第2215話 隣接3国の報告会。3(両国に偽装の商店を作ろう。)
「で・・・少し話が変わりますが、キタミザト殿、奴隷の市は見ていないとの事でしたよね?」
「ええ、奴隷市を見る前にエルフの一家を闘技場で買ってしまいまして、費用がなくなりましたし。
王都守備隊に入れるのはセスコ氏に依頼した後でしたのでね。
見に行くと買ってしまうかもしれないと思い、行きませんでした。」
武雄が言う。
「ですね。
あれは見に行く物ではありません。」
外交局長が言う。
「・・・タケオ、外交局長達は見に行ったんだ。」
「情に流されそうですね。」
「まぁ・・・今回はあくまで見に行っただけですが、お金があれば同情心で買ったでしょう。
・・・見ていて気分が悪くなりました。」
「私としてはその反応は正しいと思いますけどね。」
「うむ、そうだな。」
外交局長の言葉にアズパール王とタケオが頷く。
「買うまでには至りませんでしたが、次の入荷があれば見繕ってくれるそうです。
それと隣国と言えば良いかはわかりませんが、アズパール王国と隣接しているファルケ国の支配予定の町に拠点を設ける準備を始めました。
数件の物件を確認して精査を始めています。」
「うむ、予定通りだな。
タケオ、一応、ここも何でも屋になると思うが、買いたい物とかあれば言ってくれると仕事になるだろうからな、助かるぞ。」
アズパール王が言ってくる。
「・・・カトランダ帝国とウィリプ連合国で直営店を作るのですか?」
武雄が真顔で聞いてくる。
「ああ、カトランダ帝国は非公式な交渉場所として、ウィリプ連合国は情報収集が主だが、建前上は何でも屋だ、少し売り上げがないといけないだろう。
カトランダ帝国の方は穀物を向こうの軍に卸す事で店としては成り立たせる予定だ。
問題はウィリプ連合国なんだよな・・・売り買いする物があるのか・・・」
「表立っては我が国から引っ越しし、輸出入業をする店となる予定なのですが・・・・買うのはまだしも売る物ですよね。
何をメインに扱いましょうかね。」
アズパール王と外交局長が悩む。
「・・・」
武雄は何とも言えない顔をさせて窓の外を眺めている。
「タケオ、何か良い案でも浮かびそうか?」
「いえ・・・まぁ・・・どうしようかなぁと。」
アズパール王に言われ、武雄が顔を2人に向けるとそう言って考えてしまう。
「うむ、タケオでもすぐには思いつかんか。」
「小物というのは仕入れがしやすく物持ちが良いですよね。
予算上は可能だとは思います。」
外交局長が言う。
「それはそうだが、店先に置いて客が全く来ないのに数年も存続しているというのも変に思われるかもしれないな。」
「それもそうですね。
穀物・・・は、ウィリプ連合国の方が安いですからね。
武具・・・もダメですね、売るだけなのなら良いですが、修理や特注は職人が居ないと受け付けられないでしょうね。
出先に王城の者以外は置きたくないですよね。」
「・・・ワイン・・・とか?」
武雄が考えながら言う。
「「ふむ・・・」」
「穀物は向こうの方が安いのなら確実に差のある穀物を卸さないといけない。
でも、そのような商品は少量生産がされているし、王都や王城で使われるでしょうから輸出に向かない。
やるにしても民間で細々とさせておいた方が今は安全でしょう。
小物は向こうの流行りがわからなければ売れないし、売れなかった場合は客足が伸びないで怪しまれる。
輸入物のワインであれば、希少性という点では買う者が居ると思うし、距離があるので少数取り扱いでも怪しまれない。
こっちで中くらいのを輸出品だからと割高で出せて、味が良ければそこそこの金持ちに売れる。
出来れば扱うのはウィリプ連合国に面している貴族領で生産されている物ではなく、王都からの直接の輸送を前面にだした王都近郊のワイン。
味も良く、値段もそこそこで扱い、仲良くなれば王都から上級なワインを仕入れ、縁を深め情報を引き出す・・・とか?」
「ふむ・・・悪くはないが・・・王都近郊のワインか・・・」
「陛下、第1皇子一家領のワインはどうでしょう?
クリフ殿下が去ってから新貴族が継承しますが、王都の文官出身ですよね?」
「・・・未確定だが・・・そういう話になっているな。
タケオ達の代が皆、地方だからな。
釣り合いを取りたいのだろう。」
「事前に言い含められると思いますが。」
「そうだな・・・対ウィリプ連合国向けのワインの生産をさせるか。」
「はい、カトランダ帝国向けもそこで仕入れられたら良いですね。
出来れば違う銘柄が理想です。
追う事が出来るかもしれません。」
「・・・そう上手く我が国のワインがカトランダ帝国とウィリプ連合国の間を行き来するとは思わんが、追えたら繋がりが見えてきそうではあるな。
まぁ売り切りなのだからどうやって後を追うかというのは課題にはなりそうだな。」
アズパール王が外交局長の案を考えながら言う。
「・・・全ての瓶に番号を振っておいて売った相手の名前を記載しておき、他国で瓶を見つけた時に番号を控えておけば、後日、照会を受けた際に途中に介在する人はわからなくても誰と誰が繋がっているとわかる訳です。」
武雄が言う。
「ふむ・・・それも悪くはないが・・・」
「陛下、キタミザト殿、今のは検討事項という事で文官内で検討をします。」
外交局長が言うのだった。
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