第2248話 会議は始まっています。(教育改善案。)
王城の中会議室。
「となると・・・ここを直してください・・・
うん、初等教育を主要都市で実施させて全国入学試験を実施、そこから成績優秀者を王立学院に、魔法適性があり成績と魔力量が基準以上なら魔法師専門学院に、他は商店や工房、兵士に就職すると。
で、地方領や王都の兵士に所属した者は実務経験6年以上、魔法師専門学院卒業生は実務経験2年以上で兵士の高等教育を望むなら士官学校に進ませる。
そして王立学院と士官学校の上位者で研究を望むのなら王立大学という専門機関にぶち込む。
ここの主管は王家専属魔法師と。
ここで経済、地理、外交、歴史、魔法具、戦術等の研究をさせる。」
武雄が皆の前で黒板にAやBとか書いて流れを書きながら説明をしている。
黒板の文字等は総監局の者が書いていた。
黒板の前には各局長や次長、主だった者が座って、武雄の説明や他の者の意見が出たら、考え、自分の意見を言うようなグループディスカッション形式で討論がされていた。
最初は人事局と貴族会議所管の王立学院の特待生制度での授業料の補填の話から、その制度を使い入ってくる苦学生の入学後の生活費の補助をする為の1日2時間程度の短時間労働の公的な斡旋の必要性の説明とそのメリットとデメリットを説明。
金銭的な問題での全生徒の制服着用義務と新しい制服の公募要件、ダッフルコートの売り込み。
今は初等教育と中等教育、高等教育の流れを考えてみようという所を説明している。
・・・なし崩し的に話していたのだった。
「陛下、入室。」
扉の所から声がかかると全員が起立をして扉を見る。
「すまんな、遅れた。」
アズパール王が入ってくる。
「「「おはようございます、陛下。」」」
皆が軽く頭を下げながら言ってくる。
「うむ・・・あれ?もうしていたか。
あ~・・・続けてくれ。
我は少し後ろから見守っている。」
そう言ってアズパール王が皆の後ろの席に行く。
「はい、では、続きをして行きましょう。
これが王都の学術上の進学構想ですよね。
で、次に考えているのが軍の形態の変更案ですね。
私は魔王国で軍規模の統制方法を見てきました。
まぁ・・・中央に軍が5つありましたが、1個軍の中に3000名の武官と1000名の文官が居て、軍事から政策まで熟すという形態でした。
この形態の良い所は文官、武官の意思疎通の容易さと行動力の早さだと思います。
これを可能にしているのは3000名の武官の統率方法だけでなく、武官および文官の指揮命令系統の確立がされる事によって、より迅速な政策実行が成されている事だと思います。
全部を真似る必要はありませんが、我が国の軍務に取り入れてみようと思うので考え付いた案をご説明します。
まずは現状の確認ですね、領主と陛下が最上位に居るとして、その下に」
武雄がさっきまでと違う黒板に自身が考える軍の階級制を書き始める。
少し下がって見ているアズパール王の隣にオルコットがやってくる。
「陛下、何かありましたか?」
「いや、エイミーと話していてな、少し遅れた。
で・・・これはどういう事だ?」
「はい、陛下が来るまで待っているつもりだったのですが、人事局長とキタミザト殿が始まる前にどんな話をするか黒板を使いながら軽く話をしていたのですが、そこに軍務局長や総監局長、クラーク議長、ボールド男爵が加わり、さらにそれぞれの次長や課長達も加わり・・・話が始まりました。」
「ふむ・・・会議としては良い流れから始まったな。
それで?」
「はい、こちらが来られるまでに打ち合わせがされた、『王立学院の特待生制度の問題点と改善方法』の即席の議事録になります。」
オルコットが箇条書きされた数枚の紙を渡す。
「特待生制度?・・・すぐに目を通そう。
今、タケオが書いていない方は・・・王立学院と魔法師専門学院を含む教育方針か?」
「はい、各領主がある街に初等教育機関という物を設置し、文字を読む力、文字を書く力、簡易的な計算が出来る力と地域ルールを守る道徳性の教育を実施させる事で、まずは生活力を向上させる。
その中で優秀な人材を発掘し、特待生制度を使って王立学院に入れる。
また、初等教育が終わっていれば魔法師専門学院での同様な教育の時間が減り、より実務の時間がとれるので質の向上にもなる。
王立学院と魔法師専門学院に入れなかった者は地元の兵士として採用されますが、数年後に部隊指揮をさせたいのなら王都で教育を受けさせる制度を作ろうというのです。
こちらももうすぐ議事録が出来ると思います。」
「・・・なるほどな。
つまりは各領主の人材のお披露目をする場を設け、さらには各領主からの中堅が来るので領主間の面通しをすると共に、均一な部隊指揮官を作り出し、命令方法統一を計る・・・か。
領主間の競争意識を芽生えさせると共に均一な能力を持った兵士を王都で育成させる・・・上手い事を考えた物だな。」
「はい、流石はキタミザト殿です。
王都に費用的な物と地方領に人材的な物の痛み分けをさせる案です。
少し、王都に有利になりそうではありますが、王都主体で物を進めるのであれば、そのぐらいは致し方ないと踏んでの事でしょう。
地方領にも十分に恩恵はあるのも確かです。」
「そうか・・・それはそうと、タケオが今、黒板に大変な事を書いているな。」
「あれは・・・軍の組織変更案ですね。
軍務局が怒鳴っていない所を見ると大丈夫でしょう。」
「あー・・タケオ、楽しそうに説明しているな。」
「本領発揮されていて何よりでしょう。」
アズパール王とオルコットが呆れながら見守るのだった。
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