第2209話 いくら出しますか?(ピアノの開発かぁ。)
「・・・これはクリナ殿下のカリスは知っているんですね?」
企画書を見終わった武雄が再び腕を組んで考えながらペイトーとパイディアーに聞く。
「はい。」
「・・・第3皇子一家領で生産者と調律の職人を育成するとはね。
第2皇子一家の所にはヴァイオリンの工房がありますが、それに今度は第3皇子一家ですか。
ニール殿下領でヴァイオリンの普及をし、ウィリアム殿下領でピアノの普及をする。
クリナ殿下が担当しているヴァイオリンは既存の楽器です。
あとは普及だけとなればカリスの役割は譜面やクリナ殿下をはじめとした演奏者の育成ですか。
ですが、クリナ殿下は数年で王立学院に入るので地元を離れないといけない。
対して第3皇子一家のヒナ殿下のパイディアーとエリカさんのペイトーには最低でもヒナ殿下が王立学院に来るまでの13年間という時間があるのでピアノの完成と普及が出来る・・・か。」
武雄が考えながら言う。
「はい、タケオ、ピアノは私達が監修するにしても製作初期は時間がかかります。
3人でするにしても相当な負担です。」
ペイトーが言ってくる。
「・・・はぁ・・・エリカさんを巻き込みましたか。」
「エリカはやる気になってくれています。
ヴァイオリンは不向きでしたので何かしたいのでしょう。」
「ペイトー達が求める要求が厳しいだけだと思うのですけど・・・要求水準を下げるしかないのでは?」
「・・・していますよ?」
ペイトーが言う。
「はぁ・・・職人達への指導と演奏者とはね・・・
ピアノの構造は詳しくはありませんが、素人目に見ても金属ワイヤーを多数使っていると認識しています。
製造は出来ると記載がありましたが?」
「はい、実は王都の工房で針金を専門に作っている工房があります。
そこの助力を得ようと思います。」
「ワイヤーですよ?編めるのですか?」
「編む事は可能と思います。
まぁ、ワイヤー以外にも金物は使うので、それ専用の機械を作る必要はあります・・・タケオではありませんが、協力工房が必要だという認識はしています。
それは探してこれから育成となると思います。」
ペイトーが言う。
「・・・・うむ・・・製品製造というよりも研究という感じが強いんですかね。
ワイヤー製造ね・・・ペイトー、より線で・・・φ20程度も作れると思いますか?」
「基本は編んだワイヤーをさらに編むのですよね?
出来ると思います。」
パイディアーが言ってくる。
「クレーンに使えるか・・・」
武雄が考えながら言う。
「タケオも必要な事があれば言ってください。」
「それはもちろんそうしますけどね・・・ペイトー、パイディアー、ピアノの製造だけでは工房は成り立たないでしょう。
他の事をやらせながら各部品を作ったり、組み立てたりさせるのが良いと思います。
なので、ある程度、他の仕事も斡旋しないと協力工房は作れませんよ?」
「「・・・」」
ペイトーとパイディアーが顔を見合わせる。
「まぁ、それは追々考えるとして、まずはピアノの研究資金という認識で良いですか?」
武雄が言う。
「・・・はい、それで良いです。」
パイディアーが考えながら言う。
「ちなみに完成形は学校の音楽室やコンサートホールにあるやつですか、それとも家庭にある壁際にあるやつですか?」
「タケオ、それはグランドピアノとアップライトピアノと言います。
タケオはスクエア・ピアノというのは知っていますか?」
ペイトーが聞いてくる。
「・・・グランドピアノというのしか呼称を知らない人間ですよ?初耳ですね。」
「グランドピアノに比べて、比較的簡単な構造のピアノと認識してくれれば良いです。
そうですね・・・大き目の四角い箱にワイヤーを張って弾くような感じです。
確か、日本に入って来たピアノも最初はスクエア・ピアノのはずです。」
「・・・それが私の幼少期に残っていなかったという事はデメリットがあったのですね?」
「音量が・・・」
「あまり早いのが・・・」
武雄の問いに2人が目線を逸らす。
「つまりはピアノ研究としてはそのスクエア・ピアノをまず作り、その後、グランドピアノを目指すという流れで良いのですね?」
「「はい。」」
2人が頷く。
「ふむ・・・まぁ、出来る出来ないは別として幼少期から音楽に触れる環境は用意してあげたいか・・・」
武雄が考えながら言う。
「「ですです。」」
ペイトーとパイディアーが激しく頷く。
「良いでしょう。
ピアノの開発資金を提供します。
そうですね・・・金貨200枚で良いですか?」
「「タケオ!」」
ペイトーとパイディアーが満面の笑みを向けてくる。
「家にあるような・・・アップライトピアノでしたか?
あれも50万円とか100万円とかかかるんじゃないですか?
換算すれば金貨5枚から金貨10枚・・・それも大量生産してその値段でしょう?
いくら機構はわかっているとはいってもね・・・開発となれば金貨200枚程度は必要でしょう。」
「「ありがとうございます!」」
ペイトーとパイディアーが頭を深々と下げる。
「子供達に教えられる程度の簡単な楽譜の用意もお願いします。」
「「はい、お任せください!」」
「パナは弾けますか?」
「・・・私達クラスなら簡単な物は平気です。
それはコノハやウカ、ダキニもですね。
本格的なものはカリテス達プロしか出来ませんよ。」
「・・・簡単という基準がわかりませんが・・・
あれですね。
ペイトー達は演奏者も育てるでしょうが、普及の為には教育者も育てないといけないかもしれないですね。」
武雄の言葉に精霊達が頷くのだった。
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