第2275話 終わったよ。(どうだった?)
終課の鐘が鳴ってから1時間程が経過した頃。
最初に通された控室で支払いを終わらせた武雄とバセットが雑談をしていた。
そして体格の良い男性がバセットに耳打ちをして部屋を出て行く。
「お連れの方がおかえりになったとの連絡がありました。
賑やかでしたね。」
「我が家は賑やかなのが取り柄ですからね。
今日はご協力ありがとうございました。」
武雄が頭を下げる。
「いえいえ、仕事ですので。
ところで、新貴族の方々が来店されないのですが、何かあるのですか?」
バセットがにこやかに言う。
「王都に来たばかりでここには来れないと思いますけど?」
「ふむ・・・新規開拓をしたいのですけどね。
今回の子達はさすがに出来ませんし。」
「変な所に行くならここに来た方が安全でしょうけど・・・まぁそれも含めて経験なんでしょうかね?」
「あまり危ない所には行かせられないと思いますが・・・
・・・どうしましょうかね?割引します?」
バセットが聞いてくる。
「特定の客の料金を下げたのが知れ渡ると店の格が下がりかねませんよ。
あの子達は諦めた方が良いでしょう・・・もしくはこの店にまた来させたいような体験をさせれば・・・頑張って稼いでくるかも。
そんな事していたら将来は身請け話になりそうですね。」
「私はそれでも良いんですけど。
うちの店は生徒さんでは中々来れないと思いますけど・・・」
「ん~・・・そこは一家で考えれば良いだけなんでしょうけどね。
はぁ、ま、何とかなるかな。」
「ご贔屓にして頂ける方が増えてくれるのは良いのですが・・・」
「今日の目的は達成できたので、これ以後は個人の問題でしょう。
のめり込まないようにしてくれれば良いですね。」
「子供達がのめり込んでしまうというのは危ないかもしれません。
それに親御さんの貴族方にそんな事で目を付けられたくないですね。」
バセットが首を傾げながら言う。
と、体格の良い男性がバセットに耳打ちをして部屋を出て行く。
「エルヴィス殿が終わられるようです。
私はこれにて。
キタミザト様、またのご利用をお待ちしております。」
バセットが礼をして控室を出て行く。
「・・・さて、どういう感想なのか。」
武雄が冷めきったお茶を口に運ぶのだった。
・・
・
「タケオ様、謀りましたね。」
スミスが武雄の対面に座ってジト目で言ってくる。
「ふむ・・・どれ?」
武雄が真面目顔で聞き返す。
「え!?何個もあるんですか?」
スミスが逆に驚く。
「・・・精力剤を渡したのは老婆心から、ここに来るのは黙っていましたけど、社会見学の1つでしょう?
何か違いましたか?」
武雄が笑いを堪えながら言う。
「僕はてっきり前にタケオ様が陛下と行ったと聞いた飲み屋に行くのかと。
まさかこういった店に来るとは思いもよりませんよ!?」
「それは想定の幅が狭かったですね。
私はあくまで夜の社会見学という話をスミス坊ちゃん達に持って行きましたけど。
それにスミス坊ちゃんも聞かなかったですよね?」
「・・・それは、まぁ・・・でもタケオ様、聞けば言ってくれましたか?」
「『当日のお楽しみです』と言っていたでしょうね。
今回は純粋に体験するという事が主題ですからね。
余計な知識を頭に入れられては純粋な体験にはならないでしょう?」
「むぅ・・・」
スミスが口を尖らせるがそれ以上は言って来ない。
「で、どうでした?」
「どう・・・どう・・・ん~・・・タケオ様の100倍の感度というのがわかりました。
確かにこれは危険ですね。」
スミスが真面目に評価をする。
「あ~・・・ん~・・・そういう感想かぁ・・・」
武雄が目線を逸らして呟く。
「え?タケオ様、これではダメだったのですか?」
「いいえ?素晴らしい感想でしたよ?
ただ『気持ち良かったです』とか『また来たいです』といった純粋なのを期待していたんですけど・・・
割と理論的に来たなぁと。」
「・・・」
「ふむ・・・色々教えて貰っているはずですけど・・・気持ち良かった?」
「・・・はい。」
スミスが少し顔を赤らめて言うのだった。
「なら、良いです。」
武雄が安堵するのだった。
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第3皇子一家の執務室。
「あ、連絡です。
エリカ様が店を出たそうですよ。」
ミアがレイラ達に言う。
「お、終わったんだね。
パイディアー、受付に迎えに行ってくれる?」
レイラが指示を出す。
「わかりました。」
パイディアーが実体化して執務室を退出していく。
「あ、追加でスミス様も無事に終わったと言っていますよ。」
「・・・弟のそういう事を聞くのは複雑な心境です。」
レイラが複雑な顔をさせる。
「さて、私達も寝る準備しようか。」
「片付けですね。
ミア殿やクゥちゃん、シグレちゃんはあとでパイディアーに部屋まで送らせるからね。」
「はーい、レイラ様。」
「きゅー。」
「ありがとうございます。」
3人が礼を言う。
「良いのよ。
ジーナちゃんは予定通り、エリカさんを送り届けたら寄宿舎に戻るだろうしね。
と、さっきまで読んでいた資料を机の隅に重ねておこうかな。」
レイラが机の上を片付け始める。
「まぁ、これで良かったんだろうね。
ミア殿、クゥ殿、お菓子食べきれないなら部屋に持って帰って良いですからね?」
アルマが言う。
「わかりましたー。」
「きゅー。」
2人が返事をするのだった。
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