第2274話 お部屋にご案内。(ちょっと待ちなさい。)
娼館内のとある部屋の扉前。
「では、御用が終わりましたら室内のベルを鳴らしてください。
先ほどの控室にご案内いたします。」
体格の良い男性がそう言い、一礼してから去っていく。
「・・・ベル?音が聞こえるの?」
武雄が首を傾げる。
「そこは魔法的な何かでわかるという事ではないですかね?」
チビパナが武雄の肩に乗りながら言う。
「とりあえずノックかな?」
「でしょうね・・・エリカの緊張具合によりますから、少し待って開かなかったら入りましょう。」
チビパナが言う。
武雄は少し考えてから扉をノックするとすぐに扉が開く。
「ご主人様、お待ちしておりました。」
「・・・なんでジーナが居るの?」
武雄が若干、顔を引きつかせて言葉を絞り出すのだった。
・・
・
室内にて。
「・・・エリカさん、緊張し過ぎ。」
武雄が苦笑する。
「だってぇ・・・」
ベッドの上で正座しているエリカが泣きそうな顔をさせて武雄を見上げる。
「ん?書類が机の上に・・・」
「あ!それ・・・」
武雄が机の上に置かれた書類を見つけ、持ち上げて見る。
「・・・はは・・・まったく、そういう事ね。」
「すみません、タケオさん。」
「別に私は平気ですよ。」
「うぅ・・・タケオさん、大丈夫ですか?」
「うん?」
武雄がにこやかに首を傾げる。
「あの・・・私で大丈夫ですか?」
「あれ?私、エリカさんに綺麗だと最初の頃に言ったはずですけど。」
「・・・言いましたね。」
「ついでに結婚を前にして他の女性を口説くわけにはいかないとも言ったと思いますけど?」
「・・・言われた気がします。」
「アリスとの話でね。
アリスが認めないと私はそういう事は他人にしないとしているんですよ。
アリスが認めたんですよね?」
「それは・・・はい、さっきの書類の通りです。」
「そうですか。」
武雄がそう言って書類にペンを走らせる。
「あ・・・」
エリカが呆気に取られる。
「これで大丈夫ですね。
さてと・・・」
「あ・・・」
武雄がエリカの横に腰を下ろしてエリカの肩を軽く引き寄せる。
「うぅ・・・・緊張します・・・」
「もう少しこのままでね。
大丈夫、大丈夫。」
武雄はそう言ってエリカの肩を軽くポンポンと叩いてあげる。
「で・・・そこの部下と精霊3名。」
「「「ん?」」」
「なんでしょうか?」
ペイトーとパラス、パナ、ジーナが優雅にお茶とお菓子を食べている。
「いや、何しているの?」
「後学のために。」
「見守り~。」
「こっちはこっちでするんで。」
「何かあればすぐに対応します。」
武雄の問いにジーナとパラス、ペイトー、パナが同時に回答する。
「監視付きって何?」
「受精の手助けをしないといけないですから。」
パナが言ってくる。
「待って、待って・・・パナ、そんなの出来るのですか?」
「アリスの時は1回目の着床は失敗しましたがね。
今の所、受精の成功率100%と考えています。」
「えー・・・?」
「サンプルはアリスしかないですけどね。
まぁ実際には受精も着床はわからないのですけど・・・私が出来るのは環境を整える事です。
受精が上手く行くように体内分泌を促し、精子の存命に必要な膣内の酸性値を和らげるようにする。
媚薬にその効能は入れていますよ。
今回はエリカの卵子が卵管膨大部に達している時期なので、精子の生命力如何で受精は出来るでしょうね。
その後の着床は・・・賭けですけど。」
「賭けなのですか?」
「そう。
コノハがしているのは着床後の体調管理、私がしているのは受精までの体調管理です。
着床は・・・こればかりはね。
舞台は整えました。
あとはエリカとタケオの頑張りのみです。
さ、私は安全に事が運ぶかの監視業務をしますか。」
パナが言う。
「ん~・・・んー・・・まぁコノハとパナが頑張っているというのはわかりましたが。
で、なぜにそこに?」
「何かあれば私達が助けます。
人の手は多い方が良いでしょう?」
「・・・ん~?・・・なんとなくエリカさんのトラウマが芽生えるような気がしますが?」
武雄が難しい顔で首を捻る。
「・・・トラウマ?何にトラウマですか?
媚薬ですか?・・・痛みは和らげる効能も入れましたし、気分高揚も入れたよね。
あと体内分泌と少し発汗して筋肉が強張らないようにしてあるし、飲みやすくするために甘めのバナナ味にしたし・・・」
パナが指折り数えて媚薬の効能を確認している。
「いや、そっちじゃなくて観戦者がいる事ですよ。」
「・・・え?エリカ、皇族ですよね?
王族や皇族なら閨の際には監視が居ると思うんですけど?」
パナが言ってくる。
「え?エリカさん、居るの?」
「まぁ、カトランダ帝国では居ましたよ。
でも流石に見える所には・・・」
エリカが呆れながら言う。
「ならば!足元の方に居ますからエリカからは見えないでしょう!」
「え?そういう問題ですか?
精霊達は消えれば問題ないか・・・ジーナには控」
「私が控室に居たら先に終わったスミス様達と出会う可能性があります。
今回の事はスミス様にはまだ内緒のはず、危険は冒せませんし、ご主人様は寒空に可愛い部下を1人外に置くような方ではないと知っています。
それにお手伝いは私も出来ますよ。
体操服も持って来ましたし。」
「うん、なんで体操服を選んだのかな?」
武雄が聞き返す。
「あの~・・・タケオさん、お話し中すみませんが、私の体が・・・」
エリカが太腿をもじもじさせながら救援を求めて来るのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




