第2252話 ウィリプ連合国との戦争において。1(占領地奪還の話。)
王城内の軍務局に併設された小会議室。
「・・・なんで私、ここに居るのでしょう?」
武雄が会議室の机のお誕生日席に着かされながら呟く。
「まぁまぁ、やっとウィリプ連合国の防衛の方の大枠が出来たんで。
見て貰おうと思いましてね。」
軍務局長が言う。
軍務局の文官達がいそいそと武雄の前に地図やら資料を置いている。
「・・・えーっと・・・村だか町を占拠させてから、奥の町で防衛を始め、良い頃合いで反撃をするでしたか。」
「そう、それです。
所長方の提案でしたよね?」
「・・・するのですか?」
「したいですね。
で・・・前回の会議の内容を精査したんですが・・・いくつか出来ませんでしたので修正がかかっています。
えーっと・・・まずはここです。」
軍務局長が項目を指さす。
「・・・占領される町に向かっての傾斜案は否決ですか。」
武雄が項目を読む。
「費用がね・・・なので、代わりの策を用意しなくてはなりません。」
「・・・要はどうやって簡単に城門を開けようか。
これなんですよね。」
「そうですね。
今考えているのは城門の横に勝手口を設ける案です。」
「はぁ・・・近づくのも大変そうですね・・・」
「そこはそれ。
今考えているのは城門から500m横の板で作る城壁の所に設ける案ですね。」
「それ・・・すでに城門横ではないですね。
普通に裏口でしょうよ。」
「ははは、そうですね。
それが・・・図でいうと・・・ここに配置しようと思います。
中に入れば壁伝いに小道があり、内側から開けられるでしょう。」
「・・・ダメでしょう、これ。」
武雄が図を見ながら言う。
「ダメですか。」
軍務局の皆がガックリとする。
「裏口案は良いんですけど・・・あ、この裏口は外から開けられるようにしてくださいね。」
「それは当たり前で・・・キタミザト殿、もしかして外側からしか開けられないとかですか?」
軍務局長が聞いてくる。
「そうは言っていませんよ、あくまで通常は鍵を使って、内側から外側に開く扉を用意しておけば良いでしょう。
ですが、万が一の際は外側から枠ごと外せる構造にしておけば、内側で枠と施錠されていても外せるでしょう?」
武雄が言ってくる。
「それは・・・枠ごと外すですか。
出来そうですか?」
軍務局長が聞いてくる。
「三方枠を2重にすれば良いだけでしょう。
内側にはL字のアングルのような鋼材を内側に面が来るように枠を取り付けておき、外側から扉のセットを設置して、セットした扉の三方枠からネジか何かで止めておけば良いでしょう。」
武雄が手を使って説明する。
「キタミザト殿・・・なんとなくわかるのですが・・・
その場合、扉が閉まっていたら外枠と内枠を止めているネジ等を取れなくはないですか?」
軍務局の文官が言ってくる。
「・・・いや・・・壊せば良いのでは?
L字アングルというのは・・・黒板はあるね、使っても?」
武雄が会議室内の端にある黒板を見る。
「はい!すぐに持って来ます。」
文官が黒板を持ってくる。
「はぁ・・・L字アングルというのはこういう・・・鋼材の事を想像していて。
この面側を内側に見せておけば、もう一方は外壁の方を向く。
で、この面の内側より小さい扉を用意するのですけど・・こんな感じで四角いのを入れて。
外枠と扉の三方枠の隙間をそれなりに開けておけば良いだけ、万が一の際にはこの隙間に剣でも工具でも差し込んでネジを破壊。
そうすれば扉ごと外せるでしょう。」
「「「あ~・・・・なるほど。」」」
皆が頷く。
「それと小道だろうと何だろうと道に面しているという事は占領する向こうの軍はこの扉を調べてしまうのでは?
ただの扉だと思ってくれるのならまだしもバレていたら内側に物を置かれて封鎖されてしまいますよ。
私達は占拠されてから中の様子は基本的にはわからないのです。
ならば、占拠されても扉が秘匿出来るようにしなくてはなりません。」
「確かに・・・やり方としては何かありますか?」
軍務局長が言う。
「そうですね・・・町の街区図はありますか?」
「はい!こちらに!」
他の文官が地図を武雄の前に広げる。
「・・・ああ、局長、良い位置に良い物件がありますね。」
武雄が悪い顔をさせて、街区図のある一点を指さす。
「・・・低所得者地区・・・ですか。」
「ここの2軒は城壁まで土地があります。
ここに城壁までピッタリとくっ付けたボロい物置小屋を作っておいて貰いましょうか。
それに外交局長と人事局長にお願いしてウィリプ連合国から採用した兵士に事前に住んでおいて貰いましょうよ。」
「・・・キタミザト殿、顔。
そうですね・・・ウィリプ連合国の上層部はこういった低所得者地区には滞在しないでしょうね。」
「でしょうね、最低でも普通の民家を宛がわれて、ここに住むのは・・・ね?」
「紛れ込ませるにはうってつけかもしれません。」
「まぁ・・・好き好む方も居るかもしれませんけど・・・そこは運でしょう。
それに物置小屋なら1小隊は入れるのでは?」
「城門を開けに行くのにもう少し欲しい所ですが・・・
それに民家ではなく、何かしらのおんぼろ倉庫で良いのでしょうね。
人が住まないような、それでいて広さもあるような、倉庫のような物をという事ですね。」
「それと裏口を使って潜入する際は城門に派手な攻撃をして意識を逸らして置く必要があると思います。
戦果はなくて良いので音が響くような。」
「魔法師による断続的な攻撃で良いでしょうね。
日没付近の暗くなりかけが良さそうですね。」
軍務局長が言う。
「城門を挟んで反対側にも作れますかね?
懐中時計があれば攻撃時間は合わせられると思います。」
「なるほど、そこは・・・検討しましょう。」
軍務局長達が頷くのだった。
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