挨拶だけで過ごしたいのですけど・・・20家程度に挨拶って普通に辛いですよね。
行った、行かないで後で文句が出る可能性もありますし、面倒だからと全く行かなかったら何を言われる事やら。」
「式典よりも挨拶が大変ってどうなんですかね?」
「まぁ、それが貴族の仕事の1つと考えられなくもないのですけどね・・・より円滑に物事を進める為の布石というね。
身内のはずの貴族達より王城の局長達の方が話をしているんですよね。
結構、話が盛り上がるんですよね。」
「一応、新貴族達は地方領の文官、武官上がりですからね。
王城の文官、武官とは話が盛り上がるでしょうね。」
「ついでに私の同期達は出身地が違えど仲が良いと来ています。
出身地方毎に派閥があるそうですけど、皆で定期的に会っていて、王立学院でも皆で運営するという姿勢です。
派閥の人達はそんな新人達をどう見るんでしょうかね?」
「・・・えー・・・そうですね・・・」
アーキンが考える。
「一応、派閥には所属しているので、新人達には強く言ったり出来ないと思うんですよね。
そこに今回の一斉貴族授与の立役者と目されていて、いつもは地方でのほほんとしていて、王城を我が物顔で歩いている新人が居ます。
貴方ならどうする?」
武雄がアーキンに言う。
「嫌味の1つは言うかもしれませんね。」
「うん、私もそう思います。
でもね・・・最大19家が嫌味を言って来たらと想像したらどうですか?」
「・・・はぁ・・・」
アーキンが深い溜め息をつく。
「それが私の今の心境です。」
武雄が仏頂面で言う。
「所長、対応策はあるのですか?」
ブルックが聞いてくる。
「大広間に入ってすぐにクラーク議長を捕まえて、一緒に貴族会議の面々に挨拶をするくらいですかね。
そうすれば嫌味が薄れる可能性はありますから。」
「一応は考えているんですね。」
「その為には一番最初にクラーク議長を確保しないといけません。
是が非でもクラーク議長を待ち伏せしなくてはね!」
「所長・・・挨拶回りが一番の戦場に感じます。」
「付き合いなんてそんな物です。
どうせ、王都でしか会わなくとも、会う数が少ないからこそしっかりと挨拶して印象を少しでも良くしないと・・・ただでさえ嫌味を言われかねないのに、これ以上の恨みは買ってはなりませんからね!」
武雄が少し意気込む。
「所長のやる気が上がった所で大広間に行きますか。
時雨殿、ミア殿、クゥ殿、会場に行きましょうか。」
ブルックが3人に言う。
「「はーい。」」
「きゅ~。」
3人が返事をするのだった。
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寄宿舎の玄関。
「スミス様、忘れ物はないですか?」
ジーナがスミスに聞く。
「大丈夫、服もジーナが皺を伸ばしてくれたからね。
皺が付かないようにしながら王城に向かわないとね。」
「スミス様なら大丈夫だとは思いますが・・・
あ。」
ジーナが奥からエイミー達が来たのに気が付く。
「あら?スミスとジーナはお出かけ?」
「はい、エイミー殿下。
陛下より王城の大広間に来るようにと。」
「王城の大広間に?・・・ドネリー。」
エイミーが首を傾げてからドネリーに聞く。
「私達はお呼ばれされておりません。」
「そうよね・・・」
エイミーが少し下を向いて考えこむ。
「あの、何かあるのですか?」
スミスがジッとエイミーの顔を見ながら聞いてくる。
「いえ、特に何かある、うっ・・・」
エイミーが顔を上げてスミスの顔を見た瞬間に口元を抑えて顔を逸らす、顔は少し赤くなっていた。
「へ?・・・あ・・・すみません。」
スミスも少し顔を赤らめて謝る。
「「・・・」」
ジーナとドネリーはその様子をジーっと観察している。
「うん、大丈夫よ、スミス、ジーナ、気を付けてね。」
エイミーは顔を逸らしながら口元を抑えていない片手を振って「いってらっしゃい」としている。
「はい、スミス様、行きましょう。」
ジーナがスミスに言う。
「え?・・・ええ、エイミー殿下、ドネリー殿行って来ます。」
「エイミー殿下、ドネリー様、失礼します。」
スミスとジーナは王城に向かうのだった。
「・・・エイミー殿下、あの後の話合いって何したんですか?
ジーナ様と私は立ち会いませんでしたけど。」
「何もしてないわよ!」
「そうですか。」
「何もしていないって!」
「いえ、私何も言っていませんよ。
・・・うふ♪
エイミー殿下♪何したんですか?」
ドネリーがニヤニヤしながら聞いてくる。
「くっ・・・はぁ・・・部屋戻ろう。」
エイミーが肩を落としながら部屋に向かう。
その後ろには妙に楽しそうなドネリーがいるのだった。
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