第2231話 ご報告に参りました。(アモールと雑談。)
「キタミザト殿、失礼します。」
扉は開かずにアモールが実体化してくる。
「アモール・・・さっきの揺れですか?」
「はい、王家専属魔法師部隊の部屋で爆発がありました。
延焼や建物への影響はありません。
ご安心ください。」
アモールが言う。
「・・・これって例の通信の研究で?」
「いえ・・・そうではないのですが・・・トールと契約している魔法師の作った装置が爆発しまして。」
「はぁ・・・爆発物をね・・・
まぁ首を突っ込むと面倒そうなので今は報告だけで良いですけど。」
武雄が呆れる。
「いえ・・・爆発物を作っているつもりはないのですけどね・・・私もトールもヴァーユも予想しませんでした。
トールには後で小言を言っておきます。」
「ここから発想でもされてというのもあり得ますよね・・・爆発物開発は中々に危ない橋だと思いますけど?
軍拡競争したら奴隷が居る国家の方が圧倒的に有利だと愚考します。
何のために銃の製造を控えていると思っているんです?」
「そこは重々に理解しています。
私達も国家の戦争技術をあの時代にまで発達させるのは得策ではないと思っています。」
「首脳陣や精霊達がそう思うのならば良いですけど・・・爆発物を作るのなら見られても相手にわからないようにし、完全に情報が出ないようにしてからでないとダメだと思います。
それは私達に対してもですがね。」
「はい、留意します。
それと小銃の方は今は第二研究所のみという所で規制が敷かれていると認識しています。
今後の展開はわかりませんが。」
アモールが言う。
「・・・いつかは出さざるを得ないでしょう。
でも、今ではないと思っています。
・・・今出せば、確かに4年後の戦争を優位に進められるでしょう。
ですが、20年後にこの国家が無くなる可能性が高くなると思うのです。
むざむざウィリプ連合国にこの地を明け渡すのも癪に障ります。
対応策と対抗策が出来なければ、うちの研究所以外には使わせませんよ。」
「その通りでしょう。
現在、ウィリプ連合国とカトランダ帝国から小銃の情報はないとアランは認識しています。」
「議題に上がりませんでしたね。
・・・元はカトランダ帝国で生産され、ウィリプ連合国の転生者が持っているんですよ?
その者はバロールと契約しているんですよね。
本当に大丈夫なんですか?」
「・・・アランに進言し、再度情報を取りに行かせます。
他には?」
「小銃の生産者は私が保護しています。
容易にはこの時代では作れないでしょう。
ですが、火薬は別です。
まだ、火薬を使った兵器が使われたと聞いてはいませんが・・・ロケット砲は厄介だと思いませんか?
私が居た日本は山の形が変わったと言われるくらい撃ちこまれました・・・高性能な火薬は脅威です。
類似の研究をしている者が居たら、王立研究所が保護しなくてはいけません。
国内、国外問わずスカウトをして情報の秘匿をする事を進言します。」
「畏まりました。
他にはありますか?」
「長距離通信の研究をしているんですよね?
進捗はどうなっていますか?」
「まだなんとも・・・私達も協力はしているのですが、水晶素子の開発が思った以上に難しいですね。
今のままでは無線機は難しいかもしれません。」
「ふむ・・・出来るとするなら無線機というより、ラジオ放送局とラジオの関係なんですかね?
特定周波数の発信機を各城に配置しておいて、受信機を持っていると考えた方が良いのかも・・・
というより、やっぱり無線通信は難しすぎだと思うんですけど・・・光から電磁波を考え付いたのは某国の天才ですよ?
初期の工学及び物理学なんて、圧倒的な変態物理学者が当時からすればキチガイとも思える妄想をした結果です。
私達は工学は数式が物を言うと思えるのはその変態達の理論と成果と製品を知っているからです。
ここの人達に工学理論を実感させるのは困難なんじゃないですか?
アモール、いきなり無線での言語のやり取りは難しいんじゃないですか?
無線機に拘らずに有線か光によるモールス信号を使った電信の方がまだ実現性があると思うんですけど。」
「・・・王家専属魔法師殿には進言しておきます。」
アモールが面倒そうな顔をさせて頷く。
「それと設置は王家間のみと言っていましたけど、私達王立研究所間もした方が良いと思います。
たぶん・・・今は無いですけど、何か発見した際の情報の共有は時間をかけてはいけないと思います。」
「そちらはアランと王家専属魔法師殿に伝えておきます。」
アモールが答える。
「・・・アモール、私は基本的に王家専属魔法師部隊の研究に異を唱えるつもりはありません。
こちらは新参の研究所長で向こうは歴戦の魔法師です・・・変にプライドを刺激するのは今の段階では不利益です。
今回も会う気はありませんし、直接進言する気はありません。
なので、私の名は出さずにお願いします。」
「キタミザト殿的には4年後までに実用化は難しいと思ったから方向転換を私に進言するのでしょう?
言っても良いと思いますけど?」
「ええ、いつかは到達するでしょうけど、今は時間が無いのです。
まずは目先の戦争を乗り切るために情報戦を有利にしたいだけです。
出来そうな事をまず実用化したいと思うのは普通ではないですか?」
「そうですね。
ですが、この研究内容は王家専属魔法師部隊は戦争までに出来ると考えているからではあります。」
アモールが言う。
「・・・そこをしっかり考えているのなら私が何か言う事ではありませんね。
先の通話への進言は陛下のみで・・・それもアモールが必要と感じたならばで結構です。
あくまで私の独り言です。」
武雄が言う。
「了解しました。」
アモールが頷くのだった。
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