第2191話 スミスが報告に来ました。(次の訓練を用意します。)
王城のアズパール王の執務室。
ジーナは執務室の扉の横に立ち、ウィリアムとスミス、オルコットの3名がアズパール王が座る執務机の前に立って話をしていた。
「以上、問題なく引き渡しが終わりました。
陛下、ご助力ありがとうございました。」
スミスが頭を下げる。
「うむ、スミス、何事もなく終わったか?」
アズパール王が聞いてくる。
「はい、特に問題となる事はなかったかと思います。」
スミスが報告する。
「そうか、無事に引き渡しが終わって良かったな。
残るはエルヴィス伯爵領に無事に着く事だな。」
「はい。
ですが、あまり不安視はしていません。
大丈夫だと思います。」
「うむ。
スミス、今回の穀物の買い付けについて、自身で総括するとどうであった?」
「量が多かったので緊張しました。
決める物も多く、新しい事ばかりでしたが、ジーナや皆様の協力の下、手配が出来たと思います。
色んな方に説明するにも事前に僕が知らないといけない事が多くありましたのでそちらの勉強の方が大変でした。」
「うん、そうだな。
1人で決めなくてはいけない事はあまり多くはない。
ほとんどの場合は部下や協力者と相談をし、決めていく事になるだろう。
今回はそれが学べたという事だな。」
「はい、部下を大事にしないといけないと思いました。」
「うむ、良い教訓だな。」
アズパール王が頷く。
「エルヴィス殿、エイミー殿下とパット殿下はどうでしたか?」
オルコットがスミスに聞いてくる。
「どう・・・とはなんでしょう?」
「そうですね・・・例えば、エルヴィス殿と話をしていて、高圧的だったとか、勝手に数量を減らして納入したとか。
王家と貴族という立場ではなく、取引相手や商売相手としてしっかりと対応していなかったとか。」
「・・・いえ、ありませんでした。
普通に対応していただけたと思います。」
スミスが少し考えてから答える。
「そうですか。
なら、よろしかったです。」
オルコットが言う。
「うむ・・・とりあえず、以後、同じような事があったらまたしよう。
スミス、ジーナ、ご苦労だった。
アルマとレイラに挨拶に行って美味しい物を貰ってきなさい。」
アズパール王が言う。
「はい、陛下、失礼しました。」
そう言うとスミスがアズパール王の執務室を出て行く。
ジーナがスミスの前に出て扉を開き、スミスの退室後に自身も出て頭を下げて扉を閉める。
「・・・ふむ・・・ウィリアム、どうだ?」
「想定通りと言うか、エイミーがさっさと片付けてしまったようですよ。
城門で輸送隊を待って、引き渡しの場所に来る間に書類の確認、輸送量の増加に気が付いてすぐに精霊を通してジーナに連絡、スミスが買うことを決めて、その場で契約書等の書類を作成、サインして終わり。
一連の流れが良すぎで訓練にすらなっていません。」
「・・・エイミーは要領が良すぎだろう・・・で、ジーナとやり取りするならそれはすぐに終わってしまうな。
はぁ・・・まぁ、あのエイミーがジーナを飛び越してスミスに連絡をしてくるわけないか・・・
予想通りと言えばその通りだが・・・エイミーの成長に繋がっているのだろうか・・・
エイミーは能力が高いから致し方ないか。」
「エイミー殿下は既に実践経験豊富ですから。」
オルコットが言う。
「エイミーはもっと子供っぽくして良いと思うんだがなぁ・・・まぁ、今後スミスに引き出して貰うか。
で?パットの方はどうだ?」
「・・・まぁ報告を受けた際はちょっとアレでしたが・・・
他人に当たる事もなく淡々と総監局の者の言う通りにしていたそうですよ?
エルヴィス殿にも受け渡し時に足らない分を王都で買った事を報告して了承を得ていたようです。」
オルコットが言う。
「・・・苛立ちを表に出して机を叩いたんだったか?
まぁ、報告に来た兵士を詰ったりはしなかったんだからそこまでの問題ではないとは思うが・・・あまり褒められた行動ではないな。」
「そうですね。
親しくもない部下の前で怒りを表に出すのは些か不用意でしたね。
これが見知ったり、日頃一緒に居る部下であればまた違った感じだったのでしょうが。
交渉でこれをされると少し厄介ですね。」
「父上、その辺は経験ではないですか?
行動するにも総監局に相談にまず行っているんです。
あのタケオさんを待ち構えていた時に比べれば、かなり成長しています。
いきなり、常に冷静に対応するなんて出来ませんよ。
今は成長が確認出来た事を喜ぶべきだと思います。」
オルコットとウィリアムが言う。
「・・・そうだな。
パットは成長していると見れるな。
ふむ・・・オルコット、パットの次の実践訓練は自身で発案するような物を用意出来ないだろうか。
発想力を見てみたい。」
「ん~・・・そうですね・・・
あ、そうだ、ちょうどレッドドラゴンの棲み処の跡地の利用方法がありましたね。
あれで考えて貰いましょうか?」
「跡地の再開発か・・・軍務局の演習地と兼用で専売局の用地という案だったよな?」
「いいえ、あれは陛下が言っただけで誰も案として上げていませんよ?
まだレッドドラゴンが引っ越し前なので上層部で密かに検討している段階です。
なので、そこにパット殿下も参画させましょう。
レッドドラゴンの跡地とは内緒で。」
「・・・なぁ、オルコット、それ王立学院の者達にも考えさせてみないか?」
「ほぉ?陛下、若手に考えさせるのですか?」
「あぁ・・・王立学院やパットでは実効性は低い物が出て来るだろう。
だが、新しい視点という所では大いに期待が出来る。」
「なるほど、いろんな発想を見たいという事ですね。」
「あぁ、良い発想があれば文官達で出来るようにしてやれば良いだけだ。
それに国政に関与できるというのはやる気に繋がるんじゃないか?」
「ふむ・・・なるほど。
で、あるのなら公募してみますか。」
「そうだな。
王立学院の者の案が通ったら報奨金を出してやろう。」
「陛下のお小遣いからですね?」
「えええ・・・よし!なら奮発して金貨10枚と記念メダルにするか。
ははは、どうせ、実現は難しい内容だろうしな。
内容だけでも面白い物があったら優秀賞と佳作で良いのを2つ選んでやろう。」
アズパール王が幾分王立学院を侮る。
だが、ウィリアムは「父上、それ危険ですよ?エイミーとスミス、ジーナが組んだらどうするのです?実現性がありそうなのが出来ますよ?それに後援はタケオさんですよ?」と思いながらアズパール王の事を見守るのだった。
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