第2205話 御前仕合の話。(参加して良いですか?)
武雄の正面にスミスとジーナ、エイミーとドネリーが陣取る。
他の者達は級友たちと食事をしていた。
ブルックとアーキンはクゥ達の隣に移動している。
「9月にある御前仕合申込書?」
武雄がスミスから出された書類を見ながら言う。
「はい、僕とジーナが出ようかと思います。
良いですか?」
「出たいのなら出てみるのは良いとは思いますけど・・・マリ、スミス坊ちゃんは大丈夫なのですか?」
武雄がそう言うとチビマリがスミスの肩に現れる。
「タケオ、丁度良い腕試しだと思わぬか?」
「まぁ、マリの望みは流派創設ですからね。
これ以上に名を広める一歩としては格好の材料でしょう。
ですけど、スミス坊ちゃんが上位に行かなければ名が轟きません。
上位を狙えるのですか?」
「うむ、聞いた限りでは予選後はトーナメントになるのだが、ベスト8には行けそうだ。」
「・・・それはスミス坊ちゃんが強いのか、そもそもの基準が低いのか・・・
わかりかねます。
まぁジーナは優勝候補でしょうけど。」
「確かに優勝以外にないな。」
「いや、優勝して良いのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「特段、何もありません。
勝ったからといって給与を上げれないのは残念なのですが・・・あ、なら優勝特典を付けてあげましょうか。
そうだなぁ・・・私が出来得る限りで金貨1枚以内という制限はありますが、ジーナが望む事をして良いですよ。」
「私が望む事ですか?」
「ええ、私がしてあげます。」
「ご主人様・・・なんでも良いのですか?」
「なんでもではないですが、出来得る限り叶えてあげます。」
「・・・」
ジーナが考える。
「それこそ、私が作り出した料理全品でも良いですよ。
あ、スミス坊ちゃんはベスト4に入ったらしてあげましょう。」
「僕はベスト4ですか?」
「そのぐらいが目標なら頑張れるでしょう?
まぁ、スミス坊ちゃんもジーナもパラスとマリが居ますからね。
大怪我はしないでしょうから・・・やれるだけしてみるのも良いでしょう。」
武雄が言う。
「・・・タケオ様なら断ってくれると思ったのに・・・」
「ははは、主、見通しが甘かったですね。」
チビマリが笑っている。
「スミスの目標はベスト4ね。
ふーん。」
エイミーがボソッと言う。
「エイミー殿下、何か?」
武雄が聞いてくる。
「いえ、何も・・・」
エイミーはそう言うが、武雄にアル、パナ経由でエイミーの伝言が届く。
「え?・・・エイミー殿下、私の代わりにジーナに金貨10枚賭けておいてください。」
「かなりの信用ね!?」
「ジーナの本気を知ってれば、金貨1000枚でも良いですけど、さすがにそこまですると相場が崩れそうですからね。
この程度で。」
「わかりました。賭けておきます。
なら、私もジーナを信用して金貨10枚にしようかな。」
エイミーが考えながら言う。
「はぁ・・・私への期待が高いのはわかりました。
ご主人様やエイミー殿下・・・ドネリー様も賭けるでしょうからね。
負けられませんね。」
ジーナが諦めながら言う。
「まぁ、負けても構いませんけどね。
スミス坊ちゃんもジーナも全力を尽くす事を覚えるのには最適でしょう。」
武雄が言う。
「「はい。」」
スミスとジーナが返事をする。
「・・・で、それよりもこのパンフレットの募集要項部分が上から紙を貼られて書き直されているんですけど?
これは何ですか?
明らかに特定の種族と爵位や騎士章持ちは出れないとされているですけど。」
「あ、ご主人様、それはご主人様やアリス様、ビエラ等々が出れない仕様に書き換えられました。
私は問題なく。」
ジーナが言ってくる。
「・・・来年からジーナの種族も出れないかもね。」
「そんな事ないと思いますけど。」
ジーナが武雄に言う。
「そうであって欲しい物ですけど・・・ま、今は今年のを見据えて訓練しないといけませんね。」
「はい、ご主人様に良い報告が出来るようにします。」
ジーナが頷くのだった。
ちょっと離れたジーナを見守る会の生徒達は。
「・・・ジーナ殿出るって。」
「こっちも出るか?」
「キタミザト様の予想が正しければ来年は出ないんだ。
来年に出よう。」
「「弱気だねぇ。」」
「ふっ・・・負けが確定している勝負に出る必要はないさ。
出来るなら上位の賞金が良い。
今回はスミス殿にジーナ殿が出る。
予選が2枠なくなるような物だ。
それに上級生も出るかもしれない、俺らはまだ1年、まだ剣技の授業が始まったばかり、急ぐ必要はないさ。」
「「堅実だねぇ。」」
「ルークは出なくて大丈夫なの?」
コートニーが聞いてくる。
「賞金は魅力的だが・・・賞金が出る上位は無理だろう。
なら、今は出るだけ無駄。
やるならもっと自信が付いてからが良い。」
「そう、それも良いね。」
コートニーが頷く。
「でも、来年もジーナ殿が出ると言ったらどうするの?」
「「「・・・」」」
皆が黙る。
「・・・さ、再来年にしようか?」
「来年出るなら、再来年も出そうだけどね。
諦めて記念に1回は出ておこうよ。」
「・・・3年の時に出ようか。」
「そうだね。
3年間頑張れば誰かしら予選突破は出来るだろうし。」
弱気な見守る会なのだった。
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