第2271話 料理長と打ち合わせ。(ヒルダを口説かないように。)
王城の武雄達の部屋。
武雄は寄宿舎で外出許可を貰って、時間も余ったので一旦、王城内に戻って来たのだが訪問者が居た。
「キタミザト殿、こちらがゼラチンの精製方法になります。」
料理長が武雄の前に冊子を置く。
「ありがとうございます。
販売する条件の変更はありますか?」
「いえ、ありません。
ウスターソースと同じで魔王国方面4貴族領のみで販売する、王都と王国の西側にも卸さない。
費用は金貨30枚で締結されました。
こちらが契約書です。」
「はい、了解しました。
・・・ちなみにウスターソースと同じで魔王国に売っても良いのでしょうか?」
「それは・・・ゼラチンを輸出ですか?」
「え?違いますよ。
ゼラチンを使った商品をです。
輸出品目になれば良いなぁって程度の期待ですが、何か少量でも良いのでね。
外貨獲得を目指しますよ。」
「・・・キタミザト殿・・・・ゼラチンを使った食品はゼリーですよね?」
「・・・そうですね。」
「どうやって輸送するんですか?」
「それはこれからですね。
でも、珍しい物があれば売れ行きは良いと思うのでどうにかして物にしたいのですけどね。」
「ふむ・・・何かお作りになって外に出せるのであれば情報をください。
価格は要相談でお願いします。」
料理長が頭を下げる。
「わかっています。
それはお互いにですね。
ちなみにゼラチンのお菓子は出来ていますか?」
「それはゼリー以外でという事でしょうか?」
「ええ。」
「ないですなぁ。」
「そうですか・・・」
武雄が首を傾げながら言う。
「何かありますか?」
「いえ、先行してゼラチン料理を作っているのでお菓子ぐらい出来たかなぁと思いまして。」
「そう簡単に調理法は生まれませんよ。」
料理長が呆れながら言う。
だが、武雄は「ゼリーとグミの違いはゼラチンの量だよね?・・・もしかして失敗作として捨てたのかな?」と思っていたりする。
「それと陛下からカトランダ帝国からジャガイモ料理のレシピと言うか見た目と味の感想が来ています。
どうしましょう?」
「創作で作ってみるしかないのでは?」
「・・・これでですか?」
料理長が武雄の前に紙を置く。
「失礼します・・・うん、わからないですね。」
「ですよね。
例えば・・・これなんかは、『ジャガイモが甘めのスープの中にあって、タマネギとニンジンもぶつ切りで入っていた』と書いてあります。
甘いスープの中にジャガイモとタマネギとニンジンが入っていただけですよね?」
「ん~・・・言葉だけなら普通の野菜スープに砂糖でも入れたと捉えられますけども・・・わざわざ書いてきたという事は目新しい料理だったという事ですよね。
でも、パッと見ても何の変化も無い。
とりあえず、試しに作ってみる必要がありますよね。」
「ふむ・・・まずはじっくりと煮込んでみますか。
シイタケで出汁を作ってから砂糖を・・・少量ずつ入れて味を確認してからジャガイモとタマネギ、ニンジンを入れて鐘1つ分煮込んでみますかね。」
「砂糖の分量がこの料理で重要な事かもしれませんね。」
「そうですね。」
武雄の言葉に料理長が頷くのだった。
「そう言えば、アン殿下の件は聞いていましたよね。」
「・・・アン殿下と言うと料理学校ですか。」
「はい。概要としては王城内の小厨房で実施し、料理の基本的な事を学ばせるのです。
生徒は各領主、王家からの推薦によって集められるとなっています。」
「料理の基本ですか・・・」
「ええ、調理場の清掃と整理、野菜の仕分けと肉の切り取り作業、調理方法、盛り付け方法ですね。
期間は1年半、終了後は各店や貴族の厨房への紹介状を渡されるという物です。」
「メリットはかなりありますね。」
「ありますね。
それに王城内に住み込んで貰い、日中は授業ですが、夕食時は王城内の文官と武官相手の食堂の手伝いをして貰います。
まぁ最初は掃除からでしょうけど、段々とやれる事が増えて行きます。」
「実技もしっかりとあるという事ですか。」
「はい、見習い扱いとします。
まぁどこまでさせるかは今後協議しますけどね。
こちらとしては夕食時が終わってからの清掃に人員があるというのは結構良いのでね。」
「まぁ、皆さんが納得のいく方法を取ってくれれば良いと思いますけどね。
それで?」
「はい、講師は私達王城の料理人から派遣します。
キタミザト殿には人員の依頼がいっていますよね?」
「そう言えば、エルヴィス伯爵からは言われていませんでしたかね。」
武雄が考えながら言う。
「ええ、まだ概要程度しか決まっていませんからね。
各貴族には言ってはいません。」
「・・・うちには要請が来ていますけどね。」
「はい、ヒルダ殿と伺っています。
前に王城内で作られたアップルパイとラザニアを発案したと。」
「ヒルダにするかはまだ決めていませんし、話も戻ってからですよ。
まったく・・・陛下も口が軽いんですから・・・。
・・・レシピは非公開ですよ。」
武雄が腕を組んで考えながら言う。
「キタミザト殿、わかっております。
聞き出そうなどしません。
ですが、超が付く有望な料理人候補が来てくれるかなぁ?と思っただけですよ。」
料理長が言う。
「・・・はぁ、それは戻ってからです。」
武雄が呆れながら言うのだった。
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