第2222話 店を出てから。(散歩に寄り道は基本でしょう。)
王城への帰り道。
「結局、キタミザト殿は満足したんですか?」
フォレットが聞いてくる。
「満足はしましたよ。
ウスターソースは受け入れて貰える可能性があるというのは大切な情報です。」
「キタミザト殿は王都には卸さないのですよね?
王都の情報は必要ですか?」
「王都には国中から人、物が集まります。
ほとんどの物は買えるでしょうし、あらゆる地方の出身者が集まるので味覚の多様性があります。
そして街中に住み着いた地方出身者の食を支えるであろう地場の食堂が・・・ね?
これならウスターソースが売れるでしょう。」
武雄が言う。
「そこはわかりました。
キタミザト殿が狙うのは何ですか?」
「私が契約したのは王都ではウスターソースを売らない。
という事は?」
「・・・中濃ソースが売れる可能性がある。
でも、クリフ殿下からウスターソースの一部と言われる可能性もあります。」
「そう、そこがね・・・。
なので、王都に卸すか契約元に売り込みに行くかの選択になりますね。
まぁ、そもそもが王都どころか近隣領地に輸出出来ない時点で王都への輸出はまだまだ先の話なんですけどね。」
武雄が苦笑する。
「キタミザト殿の協力工房なら数年で達成してしまいそうだと私は思いますけど。」
フォレットが呆れながら言う。
「それはわからないですね。
皆さん、真面目に仕事をしていて徐々に生産量を増やしている最中なんですよ。
この流れを停滞させるわけにはいきませんからね。
行く先々で仕事になりそうな物を色々と物色しないといけないと思っています。」
「ふーん・・・・キタミザト殿?今キタミザト殿の協力工房って何がありましたか?」
「農業はうちの家としてですけど、他には文具、服、ソース、懐中時計、幌馬車、それらの工房用の工作機械を作る工房・・・ですかね。
今、検討して貰っているのは領内の店々からの魔王国への輸出入品を管理する販売代理店ですね。」
「いろいろしていますね。
・・・キタミザト殿、幌馬車って何ですか?」
フォレットが聞いてくる。
「輸送効率を上げられるかの試験です。
今までの積載量の1割から2割は多く載せられるように出来ればなぁという企画ですね。
上手く行けばエルヴィス領内の物流量が増える見込みなんですよ。
まぁまずは出来るかの段階なので商品になるかはわかりませんけどね。」
武雄がそう言いながら「ベアリングの事は秘密だった」と口を滑らした事を後悔する。
「2割違うと今なら幌馬車12台で運んでいたのを10台で運べるという事ですよね。
・・・幌馬車の借り賃って意外と遠征の予算内で割合が多いんですよね。
地味に凄い事かも・・・上手く行くと良いですね。
そして王都守備隊に卸してくださいね。」
「上手く行って商品化出来たら売り込みに行きますよ。」
「それは楽しみだなぁ。」
フォレットが言う。
「キタミザト殿、まだ夕食までありますけど、どこか寄りますか?」
「あ~・・・なら家具屋さんに行きたいです。」
「うん?何か買うのですか?」
「いいえ、冷やかしです。
地方領の人達は王都に滅多に来られませんからね。
王都で流行っている家具を見て、伝えてあげないといけませんからね。
まぁ私が見てわかるのは意匠がどんなだったかとかだけなんですけど。
伝えないよりかは良いでしょうしね。」
「なるほど・・・とりあえず、見学してみるという事ですよね・・・
道すがら家具屋はあったはずなので、そこを見てみましょう。」
フォレットが言うのだった。
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ブルックの実家。
「はぁ・・・結構遅くまで入るね。」
ブルックが誰もいなくなった店内の椅子に座ってダラけながら言う。
「今日は配膳が1人多くて助かった。」
「本当にね。
ヘザー、それにしても配膳している時にお客さんの所に行ったわよね。
何しに行ったの?」
ブルックの両親が聞いてくる。
「うん?・・・私の所属先の上司が来てたの。
挨拶とちょっとした雑談してた。」
「「上司???」」
「そ、キタミザト子爵、新興貴族の1つで王立の研究所を創設させた立役者。
私とアーキンは今回キタミザト子爵の護衛でね。」
「「子爵様?」」
「うん。」
「何で言わないの!この子は!?」
ブルックの母親が怒る。
「所長、昼食べに来ただけだし。
この店が一般人経営だと知っているから特に何も言わずに普通に食べて帰ったでしょう。
挨拶とかされても所長が困るだけだよ。」
「そういう問題じゃないわよ!
もう、この子は!?」
「所長・・・だから来ないでって言ったのにぃ。」
ブルックが天井を仰ぎ見る。
「この子は!貴族様に『来るな』なんて言ったの!?」
「良いのよ、うちの所長その辺気にしない方だし。
基本的に私達の意見聞いてくれるんだよ?
まぁ、今日みたいに勝手に動くけど。」
「ちょっと、ヘザー、話をしましょう。
私達は良いとして、貴女の将来に関わるかもしれないのですからね。」
「平気だって、所長怒ってなかったでしょう?
所長も気兼ねなく食べていたんだから問題ないって。」
「そういう事じゃないわよ。
良いですか?そもそも貴族様の」
ブルックとブルックの両親とで話し合うのだった。
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