第2206話 アズパール王に報告を。(仕事山積みなんですね。)
王城のアズパール王の執務室。
武雄とアズパール王の2人が執務机を挟んで座っていた。
「タケオ、エルヴィス伯爵の報告書は読んだ。」
「はい、面白いでしょう。」
「はぁ・・・そうだな。
傍から見れば面白いし、かなり挑戦的だ。
見通しもしっかりしているから今後の成長予測は考える通りにほぼ行くだろう。
エルヴィス伯爵は良くやっているな。
だが・・・慣例の戦争・・・相当難儀なようだな。
テンプル伯爵とゴドウィン伯爵を抑えられるかが、肝心になってくるだろう。」
「難儀・・・では、魔王国 ダニエラ・セラオ・ヴァレーリ陛下、ブリアーニ王国 カールラ・ブリアーニ女王陛下との打ち合わせ内容の口頭報告をします。」
「・・・うむ、聞こうか。」
アズパール王が頷くのだった。
・・
・
武雄の報告を聞いたアズパール王は机に突っ伏していた。
「・・・」
「まぁ、そうなるでしょうね。」
武雄がスッキリした顔をさせてお茶を飲んでいる。
「慣例の戦争だと思っていたら、いつもより多くの兵士が動員されていて魔法師だと?
ついでに、それは見せかけで本命は南方の国家への侵攻で、所要が約1週間・・・いくらなんでも短すぎる。
・・・相手国が小さいのかもしれないが、タケオが聞いてきた限りでは戦力的に我が国の魔王国方面の兵士よりも多い所相手に・・・
・・・なんで我の時にこんなのが多々あるんだ・・・」
アズパール王が弱音を吐く。
「1か所のみの事柄のようですけど、関連して2か所、3か所同時に発生しているのでしょうね。」
「まぁ、そうなんだが・・・なぁ、タケオ、どうする?」
アズパール王が体を起こして武雄に聞いてくる。
「対魔王国には現状維持しかありません。
慣例の戦争はやるにしても積極的な交戦はしない、仕掛けられたら蹴散らす・・・程度でしょう。
外交面では不用意な挑発はしない、経済面ではそれなりに付き合う・・・ですかね。
ヴァレーリ陛下達には言って来ましたが、基本的な戦略は『勝ち取る領土に対して犠牲者数が割りに合わない』と思わせる戦力を置いておく事で侵攻を躊躇させるしかありません。」
「・・・それしかないか・・・
まったく、我のこの仕事の多さの元凶はウィリプ連合国だな。」
「ですね。
ですが、悪い事ばかりではないですね。」
「そうだな・・・魔王国においては、中央の者達は我が国に侵攻する気が薄いという事がわかったのはなによりだ。
今後も現状維持と領内発展、防衛設備の拡充をして行けば良いという方針が出せるのは良い事だな。
カトランダ帝国においても急速に和解に向かっている。
こちらも何とか物にしなくてはな。
今まで3方面の戦局だったのが、2方面になるのは少しは気が楽になるという物だ。
それに魔王国は敵国ではあるものの、経済的に結び付きが強くなりそうだな。
そこはタケオの腕を見せて貰うか。」
「欲しい物を買って来て、欲しがっている物を少しずつ卸しているだけですよ。
今回の事で我が国の中央から魔王国までの道筋はわかりました。
仲介業者とのやり取りも問題ありません。
4年後に向けての大量の小麦の輸入を改めて仄めかしてありますので、時が来たら発注をお受けします。」
「うむ、タケオ、よくやった。
まずもって食料の確保が大事だからな。
となると・・・・ウィリプ連合国との戦争の半年前には第1弾の輸送を完了させたい。
場所は王都経由でニールの所までだ。」
アズパール王が考えながら言う。
「第1弾・・・ですか?」
「ああ、一度に送られても保管場所がな。
3回か4回に分ける方が良いと王都では考えている。
1回の量は今回のエルヴィス伯爵達が輸送した量の倍にしたいな。
最終的な総量は財政局と経済局がやりあって・・・協議中だよ。
少なくとも近い間隔で開戦前に2回は輸入するだろうが、その後が未定だ。
この2回は確実に輸入する事になるから魔王国に伝えて構わん。」
「わかりました。
業者に連絡を入れておきます。」
武雄が頷く。
「頼むな。
はぁ・・・で、タケオ、魔王国の首脳陣に随分と戦術を授けたんだな。」
アズパール王が呆れながら言う。
「この件については、先ほどの報告でも言いましたが、私は結果的に良い案を提示出来たと思います。
まわりまわってウィリプ連合国の戦力を下げられる可能性を高めたのですから。
我ながら良くやったと自負しています。」
「確かにその件は良くやってくれたと思う。
だが、些か実効性が高過ぎないか?
なんだったら、最後の国土の北半分を割譲し併合すると提案するだけで良かったのではないか?」
「それも1つの案としてはあったと思います。
ですが、敢えて具体策を提示する事で対魔王国で常に具体的な戦術を考えている者が居る事を認識させ、我らの国土に侵攻した際は多大な犠牲者を出す可能性を仄めかしておく事で、侵攻への意欲を抱かせないようにする効果はあった物と考えます。
事実、向こうの首脳陣には驚かれた事と私自身が認められたような感じがありました。
これについては私は後悔しておりません。」
武雄が言う。
「・・・まぁ、そもそもが戦力に差があるのだったな。
ここに戦術が加わらなかった所で我らの負けは必至か。
むしろ、タケオが魔王国の首脳陣の信頼を得て来れた感触があるのであれば、悪い提案ではなかったのだろう。
だが、これで魔王国との戦争に知恵が付いた。
タケオの役割も重要性が増すだろうな。」
「それは致し方ないと考えています。」
武雄が頷くのだった。
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