第2237話 スミスとジーナと武雄で打ち合わせ。5(領内発展の方法は?)
「ご主人様、ゴドウィン伯爵領からチーズの輸入ですか?」
ジーナがガックリしているスミスを横目に見ながら言う。
「ええ、一気に需要が高まってしまいまして。
チーズの消費量が3倍になってしまいましたからね。」
「「3倍?」」
「ええ、皆が新しい物に飛びついてくれましてね。
もう、緊急的に賄うために領外から買う方法しかないとなりました。
ほら、近所付き合いで買っておいた方が良いでしょう?
その分、ウスターソースを買って貰えれば良いんですから。
まぁ、輸出出来るかはエルヴィス家とローさんとで話し合うでしょう。」
「いや、それはご主人様的な所が大きいですよね。」
ジーナが呆れながら言う。
「お小遣い的な所はそうなんですけど・・・
実際の商隊の輸送に関して言えば、ゴドウィン伯爵領からチーズを買ったとして、帰りの荷台が空というのは商隊としては旨味がありませんからね。
帰りも何か荷物を載せて帰りたいでしょう。
特産品という形になるでしょうけど、とりあえず載せて帰る品物が出来たというのは良い事かもしれませんね。
もう少し、何か輸出出来る物があると良いのですけど、それは今後の課題ですね。」
武雄が言う。
「タケオ様、それはさっき言っていた食品加工の話ですよね?」
「それもです。
実際は農業関連だけではダメでしょうね。
衣服もそうだし、何かしらの工業製品が作り出せたらいいですよね。
玩具でも良いですし、文具でも良いですし・・・とりあえずは輸出出来る物を作っていくという姿勢が大切なんでしょうね。
言い方は悪いですが、大量に創作してその内の1割でも輸出に繋がれば良いと割り切るしかないかもしれません。」
「タケオ様、売れる品だけ作るというのは難しいのですか?」
「既存の物はどこの地方にもあるでしょう。
輸出に繋げるのなら新しい発想の物か、既存の物を凌駕する性能の物、価格が安い物と相場は決まっています。
価格が安い物というのは現時点では輸送費用の事を考えれば望めないので一旦、除外です。
となると、既存を凌駕する性能か新しい発想・・・ま、そこは私達がどうのこうのとやらずとも領民達が自発的に開発をする土壌を作ってあげるのが大事ですね。
私は自発的に何か作ったりはしますけど、スミス坊ちゃんは領主という立場からさせる方に注力する必要がありますね。」
「ん~・・・補助金とかですかね?」
スミスが考えながら言う。
「それも1つの方法ですよね。
新規開発等は採算が取れるかわからない物です。
その部分をどうやって補助していけば良いかという事ですね。」
「他にもありますか?」
「そうですね・・・見聞を広めさせるために領民を数名、王都や領外に研修旅行に行かせるとか?」
「研修旅行?」
「ええ、基本的に領内にいる方々は領外に出ません。
だから、王都での流行りや好まれている事を知るのは商隊がもたらす情報や領主からの話によってしまいます。
ですが、感性というのは人それぞれなのです。
自分で見聞きした方が製品開発に活かせる可能性があるでしょう。
実際にラルフさん達は組合として王都に来て、交渉をして王都の雰囲気を感じ取って、ダッフルコートを創作しました。
行かなくても出来たのかもしれませんが、行かなかったら出来なかったかもしれません。
ラルフさん達が王都に行ったという行動の後に出来た商品は行ったから出来たと考えてあげると、行った甲斐があったという物です。
それに王都の規模を肌で感じたから工場の効率を高める為に動いているとも思います。」
武雄が言う。
「タケオ様、見るだけで変わりますか?」
「・・・いや、ただ王都を見せてもダメですよ?
業種によって見たい物は違うでしょう。
建設業なら建て方、建築中の家や計画がされている物件の内容、内装や建具の最新の物を見たいでしょうし、農業なら王都でしている主要生産品の農家を訪ねて、どういった事をしているのかとか肥料の種類とか最新の農具を見たいでしょう。
ラルフさん達は王家の衣服を作っている仕立て屋に訪問したりしています。
そこで何か感じる事があったのかもしれません。」
武雄が言う。
「ご主人様・・・ちなみにですが、何も感じないという事はありませんか?」
ジーナが聞いてくる。
「それはそれで良い事だと思いますよ。
つまりは王都とエルヴィス伯爵領が同じだという事ですからね。
なら、エルヴィス伯爵領で新しい事をしたり、生産効率を良くしたりすれば王都を超えられるという事になりますからね。
ですが、それを他者から言われてもいまいちわからないでしょう。
だから見せてあげたいんですよ。」
「・・・専門家に王都の自分がする同種の仕事場を見させるという事ですね。」
スミスが言う。
「ええ、施政者や商隊ではわからないような所を見て貰い、良い事ならば真似をして貰えば良いでしょうね。
段取りをするこちら側としては、王都に見学が手配できるような知り合いを多く持たないといけないという事になるでしょうけどね。
そこは私達が努力しないといけない所ですね。」
武雄が言う。
「タケオ様は知り合いはいますか?」
「いませんよ。
だから連れて来ないでしょう?」
武雄が堂々と言う。
「それに私や鈴音、コノハ、ウカなんかはやりたい事していますからね。
自分達の事で精一杯です。
協力工房方は暇でもなさそうですから、そういう事は落ち着いてからでしょう。」
「あ~・・・そうですね。」
スミスが「まぁ・・・タケオ様の所が最新なんだろうなぁ」と思い、呆れながら頷くのだった。
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