第2233話 スミスとジーナと武雄で打ち合わせ。1(魔王国での事をほとんど話しました。)
武雄が人事局での用事を済ませた後、魔王国であった事をスミスとジーナに伝えていた。
ジーナの手前、領地異動については話していないが、デムーロ国への侵攻内容はしっかりと話している。
「・・・」
スミスは疲れた顔をさせて下を見ていた。
「・・・」
ジーナは何も言わずに「中央が動けばそんなものですよ」と大して驚きもせずにお茶を飲んでいる。
「・・・うん、陛下なんか机に突っ伏しましたよ?
泣き言も言っていましたけどね。」
「「でしょうね。」」
2人が言う。
「あ、ご主人様、伯爵様には伝えているのですが、陛下から今回の魔王国との慣例の戦争では援軍は出さないという話になっています。」
「まぁ、来られても邪魔なだけのような気がしますけど。
それは置いておくとして、いつもの兵士数よりも3倍程度の相手が布陣するんですよね。
ゴドウィン伯爵と私から報告を上げるとは思いますが、ただ傍観するとは思えません。
陛下は何と?」
「はい、王都の壁の方々に二次防衛拠点の動きを確認させると言っておられました。」
「・・・魔王国が本気になってしまった場合の戦力を知っている私としては意味があるとは思えませんが・・・しないよりかは良いのでしょう。」
「魔王国の数が多いのを利用して訓練だという事です。」
「・・・滅多にない本気の訓練でしょうかね。
端から見ていたいですけど、私は私でその時は隙を見せられない戦場に居ますからね。
勿体ない事をしたかもしれませんね。」
「タケオ様、大丈夫なのですか?」
スミスが聞いてくる。
「さてね・・・エルヴィスさんは頭を抱えましたよ。
あとテンプル伯爵とゴドウィン伯爵を『どう自暴自棄にさせないで落ち着かせられるか』によるでしょうね。」
「タケオ様、魔王国の中央の狙いはまだ言えないのですよね?」
「布陣する時点では言ってはいけないと言われていますね。
スミス坊ちゃん、どう思いますか?」
「・・・兵士数が根本的に違いますし、種族も僕達よりも強靭なのでしょうから・・・
圧倒的な戦力を有している国家が隣に居るという事なんだと思います。」
「うん、そうですね。
なので、変なちょっかいは出してはいけませんよ。」
「はい、タケオ様が僕達にこの内容を教えたのは脅威を教える為ですか?」
「それもあります。
ですが、基本的にはスミス坊ちゃんは何に対しているのか、正しい認識をさせたかったのもあります。
正確な事はまだ言えませんが、それなりに根拠のある数字を教えられますからね。
そして今後の事を考えて貰いたいのです。」
「はぁ・・・正しい認識ですか。」
「ええ、相手を見くびらない、侮らない。
これが大事です。
その上で攻め込まれても痛手を被らせるだけの兵力と設備を維持し、経済的に私達を生かして置けば、旨味があると教える事が侵攻の抑制になると思います。」
「旨味・・・ですか。」
「現時点ではウスターソースとウォルトウィスキーです。
事実、魔王国のヴァレーリ陛下は『早く多くを作ってくれ』と催促をして来てくれます。
私とエルヴィスさんは『順々に作っていき、輸出も増やせるようにしていく』と言って押し留めている最中です。
ヴァレーリ陛下は大人しく待ってくれるようです。
ですが、これもいつか同様な物を作られる可能性があるでしょう。
その時までに新しい商品を作っておかないといけません。」
「それを出すのが僕が領主になっている頃なのですね?」
「ええ、私はそう思うのですけどね。
・・・当面は大丈夫だとは思うんですけど・・・今度、魔王国の国王が替わる予定ですからね。
新しい国王が何を思うか・・・わかりません。
何とか、ウスターソースとウォルトウィスキーで機嫌が取れれば良いんですけどね。
まぁそれは代替わりをした際に非公式で様子を見に行くしかないですかね。」
武雄が微妙な顔をさせて言う。
「ご主人様、魔王国の次期国王の選定方法もしくは候補者の事は聞いていないのですか?」
「ええ、聞きそびれましたね。
それに魔王国の王都やヴァレーリ陛下の周りの人達も特に狙っていないような感じでした。
今思うと国王になりたい者達でギスギスしていても良かったのかもしれませんが・・・そんな雰囲気は上から下までなかったですね。
本当に選定中なんですかね?」
「ご主人様、その辺の情報は事前に知っておいた方が良いと思います。」
「ジーナはなってからでは遅いというのですね?」
「はい、私達一族のようにお酒に弱い種族もありますし、強い種族もあります。
それによって就任祝いでのウスターソースとウォルトウィスキーの送る比率が変わるものと思います。」
「ふむ・・・それは帰ってから考えます。
これから慣例の戦争ですからね。
向こうへの越境は難しいでしょう・・・あ、ヴァレーリ陛下が近隣に来ますね。」
「・・・そう言えば来るとご主人様が先程言っていましたね。」
「え?タケオ様、会いに行っては危ないですよ?」
スミスが心配そうに聞いてくる。
「・・・米料理を作っていれば、匂いに誘われて向こうから来そうですよね。」
武雄が考えながら言う。
「ご主人様・・・さすがにヴァレーリ陛下がそんな行動をしないと思うのですが。
会った事はございませんが、ヴァレーリ陛下は思慮深い方と伺った事がありますし。」
ジーナが言ってくる。
「・・・思慮深い?」
武雄が首を傾げるのだった。
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