第2264話 専売局長と財政局長との話し合い。2(紙袋については一旦、停止させてください。)
「紙袋の普及が問題になっていまして、利便性はうちのラングフォードからも聞いています。
ですが・・・試算すれば試算する程、求められる生産量が・・・まだ一般には難しいですね。
かと言って王都の各局でのみ使うとしたら生産量が多くて消費が追い付かず・・・ん~・・・」
財政局長が難しい顔をさせながら言う。
「ならば、一般用には付加価値を付けますか?
例えば前に試作という形でですが、紙の片側に油を塗った事があるんですけどね。
これを青果店等の特定の業種にのみ売るとしてみてはどうでしょう。」
「・・・それは紙の弱点である水がかかっても破れない為ですよね?
外で持ち歩くのなら付加価値となりますよね。
ちなみにキタミザト殿はどういった用途で試作をしたのですか?」
武雄の言葉に専売局長が言う。
「・・・料理用になんですけど。」
「キタミザト殿らしいですね。」
専売局長が苦笑する。
「確か紙の片側に油を塗ったのは専売局が昔、試作して断念していましたよ。
採算がとれないと報告されていましたね。」
財政局長が言う。
「試してから断念・・・作業工程が多いからですか?」
「それもですね。
紙の用途利用の検討をしたのですが、袋のサイズの検討が特にですね。
そもそも業種や用途によって全く違ったんです。
これで意見を統一するのが困難になったんですよ。」
「・・・今回と同じなように感じますが?」
「はい、ですが、それは専売局内での話です。
今回は財政局とキタミザト殿が入ってきているので、何かしらの結論を出さないといけないとなって局内では動いています。」
専売局長が言う。
「・・・そこまで意気込まなくても良いのではないでしょうかね。
まぁ、意見が今回は統一出来そうでなによりではありますけども。
それで、少量の紙袋の試験販売ですけど・・・エルヴィス伯爵領にというのは難しいのですか?」
「王都外に売り出すのはもう少し待っていただきたいですね。
生産の増加は今回の結果次第となってはいるのです。
ですが、まだ一般に向けて出すのは少なくするしかないのが現状なんです。
専売局長やラングフォードの説明では、街中に出すと一気に需要が出てくる可能性もあります。
それにはまだ対応出来ないのです。
ですけど、本格的に生産を増加させるには何かしらの結果が無いといけないのです。
そうすれば予算を振るのに理由が付くのですが・・・」
財政局長が言う。
「ん~・・・生産をするという予算を取れはしたが、まずは少量の生産しか出来なく。
それ以上の生産量を拡大させるのには、需要があるという予測が欲しい。
今の生産量では街中の潜在的な需要に火が付いた際に賄いきれない。
さらに火が付いてから増産に動いたとしてもすぐに増産が出来る訳でもないから賄えるのは当分先になる。
その間に専売局や財政局批判が集まる可能性があり、それは避けたい。
だが、次回の予算を取る為には需要があるという調査結果が欲しいという事ですよね。
堂々巡りですね。」
武雄が考えながら言う。
「紙袋の生産が限定的なのはダンボールを作る事を最優先としたからです。
財政局は税の関係で毎年、凄い量の報告や資料が届きます。
その輸送代だけでも相当な物でこれを木箱からダンボールに変わる事で幌馬車に乗せられる量が増えるのであれば経費削減になる為、紙袋よりダンボールをとなっているんです。」
専売局長が言う。
「・・・」
財政局長が目線を逸らす。
「誰しも思惑はありますよ。
それにダンボールの目的の一つに輸送量の増加を上げているのですから、間違ってはいません。
財政局の潜在的な要求に合致した商品が作り出せたという事です。
で、あるのなら無理に紙袋を商品化しなくても良いのではないでしょうか。
ダンボールの方に注力し、売り上げと生産量が安定してから次の用途で紙袋の生産と普及を試みれば良いだけです。
2つを同時にしなくてはいけないという訳ではありません。」
「キタミザト殿がそう言って頂けるのはありがたいですね。
紙袋の普及に関しては少し年数を頂きます。」
財政局長がホッとした顔をさせる。
「水に強い紙袋の方は専売局で研究しておきます。
紙袋を製造出来る時期までには、それなりの成果が出せるようにはしたいですけど・・・
キタミザト殿、ちなみに紙袋の使い方で店先での販売というのもあると思いますが、他に用途もあるのですよね?」
専売局長が聞いてくる。
「個人的にはお菓子の袋詰めを売りたいですね。
量り売りではなく、100gなら100g、200gなら200gを袋に入れて、封を閉じる。
水に強いという事は油にも強めの商品になると思います。
それに封を閉じた袋はそれ自体に緩衝材としての役割も作れるので、数個をダンボールに詰めて隣町とか近隣の町に出荷出来たらなぁと。
ほら、今までは店がその町や町に出店して商品を展開するという、ある意味系列店でないと行けなかったでしょう?
店を出すという事は店を維持できる需要が無いとダメという事です。
人口比率的に村にはそういう店の出店は採算的に厳しいはずです。
でも、紙で封が出来てダンボールで送れるとなると、商品自体が軽い為、何かのついでに混載して持って行ってくれる可能性があります。
そうすれば村々まで販売網を延ばせるかもしれないですからね。
一々町まで買いに行かなくても同じ物は手に入る状況になれば、村の生活が変わるでしょうね。
町や王都に憧れるかもしれないし、村に定着する若者がいるかもしれない。
村から町に売り込むかもしれない・・・たかがお菓子ですけど、村の子供達に王都への憧れと村からでも町の店相手に勝負が挑める事を教えるのに適していると思いますけどね。」
「「なるほど、良い事を聞きました。」」
専売局長と財政局長が頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




