第2257話 布をどうするのか。(長靴のようななにか。)
ラルフの仕立て屋。
「~♪」
客が居なくなった店内のカウンターで職人が楽しそうに書き物をしていた。
「機嫌が良いですね。
何かありましたか?」
女性店員が声をかける。
「うん?キタミザト様が魔王国から輸入する布を店長が仕入れてくれるってさ。」
「・・・ほぉ。
で?なんで喜ぶので?」
「良い布があったから!」
職人が良い笑顔で言う。
「・・・うん、私は見に行っていませんが・・・それ程良い物が?」
「ああ、織りとしてはこちらとほぼ変わらないが、模様が織り込まれているんだ。」
「・・・こっちも同じような布ありましたよね?」
「仕入れ値が安い。」
「それは魅力的ですね。
・・・ですけど、輸送費用も入れてですか?」
「た・・・たぶん。
展示品の価格は単価が書いてあったのみだから・・・それで買えるだろうと。」
「・・・ま、その辺はキタミザト様なら考えておいででしょうかね。」
「ですです。
あぁ、待ち遠しいなぁ。」
「他国との輸送なんだから、すぐには来ないでしょうよ。
国内だってそんなに早く来ないのに。
で、その絵柄が入っている布は何に使うんですか?」
「・・・・・・スニーカー?」
「今思いつきましたね。
購入は決まったのでしょうから次は何の商品にするかでしょう。
いくらスニーカーが布靴でも奇抜な絵柄はお客様が買いますかね?」
「・・・」
「不良在庫か・・・」
「いやいやいや!絵柄が綺麗なんだって!」
「私も女です、綺麗な物は好きですが・・・」
「が。」
「私達は仕立て屋です。
服に出来ない布を買ってどうするのです?」
「むむむ・・・」
職人が難しい顔をさせる。
「皆さん、戻りました。」
ラルフが玄関から入ってくる。
「店長、おかえりなさいませ。」
女性店員が声をかける。
「ええ、何かありましたか?」
ラルフが女性店員に聞く。
「3組のお客様が来店されまして、2着は新規で1着はサイズ直しです。
納期に問題はありません。」
「そうですか。」
ラルフが頷く。
「店長、さっき魔王国から絵柄が入った布を購入されると聞いたのですが、本当でしょうか。」
「ええ、買いますよ。」
「何に使われるのですか?
こう言っては何ですが、私達が作っているのは紳士服です。
絵柄入りの布はほぼほぼ扱わないのではないでしょうか。」
女性店員が言う。
「紳士服には使いませんが・・・・1つはスニーカーですね。」
ラルフの言葉を聞いて、職人がドヤ顔を女性店員に向ける。
「・・・。
1つはという事は他にもあるのですか?」
女性店員が職人を一瞬睨んでからラルフに聞く。
「まだ、私が考えただけですし、キタミザト様に許可は必要ですが、ポンチョですね。」
「布靴とポンチョですか?」
「例のSL液を使えば雨の中を歩いても足が濡れる事が少なくなると思うのです。
そして、上から羽織る物と下で履く物が同じ意匠というのは・・・ありなのではないかとね。」
「国内の柄付きのでも良かったのではないですか?
わざわざ魔王国物を使わなくても・・・」
「確かに、国内の産業を・・・というのはわかります。
ですが、魔王国から輸入した布を普段着でなく、雨具として使用するという贅沢な商品となるでしょう。
さらに水を弾く性能はかなりの物となります。
高価格帯での販売が出来るだろうというのと女性用のポンチョというのもあっても良いのではないかと思ったからですね。
今のポンチョは暗めの色が多いですから。」
ラルフが言う。
「なるほど、確かに女性の方なら手に取ってくれる可能性がありますね。
絵柄が綺麗なポンチョと雨に強い布靴・・・ですか。」
女性店員が考えながら言う。
「ま、まずは少数を作ってみて反応を見てみましょう。
売れ行きが良ければ色んな柄のハイカットスニーカーを作れば良いでしょう。」
「わかりました。
店長、試験小隊のテントの試験はどうでしたか?」
「今売られているテントの布部分を私達が作ったのに変えただけですからね。
そこまで緊張はしませんでしたよ。
今後、試験小隊の方々が外で使われて性能評価がされるでしょう。
その後に商品化するかは検討事項でしょうね。
商品化してもまずは一般向けというよりもエルヴィス家向けに作り始めてから・・・でしょう。」
「そうですか。
とりあえず、目途が立ったというのは朗報ですね。
あとは試験をしながら何か新しい物を考えて行けば良いという事ですね。」
「まぁ・・・そうですね。
キタミザト様に聞くのも良いですが、まずは私達で日常生活にあっても問題ないような物も見つけてからキタミザト様に相談に行くのが良いのでしょう。
まぁその発想が出来るかどうかというのはありますがね。
これだけいれば何かしらの商品案が出来てくると思うのですよ・・・皆に期待をしていますからね。」
「「頑張ります。」」
職人と女性店員が頷くのだった。
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