第2227話 楽しい料理教室。(武雄の病気が暴走。)
王城の厨房では。
「ご主人様、その手に隠し持っている物を出してください。」
「ジーナ、気にしてはいけません。」
「何か隠し持っていますよね?
さっきからコソコソと。
さぁ出してください。」
ジーナが武雄に詰め寄っていた。
「・・・これ?」
「・・・ベーコン?」
ジーナが武雄が持っていた物を見て呟く。
「生地に入れようかと。」
「なぜに?」
「いや、だって入れたら美味しいでしょう?」
「・・・後から挟めば良いじゃないですか。
入れると火が通って硬くなると思いますし、ベーコンの油が生地に含まれてしまって美味しくなくなると思いますが・・・
サンドイッチのようにサラダと一緒に挟めば良いだけだと思います。
なんで入れて焼くんですか?」
「いや、美味しいから。」
「だから、美味しくなるとは思えません。」
「・・・作って食べるの私だし、良いじゃん。」
「ご主人様、パンを作っているのですよ?」
「私もそのつもりですよ。
ジーナ、何を憤っているのですか?」
「パンに物を入れるのは邪道だと思います。」
「え~・・・ジーナ的に妥協案は?」
「・・・」
ジーナがジト目で抗議してくる。
「・・・よし、ベーコンを入れるか。」
「だから、入れるのはダメです。
基本に忠実なパンを作るべきです。」
「大丈夫、美味しくなりますから。
それに焼いてからパンの中にマヨネーズを注入しておけば、噛んだ時にマヨネーズがベーコンと供に味わえますよ。
ベーコンの塩だけでなくマヨネーズも一緒に味わえるんですよ?
噛んだ瞬間、ベーコンのちょっとした硬さも味わいながらも中からジワッとマヨネーズが口に入ってくるんです。
ジーナ、普通にベーコンとマヨネーズだけでも美味しいでしょう?
あれがパンを噛むだけで味わえるのですよ?」
「・・・」
ジーナが目線を上にして考えているが、一瞬、口元が綻んでしまう。
「・・・あ!ダメです!」
「もう少しだったのに・・・あ、なら焼いたパンの中にバターを入れますか。」
「いや、ご主人様、入れちゃダメですって。」
「今度は食材を入れていませんよ。
バターを入れておくだけです。」
「塗れば良いじゃないですか。」
「最初から中に入っていれば、あとは食べるだけです。
簡単でしょう?
移動中でも騎乗で食べれて、あら、楽ちん。」
「ええ?・・・」
ジーナが呆れた顔をさせる。
「ははは、キタミザト殿、楽しそうですね。
何をするんですか?」
料理長が聞いてくる。
「ベーコンを入れようとしてジーナに阻まれています。」
「あ~・・・そうですか。」
料理長が微妙な顔をさせる。
「その顔は試したのですね?」
「ええ、入れて焼いた事はあるのですが、余分な油が出てしまって、中のパンが油の味しかしないんですよ。
湯通しもして油を落としてもなってしまって断念しましたね。」
「ほらぁ。」
ジーナが援護を受けて言ってくる。
「あ~・・・そうか、ここのは余計な油が出るのか・・・パスタとかの炒め物には合うけど、パンには難しいのか・・・
なら、焼いている時に油が焼けるように生地に巻けば良いのでは?」
「「え?」」
2人が驚く。
「生地を長く伸ばして、ベーコンを螺旋状に巻いて、生地ごと捻じれば行けるのでは?
それに溶かしバターを上から塗れば生地の所も表面が硬くなるだろうし・・・ドーナツとはまではいかないまでも外カリ中フワが実現できるのでは?」
武雄が考えながら言う。
「「ええ?」」
「・・・というよりジーナの言う通り、無理にベーコンを中に入れなくても良いのでは?
生地を小皿大の大きさにして、少し厚めにして、中央を凹ませ、そこにベーコンとマヨネーズを和えた物を乗せて焼く・・・とか。
そうすれば、要はパン生地でトマトとかの無いピザでしょう?
あ、そうか・・・コーンマヨのパンがこれにあたるのか。」
武雄が真面目な顔で考えている。
「「・・・」」
2人が何も言えずに武雄を見守る。
「・・・ベーコンにマヨネーズだけだと脂っこいのなら刻みタマネギを水で洗って塩を振っておけば、味が落ち着くだろうし、食べる直前に上からかければ、サクサク食感が出せて、噛むと油ジワ~が出来るはず。
・・・出来るか。」
武雄が料理長とジーナを見る。
「「・・・」」
2人共諦めの顔をさせている。
「やりますよ。」
「「・・・はい。」」
2人が返事をする。
「キタミザト殿、何を用意しましょうか。」
料理人が近寄って来て聞いてくる。
「今日の私向けのパン用の焼く前の生地を用意してください。
それを伸ばして、ベーコンを巻くのと刻みベーコンとマヨネーズを和えた物を生地を凹ませてそこに入れて焼いた物、それとトウモロコシがあるのなら、それもマヨネーズと和えた物を乗せて焼きたいです。」
「・・・畏まりました。
すぐに用意いたします。」
料理人がササっとメモを取って用意を始めるのだった。
「はぁ・・・ご主人様の病気が・・・」
「ジーナ殿の方も完成させましょう。
さ、あとは何がありますか?」
「はい、あとの工程は生地の硬さの確認と調整です。」
ジーナと料理長が2人仲良く作業を再開させる。
「・・・あ、チーズバタールという手もあったか、これは帰ってから挑戦してみますかね。」
武雄が2人を見ながらボソッと呟くのだった。
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