第2179話 初雪と仕事の話。(ゼラチンが届きました。)
研究所の業務を終えて武雄と初雪は買い物をしてからエルヴィス伯爵邸に向かって歩いていた。
「これでパナの言っていた材料は揃いましたね。」
「タケオ、買った草の内、何個か私達の生息地域にもありますよ?
他のも育ててみますか?」
「そうかぁ、需要がどれほどあるかわかりませんが、今日買った草を全種類用意出来るようにしていれば急な注文に対応出来るかもしれませんね。
魅力はありますね。
領内にあるのでしょうかね?」
「領内であの草々はあるという内容が棚の紙に書かれていました。
もしかすれば私達の所で栽培が出来るかもしれません。」
「なるほど・・・初雪達はもう文字が読めるのですね?」
「はい、まだ全部の文字・・・単語はわかりかねていますが、商店で書かれている内容は理解できています。
今、ユウギリは伯爵の隣の席で書く事を習っています。
難しいようです。」
「スライム達の共有化は本当に成長速度が速いと感じさせられますね。
初雪は実感できていますか?」
「私は図面を書いて文字の便利さを理解しました。
そういえば、最近はあまり長くはありませんが、綺麗な一直線を書けるようになってきました。」
「・・・フリーハンドで綺麗な直線って・・・かなりの技能者ですよ。
地図の作製は上手く行っていますか?」
「はい、スズネやトレーシーが確認の為に書いた物を持って現地を確認に行ってます。
トレーシーからは『街は正確に、街道は大まかで』と言われています。
それと戦争や魔物の討伐の際などは正確性より書く早さが重要になるからとも言われました。」
「なるほど、全部が詳細に書かれているのが理想ではありますが、戦闘関係ではそんな事をしていては数時間で配置が変わることもありますからね。
まぁ、そうした場合にはその地の平面的な・・・地面と木々を書くだけにして、兵士や魔物は駒か何かを置けば良いという事でしょうね。」
「私の仕事が減る?」
初雪が言ってくる。
「減る訳ではありませんね。
例えば今回の慣例の戦争では、私と初雪が確認する物が1つ、エルヴィスさん達に見せる物が1つ、後方のアリス達が見る物が1つと王城用で1つ、全く同じ物が4つは必要になります。」
「・・・タケオ、駒も配置するのでしょうから地図は大きくなると思います。
となるとタケオと私用、伯爵用は出来ますが、アリスと王城用はどうやって送るのですか?
シウン達ではノート1枚か2枚分しか送れません。」
「・・・ノート1枚分を送ってアリス用は鈴音に大きく尺度を変えて書かせますか。
王城では誰かに書かせるか・・・そこは向こうが考えれば良い事ですね。」
「タケオ、私の仕事が減っています。」
「書く仕事は減るかもしれませんが、初雪は常にスライム達にフウガ達を使って上空から見させてそれを取りまとめて駒の配置を移動させないといけませんよ。
一番重要な情報を扱うのです。
これは大変ですよ。」
「仕事があるなら良いです。」
「初雪が心配しなくても仕事はいっぱいありますよ。」
武雄が苦笑しながら初雪に言う。
と、エルヴィス伯爵邸の門に到着する。
「あ、主~。」
「あ~。」
「きゅ。」
「ニャ。」
正面から肩にミアとタマを乗せ、クゥを抱えたビエラがやって来る。
「あら、おかえりなさい。
今、帰りですか?」
「はい、主も仕事お疲れ様です。
コラ達と話してきました。
特に変わった事はないそうです。
人間の冒険者もサスケ達には近づいてこないと言っていました。
これからも注意してあまり近づかないようにすると言っていましたよ。」
ミアが報告する。
「うん、不用意な接近は危険ですからね。
距離を取って対応していきましょう。」
「はーい。」
「はい!」
「きゅ。」
「ニャ。」
チビッ子達が返事をする。
「今日は夕食なんですかね?」
「美味しい物です。
ねービエラ。」
「はい!夕食は美味しい!どれも!」
「ニャ?」
「きゅ~。」
「あ~、そうですね。
堅魚節を使った出汁なら使い終わったのを貰ってタマが食べたいですよね。」
ミアがタマの声に反応する。
「料理長に聞いてみましょうね。
さ、とりあえず帰宅しましょう。」
武雄がそういって玄関に向かうのだった。
・・
・
エルヴィス伯爵邸の厨房にて。
「戻りました。」
武雄が厨房に入ってくる。
「「「キタミザト様、おかえりなさいませ。」」」
と、その場にいた執事、メイド、料理人全員が起立して挨拶をする。
「うん、今日の夕食はなんですか?」
「はい、今日は鶏肉のソテーです。
それとパンと野菜、刻んだタマネギとニンジンを使ったスープです。
野菜のドレッシングはマヨネーズと考案したオリーブオイルを使っていないドレッシングの第1弾です。」
料理人が言ってくる。
「ふむ、なるほど、スープの出汁はなんですか?」
「はい、今日は堅魚節を使っています。
出汁を取った後の物はタマ殿のおやつにと今、軽く乾かしております。」
「あぁ、そうですか。
タマが食べたがっていたので気になったのでね。」
「わかりました、では夕食時に少しお出しする事にします。」
「はい、お願いします。」
武雄が頭を下げる。
「お、タケオ、帰って来たか。」
料理長が武雄に近付いてくる。
「戻りましたよ。
何かあるのですか?」
「あぁ、王城から荷物が届いてな。
ゼラチンというのが届いたぞ。
あれはなんだ?」
「・・・」
武雄が固まっている。
「うん?なんだ?食材と書かれていたんだが・・・違うのか?」
「料理長・・・餡子作ってください。」
武雄が真剣な顔で言ってくる。
「うん?・・・あぁ、明後日の予定だが、明日にでも作ろう。」
「ええ、出来たらこし餡でお願いします。」
「・・・ああ、わかった。
タケオが戻ってくる夕方までには出来ると思うぞ。」
料理長が頷く。
「ふふふ・・・とうとう羊羹が出来る。
皆にお裾分けですね。」
武雄が呟くのだった。
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