第2235話 スミスとジーナと武雄で打ち合わせ。3(皆の器はどんなのだろう。)
「・・・魔王国がやり過ぎない事を祈るばかりですね。」
ジーナが難しい顔をさせて言う。
「私もそう思います。
秘匿兵器と正式にはなっていませんが、まだ模倣品を作られるわけにはいきませんからね。
何とか犠牲者は出さないようにして過ごせれば良いんですけど・・・」
「タケオ様的には勝ち負けよりも皆で守って、死者が出ない事が一番なのですね?」
「ええ、大敗というのはかなり死者が出てしまっている状況です。
そうなれば侵攻を思い留まらせる為に相手の戦力を削らないといけません。
四の五の言っているよりもまずは行動をしないといけないのですけど、圧倒的な火力と長い射程の兵器が手元にありますからね。
これを多用するしかないのです。
そういった段階まで進んでしまったら、国力差から我が国の存亡の危機だと思います。
まぁ、そもそもそうならないように私たちは立ち回らないといけないのですけどね。」
武雄が言う。
「タケオ様、何とかなりますか?」
「何とかするのが仕事ですよ。
私1人では出来ないので、エルヴィス伯爵やゴドウィン伯爵、テンプル伯爵に協力をして貰わないといけないのですけどね。
あ、話が逸れていますけど、スミス坊ちゃん達は毅然とした態度で日々過ごしてください。
戦局に一喜一憂する事はありません。」
「毅然とした態度ですか。」
「ええ、部屋の中ではいくら動揺してても良いですけど、一歩外に出たのなら常に凛とした態度でいてください。
『この程度の事は普通です』ぐらい言ってのけて結構ですよ。」
「ん~・・・そういう態度を取るというのは僕の為なのですよね?」
「ええ、実情は動揺して取り乱しているかもしれませんが、他の方達は報告のみや憶測でものを言って来ます。
戦場に立たないからこそ過度の想像力を働かせてきます。
そこにスミス坊ちゃんが狼狽えていたらどうでしょう?
不安が増してしまいます。
『負けるかも』、『攻め込んで来るかも』、『奴隷にされるのでは?』等々、悲観的な事を口走ると思います。
残念な事に人々は楽観的な事よりも悲観的な事の方を正しい事だと思う事が多いのです。
なので、どんな情報があっても、どんな噂があってもスミス坊ちゃんは『エルヴィス家は大丈夫です』と常に態度で示しておく事が不安の解消に役立つでしょう。
そして、スミス坊ちゃんを見て周りはエルヴィス家を見ます。
戦局が悪化している情報が入ったとしても『魔王国相手に良く保っている』と豪語すれば良いんです。
そうすれば皆が『エルヴィス家ではこのぐらいは想定内なのか』と思うでしょうし、『次期当主は胆力があって頼もしい』とか良い方に評価してくれるかもしれません。」
「次期領主としての器を見せないといけないという事ですね。」
「そうですね。
ですけど、本来ならその器は今形作っている最中なんです。
とても他の人に評価されるような状態ではないのです。
ですけど、それを見て将来の器を想像しようとしてくるでしょう。
私はスミス坊ちゃんの器は大きく、そして綺麗になると思わせたいのですよ。
たぶんエルヴィスさんもアリスもそう言ってくれると思います。」
「僕の器は綺麗になるのでしょうか?」
「そうなるように王立学院に居るのですよ。
だから、スミス坊ちゃんは勉学に励んでくれれば良いです。
大丈夫、私達は負けはしません。」
武雄が言う。
「ちなみにご主人様の器はどうなのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「私?・・・華美な色も装飾もない器でしょう。
ですが、誰でも使いやすい、どんな料理を入れてもそれなりに見栄えがする。
使用用途が広い器を持っていたいと思いますね。
ジーナ、私の器はどう見えます?」
「・・・私は他の方々は土から出来ているのにご主人様の器は鉄で出来ているかと思っています。
それも色や形は他のと同じなのに、素材が違うという良く分からない器です。」
ジーナがジト目で言ってくる。
「それは使い勝手が悪そうですね。
でも、鉄製の器なら熱伝導が良いでしょうからね。
温かい料理や冷たい料理の温度を長時間維持させるのに便利そうですね。」
武雄が言う。
「そういう所が鉄の器だと思う所です。
ちなみにご主人様、私の器はどうですか?
私としては無地の素っ気ない器だと思うのですけど。」
ジーナが聞いてくる。
「え?ジーナの器は調度品のような装飾のされている綺麗な器だと思いますよ。
ただ、一部が一度欠けてしまったのでしょうか、金継ぎで綺麗に修復されている所があるのです。
それも含めて私は綺麗だと思います。」
「金継ぎ・・・ですか?」
ジーナが聞いてくる。
「ええ、割れた器や器のかけた所を修復する技法です。
割れた所を接着剤で付けて、その部分を金とかを使って装飾するんです。
綺麗に仕上がれば、味わいのある良い器になります。」
「修復技法ですか・・・パラス、わかりますか?」
ジーナがパラスに聞く。
「わかるよ。
でも、マリの方が詳しそうだね。」
「ふむ・・・金継ぎか・・・出来なくはないが・・・漆がないが、ワニスに陶器用の土を混ぜた物で出来るかもしれないな。
今度機会があったら皆でやってみるのも良いかもしれないな。
新たな発見になるかもしれん。」
マリが頷く。
「ご主人様の言っている事を見てみたいですね。」
ジーナが頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




