第2253話 ウィリプ連合国との戦争において。2(拠点防衛の話と侵攻の話。)
皆で占領される町の話をし終わり、次に文官が地図を武雄の前に置く。
「こちらが防御をする砦の1回目の外観図です。」
「確か・・・魔法師を動員して総石造りでしたか?」
「町を中心に両側に拠点の砦を設ける・・・3拠点のうち1つが攻められれば残りの2拠点から背後を強襲というのは軍務局で本採用ですよ。
徹底して相手の戦力を削り、時を稼ぐのが一番であると結論付けましたので、こちらの予算を満額貰ったら、先ほどの土地改良の予算が無くなったのです。」
軍務局長が言う。
「総石造りが費用増大の一因ですかね?」
「いや、本気の防衛ですからね。
総石造りは絶対必要でしょう。
ここに予算が無いからと木造りにしてしまっては意味がありませんよ。」
武雄の呟きに軍務局長が苦笑しながら言う。
「町と砦とを繋ぐ道と相手からの攻撃を防ぐ手立ては?」
「はい、こちらの地図でご説明します。
町と砦間の道はこちら、この道から200m毎に幅3m、深さ2mの堀を作ろうかと思います。」
「・・・空堀ですか?」
「空堀?」
「あー・・・水を溜めない堀です。」
「はい、掘っただけです。」
「・・・なら、ウィリプ連合国側の堀の方に、膝丈まである木々を生やしてください。」
「膝丈まである木々・・・花が咲くような植物で良いですか?」
「はい、容易に走れないようにすれば、助走をして飛んで渡れないでしょうからね。
堀を超える為の行動で移動が遅く出来るでしょう。
それに砦や町の城門の上からの監視を掻い潜って、砦までの街道を目指したとしても、背丈の低い木々があれば音をさせながら歩くでしょうからね。
道を巡回する兵士達が気付き、迎撃する時間は取れるでしょう。」
「ふむ、なるほど。
そこも検討して提案をしておきます。」
軍務局長が頷く。
「そうですか。
ちなみに侵攻の方の検討は進んでいるんですか?」
「検討は連日しています。
してはいますが・・・なかなか基本方針が出来ませんね。」
「それは・・・兵力的な所で?」
「それもです。
・・・いや、それが一番でしょうか。
先の町の奪還だけでなく、ウィリプ連合国との関までにある村の奪還をします。
これの復興に当該地域の貴族は対応するので、そこの兵力は侵攻時には使えない。
ニール殿下ともう1つの貴族の兵士だけでは、心もとないです。」
「カトランダ帝国側からの合流部隊は?」
「ふむ・・・今の所、カトランダ帝国側の兵士達で国内の占領地奪還作戦の遂行をして、ニール殿下率いるウィリプ連合国側の兵士と王都の騎士団で侵攻するというのが大筋ではありますが・・・。
想定をすればするほど王都の騎士団も奪還作戦に加わらないとダメな気がするんですよ。」
軍務局長が悩みながら言う。
「・・・」
武雄はそれを聞いて「陛下、ここに魔王国の義勇軍を投入するかな?」と思いながら聞いている。
「はぁ・・・どうした物か。」
「私からは何とも。
侵攻については、兵士集めました、突撃させました、追撃させました・・・こんな簡単な工程表なら良いのでしょうけど、実際は王都と貴族領で命令系統や動きも違うでしょうし、その後の事もあるでしょうからね。」
「それは子供が考える工程ですよ。
より具体的に、より多めの被害を想定してというのが私達の仕事ですから。」
「悩ましいですね。」
「まったくです。」
武雄の問いかけに軍務局長が頷く。
「そういえば、陛下から私とウィリアム殿下は観戦するようにと言われていましたね。」
「え?キタミザト殿、来るんですか?」
軍務局長が少し驚きながら聞いてくる。
「聞いてないので?」
「・・・とりあえず防衛はウィリプ連合国方面の兵士のみ、その後の奪還作戦と侵攻はカトランダ側と王都の騎士団が増援されてとの方針の下で作戦工程を考えています。」
「・・・言ってはいけなかったでしょうか?」
武雄が考えながら言う。
「どのくらいの兵力で?」
「具体的にはまだなにも・・・ですが、観戦なので・・・・うちの試験小隊は2小隊で、ウィリアム殿下も2小隊程度ではないですか?
多くが観戦に行っても邪魔でしょうし。
万が一の際に逃げる為の人員ですから。」
「そうですか・・・ん~・・・」
軍務局長が考える。
「まぁ、流石に魔王国方面から人員を割くのは難しいですよ。
今の人員は張り付かせておかないと魔王国に何か動きがあった際の防衛が出来ませんからね。」
「確かに・・・そこはわかるんですけどね・・・」
「一研への戦術の確認は?」
「それはまだですね。
こっちの方針がほぼ固まってからニール殿下と一研殿に伺う予定です。
防衛、奪還、侵攻、占領、統治ですね。
この全部の段階の工程の作成が終わってからですね。
私達が終わったら財政局が予算のチェックをして王家と一研殿に行って確認。
その後に経済局と外交局、総監局で確認ですよ。
どこか1つの所でダメ出しがあるなら最初からやり直し・・・キタミザト殿、戦争って事前の書類がこんなに多いんですね。」
軍務局長が呆れながら言う。
「まぁ・・・突発でないだけありがたいのでは?
いくらでも想定のやり直しは出来るのですし。」
「はぁ・・・そう思う事にします。」
軍務局長が諦めながら言うのだった。
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