第2262話 253日目 寝る前の雑談。(鈴音の研究は重要なのです。)
ペイトーが帰った王城の武雄達の部屋。
「・・・パナ、エリカさんとエイミー殿下が来るなんて聞いていませんよね?
私が聞き逃しているという訳ではないですよね?」
「聞いていませんね。
どこでそんな話になったんですかね?」
「さて・・・どういうことですかね?」
パナと武雄が首を捻る。
「アルに聞いてみますか?」
「ん~・・・聞いて良いものなんですかね・・・
聞いたら聞いたで藪をつついて、内情の説明をせざるを得ないような状況になりませんかね?」
「少なくとも来るなと言ってしまうと怪しまれるのではないですか?
ちなみにタケオはエイミーが来ることは問題ないですか?」
「来たければ来れば良いのではないですかね。
ジーナの報告ではエイミー殿下はスライム達も知っていますからね。
特に秘匿するような事もありませんから対策をする事もないでしょう、まぁ部屋の用意くらいですかね。
ただ・・・時期的に慣例の戦争の真っただ中なんですよね。
・・・それにしても、エイミー殿下に許可を与えた人物は、アリスも外に頻繁に出る訳にもいかないかもしれないからエリカさんを同行させて、エイミー殿下の相手をさせようと思ったんですかね?」
「あー・・・そういう風な事も考えられますけど、となると慣例の戦争を知っていて、アリスの妊娠も知って、エイミーとエリカに命令出来る人物が今回の許可を出した事になりますね。」
「・・・陛下しかいないですね。」
「ですね。
陛下が良いというのならエリカも同行を承諾するでしょうし、第3皇子一家も文句は言えないでしょう。」
「となると・・・ん?でも陛下が行くようにとは言わない気がしますね。
パット殿下ならいざ知らず、孫娘を出しますかね?
それに先の打ち合わせで、勝手にして良いと言っていたのですから負担がかかるような事は、この時期にはしないと思うんですよね。」
「勝手にして良いとは言っていないと思いますけどね。
エイミーが行きたがっているんじゃないですか?」
「・・・スミス坊ちゃんとジーナは9月の大会で残ると思うのですけど?」
「そうですね。
あの2人は帰る時間はなさそうですよね。
なので、あの2人が居なくてもエルヴィス家に遊びに行きたいのでしょう。」
「娯楽施設は作っていないんだけどなぁ。
何しに来るんでしょうかね?」
「案外、タケオが協力工房に無理難題を言っていないかの確認ではないですか?」
「私から無理難題は与えたつもりはありませんけどね。
まぁ、冗談はそのぐらいにして・・・ピザとか米関係ですかね?
ウスターソースは・・・第1皇子一家があるので第2皇子一家で作れないのに見に来てもなぁ。」
「大豆と小豆では?」
「あ、確かに味噌と餡は教えていないですね。
味噌はコノハ達が仕込み始めたばかりなので、1か月では食べさせられないでしょうね。
こし餡は食べさせて小豆を使っているのは秘密ですかね?」
「エイミーは感付くと思いますけどね。」
「ん~・・・ま、アリスとエリカさんに任せますか。」
「あ、投げましたね。」
「私とエルヴィスさんは戦場です。
『あとはよろしく~』と丸投げでしょう。
向こうの判断でやりくりしてくれれば良いのではないでしょうか。」
「・・・それもそうですね。
コノハとアル、ペイトーで何とかするでしょう。」
パナが頷く。
「さて・・・・明日の夜は良いとして、午前の会議の予習でもしますかね。」
「専売局と財政局でしたか。
・・・タケオが話していた再生紙事業ですかね?」
「ダンボールかな。
まぁ・・・問題はあるでしょうけどね。」
「生産量ですね。
タケオは企画は出すのに生産量をどうやって確保するか言わないんですね。」
パナが言う。
「・・・紙の生産量が飛躍的に増加したのは産業革命以降、つまりは蒸気駆動の開発とそれに続く電気とモーターの開発があってこそです。
機械化の始まりですけど、ここではそれが無いのでね。
現時点でどうするかは当事者にお任せですよ。」
「タケオ、投げやりですね。」
「鈴音が船の駆動部の開発をしています。
あれが上手く行けば生産拡大は成し得ると思いますよ。
・・・中々に危険な研究なのは確かですけどね。
それに少なくとも今の紙の量を生産できる方法を王都は持っています。
そのノウハウを使えば、同規模とまでは行かなくても、それなりの量を作れるというのは見込みとして持っていますね。」
「あながち人海戦術なのかもしれませんよ?」
「それはそれで王都に雇用が生まれるという事ですよね?
悪い話だけではないでしょう・・・卸値が高くなる程度の問題です。
それに駆動部が出来るまでに流れ作業の効率化が出来るはずですから、駆動部を使う箇所の選定が容易になると思いますけどね。」
「タケオ、売る気満々ですね。」
「それは当たり前ですよ。
蒸気機関がなく、駆動部を作るという事は発電所の建設にはまだまだ時間がかかるという事です。
となると、鈴音が作る小型駆動は装置のあちこちに使われるという事です。
産業機械、車、船、エスカレーターとエレベーターなんかもあり得ますよ。」
「ふむ・・・駆動を使う物全ての進化が始まりますね。」
「良い方向に行けば国内の流通だけでなく、農業や酪農といった生産者にも劇的な効率化が訪れる可能性がありますね。」
「ふむ・・・良い方向に行けば、ですね。」
「ええ、ですが、それもまだまだ先の話ですけどね。」
武雄が言うのだった。
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