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第2246話 252日目 グレースの相談。(キタミザト家に喧嘩を売らないように。)

寄宿舎のエイミーの部屋。

エイミーとドネリー、グレースとバウアーがお茶をしている。


「エイミーお姉様、私はこの布を王都で管理するべきだと思うのですが、どう思われますか?」

グレースがナプキンを手にしながら言ってくる。

「・・・どう思うって・・・グレース、聞きに来た時点で自分でしたい事を話しているじゃない。」

エイミーが呆れながら言う。

「これは軽く、肌触りも良い物です。

 この布はタオル地や手拭き等で使えます。

 王都で技術を買い取り、王国内に広めるべきだと思います。」

グレースが言う。

「・・・ふむ・・・それで?

 それを私に聞いてどうするの?

 そう言った事は陛下(お爺さま)や総監局、専売局に話を持って行けば良いじゃない。」

「はい、ですが、まずはエイミーお姉様にお伺いしたいと思って。」

グレースが言ってくる。

「はぁ・・・個人的な考えをいうならと前置きしますけど。

 グレースがしようとしている事に私は反対ね。」

「お姉様は反対なのですね。

 ・・・それはスミスが居るからですか?」

「・・・確かに私はスミスに好意は持っているけどね。

 そういった感情の抜きにして反対ね。

 まぁ反対というよりかその要求は難しいと思うわよ。

 なぜならその布を作って商品化をしているのがキタミザト家とその協力工房よ?

 交渉をしてくれるかしら?」

エイミーが堂々と言ってくる。

「そうは言いますが、一貴族とその工房ですよ?

 相応の技術料を払えば問題ないと思いますが。」

「相応・・・グレース、相応とはいくら?

 買い取る提案をするのなら王都がキタミザト家と工房に支払う金額の想定はしたのでしょう?」

「ウスターソースをキタミザト家が買ったのが金貨30枚と伺っています。

 同じ金額で良いかと。」

グレースが言う。

「はぁ・・・グレース、もう遅いわよ。」

エイミーがため息をついて言ってくる。

「え?」

グレースが驚き顔をさせる。

「グレース、キタミザト子爵がウスターソースを買った時は商店側が『価値を知らない』時なのよ。

 今、ナプキンに使われている布は商品化されて、キタミザト家が売り込んでいます。

 この布は現在、キタミザト家とその工房のみ作れていますよね?

 そして商品化して・・・数十年に渡って継続的に使用される可能性がある商品を作った。

 ・・・まぁ数十年とは言わないけど、確実に数年は優位に立てる布を作る技術をたかが金貨30枚で売るの?

 金貨30枚での交渉は商品化される前の段階で買い取る際には参考として交渉の場に乗せられた金額でしかないわ。

 今後、相当な利益が見込めるのに金貨30枚では首を縦には振ってくれないでしょうね。」

エイミーが言う。

「それは・・・エイミー殿下、一貴族と一工房に相当な利益を受け取らせて良いと?」

「構わないわね。

 そういう技術は民間では普通でしょ?

 作り出した者が利益を享受する・・・当然ね。

 ウスターソースだって、本来の価値がキタミザト子爵が来る前にわかっていたのなら商店側は金貨30枚では売らなかったかもね。

 ここからは王家の一員としての愚痴だけどね・・・そもそも第1皇子一家がしっかりと管理していればキタミザト子爵が買いに行ったとしても技術を買うという交渉すら出来なかったはずよ。

 でも、誰もウスターソースの価値をわからなかった、想像しようともしなかった。

 キタミザト子爵だけが価値を見出した・・・王家に厳しい目を向けるのなら、第1皇子一家は大きな利益を掴み損ねたのよ、これって失策なんじゃない?」

「・・・問題にはなっていませんよね?」

「ならないわね。

 第1皇子一家領での確立した技術をキタミザト子爵が独占したならいざしらず、しっかりと第1皇子一家に教え、あまつさえ最大商圏である王都での販売権を放棄しているんですから。

 むしろ第1皇子一家領で(・・・・・・・・)初めて作られた(・・・・・・・・)ウスターソースを国中に広める役目を熟している。

 クリフ伯父上からしたら自身の名声を広める忠臣ではないかしら?」

「・・・」

グレースが難しい顔をさせる。

「グレース、キタミザト子爵の所が色々作るでしょうけど、買い取る事を考えるのなら商品化される前に動くべきよ。

 だけど、それは不可能に近い要求になってしまう。なぜなら、あそこは目的があって、素材を作る所なんだからね。

 なら、その商品を使って違う商品を作るしかない。

 買い取る金額より、その素材を使って商品を作り出す方が安上がりだと私は思うわ。」

エイミーが言う。

「・・・エイミーお姉様の言い分はわかりました。

 この案を王城に持って行く事は再検討します。」

「うん、そうね。

 それでもグレースが買い取りを主張するのであれば王城に掛け合えば良いと思うわ。

 ま、グレースがしたい買取が成せたのならば王家の専売局が作るのでしょうからね。

 第2皇子一家(実家)に利益が出るので良い事ではありますけどね。」

「・・・」

グレースが押し黙っている。

「はぁ・・・グレースからは以上かしら?」

「はい、エイミーお姉様、お話をして頂きありがとうございました。」

「良いのよ。

 じゃ、私からもグレースに聞きたい事があったのよ。」

「はい、何でしょうか?」

「私とグレースの進退の話ね。

 嫁ぎ先の選定・・・出来てる?」

「エイミーお姉様程ではありません。」

「はぐらかさないの。

 はぁ・・・言いたくはないけど、私達には時間が無いわ。」

「エイミーお姉様はスミスですよね?」

「私、そこまで態度に出ているかしら?」

「知らぬは本人達のみです。」

「そう・・・で?グレースは大丈夫?

 パットが決める前にそれなりに陛下(お爺さま)に報告しておきたいのよ。」

「パット兄さまの?・・・あ、そういう事ですか。

 そうですね・・・」

エイミーとグレースの話合いは続くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「エイミーお姉様はスミスですよね?」 >「私、そこまで態度に出ているかしら?」 ・・・・・て、さっきも >「・・・確かに私はスミスに好意は持っているけどね。 て言ってますやん・・・・・(…
[一言] 昔からタケオたちのような先導者は、1歩前に出ると足を引っ張られ、2歩も3歩も前だと理解されず、半歩前ぐらいが丁度良いという事が言われていまよね。今回のグレース嬢のように物語の中心にいない貴族…
[気になる点] あれ?ウスターソースが300枚? 30だったような…?
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