第2242話 寄宿舎までの道。(不便な事が開発には役立ちます。)
第3皇子一家との雑談を終えて、武雄達はエイミーとスミス、ジーナと寄宿舎に向かっていた。
「タケオさんの所は次々と新素材と新製品が出来て羨ましいですよ。」
エイミーが言ってくる。
「皆が率先して動きますからね。
製品化までが早いんですよね。」
「新素材は無理でも新製品は何か出来そうだと思ったのですけど、私一人では何も思い付かないので・・・レイラお姉様達にも話しに行ったのですけど・・・出来たら良いなぁ。」
エイミーが弱気な発言をする。
「発想の基本は不便を改善させる事ですよ。」
「ん~・・・確かにタケオさんが作る物は今の生活を便利にさせる物ですよね。
ナプキンもウェットティッシュも。
生活に不便かぁ・・・ん~・・・」
「いや、そこまで深く考えなくても軽く考えても良いのですよ?
鉛筆だってペンで毎回インクに付けるのが面倒だからですし、衣服ももっと暖かいのを着たい為ですしね。」
武雄が言う。
「今現在の生活で満足してしまうと不便さは見つけづらいですよね。」
「満ち足りている・・・生活を私は送っているのは確かなんですよね。」
「でも、不便さを許容もしているはずなんですけどね?」
「ん~・・・・・・そうですねぇ・・・あ、例えば移動の時間がかかるというのは?」
「馬車の改造ですね。
エルヴィス伯爵領で着手していますよ。
初回の成果としたら1.5倍程度には物を運べるように出来るのではとしていますね。
荷物が変わらないのであれば移動距離が増えると思います。」
「やっているんですね・・・ちなみにタケオさん、目標はどのくらいなんですか?」
「最終目標というのは設定していませんが・・・そうですね・・・今、王都-エルヴィス伯爵邸まで馬で5日、馬車で8日となっていますよね。
これを馬車で5日ぐらいで移動したいですよね。
あ、スミス坊ちゃんの某王家のお姉さんは馬車で4日で来ましたね。
あれは例外としましょうか。
あくまで、移動は日中のみでとして考えています。」
武雄が言う。
「あれは例外中の例外ですよ。
昼夜問わず走るというのは緊急時のみする事だと思います。」
「私とアリスに会いにね・・・それ程の緊急とは思えませんけどね。」
「今にして思えば、その対応で正解だったのでしょうね。
事実、タケオさんがこうやってここを歩いてくれているんですから。」
エイミーが言う。
「あはは、それの見解は人それぞれでしょう。
で、エイミー殿下、他に不便はありませんか?」
「んん~・・・あ、干物ではない魚が食べたいですね。
川魚は極稀に食べられますが、やっぱり海の魚が食べたいです。
干物も良いのですけど、やっぱり生魚を料理した物は別の美味しさがあります。」
「それも輸送に関してですね。
やれるやれないを論じればやれる分類ですね。
ですが、事業化への問題点は簡単に考えてふたつ。ひとつめ、生魚を輸送するのには低温もしくは凍らせて持ってくる必要がある。
ふたつめ、一定の速度で走った方が馬の負担は軽くなりますし、時間は短くなる物です。
なので、事業化をするには出来るだけ輸送日数を少なくする事も重要です。
ですが、街道の品質が管理している町や村、大きく言えば領地毎に違う為、道の出来が良くなく、品質も安定していない。
なので、余計な日数がかかってしまう。
このぐらいが最初の問題点ですかね。」
武雄が指を立てながら言う。
「どちらも大変。
最初のはタケオさんに豆腐を教えて貰った時に父上達がしていましたが。
後で聞いたら魔法師が結構必要だったみたいです。
これを一般でとなると・・・何か大掛かりな魔法具を作らないといけないでしょうね。」
「そもそも凍らせるのが大変そうですけどね。」
「そうですね。
2つ目の方は予算と指導方法の改善でしょう。
領内の街道を高めの均一な品質で作るというのは言葉では簡単ですが、実際は中々出来ません。
例えば第2皇子一家領だと王都との間の街道を高い品質で整備すれば良いとなりますけど、実際は屋敷がある街を中心に、領境に行けば行くほど道は荒れてしまいます。
こればっかりは口で言ったり、指導はしていても中々に良くなりません。
これは難しいのですかね・・・」
エイミーが言う。
「事業化へは時期尚早なのかもしれません。
ですが、少なくとも何かしらの魔法具が出来れば、今よりも不便が改善される可能性があるという事が考えられましたね。
事業化はまだ出来なくても個人取引程度には出来そうですよね。
まぁ、その際の王都での魚の取り扱いは高級食材としてでしょうかね。
輸送費と輸送人員等々で1匹当たりの値段が面白いくらい高値になるでしょう。」
「発案者としてはまったくと言っていいほど、笑えないけどね。」
「凄い高値でも買ってくれる人達が、まずは取引対象でしょうか。」
「・・・とりあえず、この案は実現が難しいと。
他にどんなのがありますかね・・・」
エイミーが腕を組んで考え始める。
「タケオ様、僕も思ったのですが。」
「お、スミス坊ちゃんですか。
何か不便な事はありますか?」
武雄達は寄宿舎に着くまで、考えられる不便な事を考えながら行くのだった。
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