第2176話 魔王国物産展準備中。(いつかは黒字化をしたい。)
その頃の大広間。
「タケオ、本当に色々買ってきたんだね。」
チビコノハが武雄の肩に乗りながら言う。
「私では良し悪しがわかりませんからね。
手あたり次第です。
良く百貨店の物産展というのは広告で見ましたけど、バイヤーの人は大変なんですね。」
武雄がそう言いながらリュックから出してリストと照会をし、一緒に居る執事に言って番号と簡易的な紹介文を書いて貰っている。
「まぁ目利きってそういうものだしね。
専門性が高いからこそ出来るって事よね。
ん?・・・えーっと・・・魔王国のパン用の小麦か。」
チビコノハが武雄の肩から降りて机に置かれた小麦を見る。
「・・・・コノハ、まき散らしちゃダメですよ?
これは、リストのここで、はい、お願いします。」
武雄がそう言いながら次の物を配置し、執事と話をしている。
「んー、しないよ~。
タケオ、ちょっと中身見るからね。」
「ええ、良いですよ。
そうですね、はい、うん、詳しくは書かずに、ええ、見ている者が考える風で。」
武雄が執事と話しながら次の所に行く。
「・・・ふむ、実が小さいし、若干黄色味の籾ね。
パン用とあるからなぁ・・・強力粉だと良いんだけど・・・観覧会が終わったら試作させて貰おうかな。
2kgしかないと私達が使うのは難しいのかなぁ~・・・ん~・・・ん?こっちは菓子用?ということは薄力粉?・・・これも試作に回さないと・・・
確か南町で村作るって言ってたよね、籾の状態で輸入して作付けかな?
村丸ごと統一品種にして一大生産地にさせる方法もあるよね。
・・・伯爵に相談しなきゃ。」
チビコノハが頷く。
「コノハ、食べ物関係は置き終わりましたから次は布や糸ですよ。」
「は~い、よし、まずは伯爵と料理長に頼まないといけない事が出来たね。」
そう言いながらチビコノハが武雄の下に向かうのだった。
・・
・
「・・・タケオ、買い過ぎだよ。」
チビコノハが武雄の肩に乗りながら言う。
「ふぅ・・・買ったねぇ。」
武雄が置ききった室内を見回しながら達成感に笑顔になる。
「布って言ったから布かと思ったけど・・・婦人服や男性用の服、毛布まで買ってくるなんて・・・」
「布製品です。」
「いや、まぁ、布だけどね?
あっちなんか、革製品で集めてあるよね?
鞄に靴に・・・あれなんか大工さんが使うような道具入れだよね?」
「売れないですかね?」
「・・・タケオがあれを見て何を売れると思ったのか聞きたいわ。
真似はするとは思うよ?
でも輸入にまではいかないんじゃない?」
「ですね。
まぁ、他国の製品を見て真似るのは古今東西どこの技術者もしている事ですよ。
これで製品の性能やらデザインが洗練されれば良いだけです。
結果的にこの地の産業が盛り上がり、領外に対して売れる可能性が高くなるんですからね。
それにそうする事で色んな下地産業が強固になります。
あらゆるものが作れる環境が整うはずです。
1つの産業、1つの業種が発展すれば良い訳ではないんですよ。
皆が次の段階に上がらなければね。
生産者だけ、消費者だけではなく、生産部門、製造部門、農業、酪農・・・食事、衣服、生活環境・・・全ての人が次に上がらなければ消費は増えません。」
「まぁ・・・言わんとしている事はわかるけどさぁ。
一個人がする事でもない気がするけどね。」
「まぁね、ですが、今回の件で、製品の品質やデザイン性が高まれば他の物へ波及するでしょう。
家具や建物にだって波及するかもしれません。
・・・今のままでは気付きが遅いんです、皆に一気に見せて意識を加速させないとね。」
「はぁ・・・タケオがエルヴィス領で良かったのかもね。
こんなの王都でしたらアズパール王国の全職人が泣くわよ。」
「変えなくて良い物まで変える必要はないですが、あらゆるものが誰かが作った物に影響を受けますからね。
新たに何かを思いつく人が1人でも出てくれば、今回私がした事は意義があったということでしょうね。
・・・本来なら自身の目で見聞き出来れば良いのでしょうが、旅が出来ないこのご時世、出来ないのなら何かしら商品を見せて新しい刺激を与えなければいけないという事でこの量です。」
「それにしてもこの量とはね・・・
タケオ、収支は真っ赤でしょう?」
「・・・皆さんには2、3品くらい輸入する事になれば良いと言っていますけど、本音では2割ぐらいの商品で輸入に繋がってくれないと収支が合わない気がします。
今回は持ち出しなので、キタミザト家の家計には響きませんけど・・・」
「ふむ・・・難しいかな?」
「ですかね。
まぁ・・・長い目で見て、皆の収入が増え、ウスターソースとウォルトウィスキーの消費量が上がるのを待ちますかね。」
「それもそれで長すぎると思うけどね。
穀物や食材なんかは輸入に繋がるかもしれないけど、少量だろうね。
布地はラルフ達仕立て屋がどう見るかだろうね。」
「結果をすぐに見たくないので私は王都に行っています。」
「そっちもそっちで大変そうだけどね。」
「あっちは報告だけですからね、気が楽ですよ。」
「タケオがそう言うなら良いけどさ。」
武雄とコノハが大広間を見渡しながら雑談するのだった。
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