第2216話 隣接3国の報告会。4(ウィリプ連合国は隠す気が無いのかはたまた。)
その後、外交局長からウィリプ連合国の穀物や主要食材、雑貨等の報告を武雄は受けた。
「・・・価格が上がったのですか?」
武雄が訝しがりながら外交局長に言う。
「いえ、各町、各店の従業員に『価格が変わりましたか?』と聞いたところ、穀物や主要食材はまだ変わらないといった感じなのですが、武具や農機具が1割高くなったという者が意外と多かったので高くなる兆しがあるという報告です。
原因としては、生産されたり輸入している鉄の量と仕入れ値が変わったそうです。」
外交局長が言う。
「・・・陛下、アズパール王国での鉄等の仕入れ価格は?」
「ああ、変わったとは聞いていない。
報告を受けて各局で検討は始めている・・・だが、タケオの感想を聞きたいのだが・・・」
「アズパール王国は鉱山がないのでしたよね?
ドワーフ王国からの輸入に頼っていると聞いた気がします。」
「ふむ・・・その通りだ。
価格交渉は定期的にしているが・・・今の所、値上げの申し入れもないと聞いている。
カトランダ帝国とはこれから鉄の輸出の交渉が本格化していく予定だが・・・
今の所、産出される鉄の価格は上がっていないと思って良いだろうな。」
アズパール王が考えながら言う。
「・・・外交局長、その農機具や武具の価格の高騰を言ったのはドローレス国ですか?ファルケ国ですか?」
「・・・両方ですね。
ですが、割合的にはドローレス国が2割、ファルケ国7割・・・だったかと思います。
まぁ、国中の店を聞いたわけではありません、あくまで街道沿いでという所になりますが。」
「となると・・・ウィリプ連合国の中での流通価格の変動があると思うのが普通でしょうか・・・
まだ4年はあるんですよね?今動きますかね?」
「そこがわからん。
我らはこっちの動きをウィリプ連合国に対して秘匿させたいから王都で下準備中ではあるのだがな・・・価格変動になるような事をこの時期にするものなのか・・・」
「もしくは何か向こうの国内で問題が発生したという事なのでしょうけど・・・2国でそのような噂は聞きませんでした。」
「陛下・・・カトランダ帝国にお願いして、カトランダ帝国に面している国でも同様の事があるのか聞いてください。
あ、まだ表立っては出来ないのでしたか・・・交渉の席の場で出来ればで結構だがと言っておき、調査をして貰えるかの伺いをお願いします。」
「うん?我らで調査ではないのか?」
「いえ、私達も私達で情報は取りに行かないといけないでしょうが、もう一方からの情報と照らし合わせる必要があると思います。
価格上昇の兆しがあるのなら、魔王国に鉄の融通をお願いしておかないといけないと思います。」
武雄が言う。
「キタミザト殿、魔王国からの鉄の輸入を?
出来そうですか?」
「多くは望めませんでしょうが・・・それに鋼材ではなく、安い剣を溶かしても良いのでしょう?
破棄する予定の剣を買ってはいけないとは言われていませんから良いですよね?
それに・・・溶かす手間を考えると割高になるだろうけど・・・ドワーフ王国からの輸入鋼材が高くなると破棄武器の輸入でも採算が取れそうではあるし・・・」
武雄が考えながら言う。
「タケオ、一応、魔王国に鉄の鋼材としての輸入とその破棄武器の回収と輸入の検討をしてくれるか?
実施についてはわからないからまだ企画段階での見積もりという事になるだろうがな。」
「わかりました。
見積もりを貰い、費用を算出して提出します。」
「あぁ、頼む。
必要な時に必要な量を確保する方法は模索しておかないといけないだろうしな。
外交局長も引き続き、ウィリプ連合国の動向調査をな。
カトランダ帝国との交渉についてもカトランダ帝国でしているウィリプ連合国の情報も聞き出せるようにしてくれ。」
「「わかりました。」」
武雄と外交局長が頷く。
「外交局長、他にあるか?」
「いえ、ありません。」
アズパール王が外交局長に言うが、ウィリプ連合国側ではないようだ。
「さて、最後に魔王国関連の話を聞こうか。」
「そうですね・・・なら、おさらいも兼ねて魔王国の兵士数等の話をしようかと思います。
魔王国で非常事態が発生した場合、王都の王軍が22000名、領主達が15000名が動員されると言われました。
額面戦力では37000名、ですが、相手は非人間種ですから大体、人間換算で45000名分くらいはあると思います。
さらに本気の戦闘であれば、各地のオーガが集結します。
50000名分の兵力が展開出来ます。
対するアズパール王国は全貴族等々も合わせて総兵力22000名。
良く今まで存在していましたね。」
武雄が呆れながらアズパール王に言う。
「そこはタケオの報告書にもあったが・・・外交局長、魔王国の中央はあまり積極的に我が国を侵攻する気はないようなんだ。
タケオが向こうの軍務の者と会って話をした感想だ。」
アズパール王が外交局長に言う。
「それは朗報ですね。」
外交局長が言う。
「そうだな。
タケオが今回向こうで『我々は負けるが、だが、かなりの痛手を受けて貰う』と脅してきている。
勝利する側というのは被害を出す事を嫌がるだろう。
そこを上手くタケオは言い放ってくれた。
まぁ、それでも隙を見せたり、不用意に挑発したりしたら攻めてくるだろうがな。」
「そうですね。
ですが、キタミザト殿の言葉も重くのしかかって良い交渉をしたと評価出来ると思います。」
「そうだな。」
アズパール王と外交局長が頷くのだった。
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