第2173話 夕食後の報告会。2(側室はどうするの?)
ビエラが皆に報告をしていた。
「あ~。ジーナ、元気。
スミス、買い物。」
「リツの所からの帰りに王都城門に寄ってジーナ様と会ってきたそうです。
スミス様は王立学院の人達と買い物中で会えなかったそうです。」
ミアがビエラの言葉を通訳する。
「うむ、元気なら何よりじゃよ。」
「ス・・・スミスに友達?」
「アリス、そこは驚嘆しちゃダメですよ。
学院は同年代が集まる場所ですからね。
友人も作りやすいでしょう。
喜ばしいではないですか。」
「まぁ、喜んでいないわけではないですよ?
あくまで驚いただけです。
友達ですかぁ・・・」
アリスが悩んでしまう。
「・・・ちなみにアリスの友達は?」
「・・・エリカさんですかね。」
アリスが考えながら言う。
「まぁ、仕方ないんじゃない?タケオ。
アズパール王国の地方は1貴族のみでしょ?
皆は敬ってくれるし、優しくもしてくれる。
けど、対等の立場で物事を言ってはくれないわよ。
特に地方領の女性だと王立学院に入らないんでしょう?
アリス達は姉弟が居たから大丈夫だったけど、一人っ子だと辛いかもね。」
チビコノハが言う。
「なるほど。
学び舎が無い弊害がこういう所に出るんですね。」
武雄が頷く。
「エリカさんが滞在してくれた間は楽しかったですねぇ。
私を貴族の娘というより対等の女性として扱ってくれました。
あの感覚は得難い物です。
また来てくれませんかね。」
アリスが笑顔で言う。
「エリカさんも仕事していますからね。
領地運営が軌道に乗らないとウィリアムさんの所でも長期休暇は貰えないでしょう。」
「ですね。」
「エリカは近々来そうだけどね。」
武雄とアリスの言葉を聞いてチビコノハが言う。
「うん?なんでです?」
アリスが聞いてくる。
「え?ジーナがレイラ達に報告しているんでしょう?」
チビコノハが不思議そうな顔をさせて聞き返す。
「うん、今朝には伝わっているはずだからしているかな?」
「エリカが行動起こすに決まっているもの。
狙うはタケオの子種!」
「・・・なぜに?」
「あれ?挙式の時にそんな話をしたよね?
アリスが妊娠した時にタケオの浮気防止の為に側室を入れる可能性について。
一番の候補はエリカよ?
自身も仕事はしていて王家の相談役という文官最高位に所属していて、旦那の家に依存する気はなく、家に入る気がないから正室と側室の対立もない、貯蓄もあるから生活費には困らず、子供は欲しいのよ?
エリカの性格なら男子が生まれてもキタミザト家の跡取りになんて言わないと思うしね。
最高の物件よね。」
チビコノハが言う。
「・・・言われた気がする・・・ついでにレイラお姉様にも言われた気がする。」
アリスが口をへの字にして言葉を絞り出す。
「まぁ、妻が妊娠した時に他に女性を作るというのは多い傾向ではありますよね。」
チビパナが現れてアリスを追撃している。
「まぁ・・・そうじゃの。
性欲というのはそれほど強いという事じゃよ。
流される者が多いのは良く聞く話じゃな。」
エルヴィス爺さんが言う。
「男としては悲しいかな否定は出来ませんね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「タケオ様?」
アリスが怖い顔を武雄に向ける。
「事実としてそういう事が多いという事ですよ。
性欲を持て余している時に、他の女性が近寄ってくるなんて私達貴族にはあって当然でしょうしね。
あわよくば側室にと思う人は居るでしょう。
ちなみに側室うんぬんは王都に居る新貴族達に声がかかっているみたいですよ。」
「そうなのですか?」
アリスが聞いてくる。
「ええ、王都に行った際に本人達から聞いています。
どうも前の主家辺りからね。」
「・・・そうなのですか・・・」
アリスが考え始める。
「ちなみに我が家は側室というのは近年居ないからの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「そうなのですか?」
「うむ、わしも息子も側室は入れんかったの。
わしの親には居たがの。」
「なんでお爺さま達は入れなかったのですか?」
「うん?わしはすぐに息子生まれたしの。
跡取りの為という大名目が無かったからの断っていた。
それに領内経営で忙しかったから遊んでおらん、息子も遊んではおらんの。
息子夫婦はいつか出来るだろうと思っておっての、色々と側室の話はあったが断り続けておったし、アリスの母親は頑なに『男子を生むからいらない』と言い張っての。
まぁ、結果的にスミスも生まれたわけだから問題はないじゃろうがの。
結構、大変じゃった。
側室についてはタケオはどう思うのじゃ?」
エルヴィス爺さんが武雄に聞く。
「前にアリスにも言いましたが、アリスの同意がなければ側室は入れません。
私からは側室が欲しいとは言いませんよ。」
武雄が言う。
「ふむ・・・アリス、エリカ殿がタケオの子が欲しいと言ったらどうするのじゃ?
さっきのコノハ殿の話では側室とは言って来ないと言っているが、タケオも子種だけをという事はせんじゃろう。
子の父親として、最低でも住まわすのが責任の取り方だと思うがの?
拒否するのも受け入れるのもアリスが決断する事じゃろう。」
「むぅ・・・」
アリスが難しい顔をさせる。
「アリス、アリスは確かにタケオの妻じゃ、相思相愛なのじゃろう。
しかし、キタミザト家の正室であり、家を存続させる決定権を持っておる。
アズパール王国の貴族として家の存続を図る政策を考えるのは当たり前、そしてそれは正室の役目じゃぞ?
第1皇子一家や第2皇子一家は手を打ったじゃろう?
新貴族達の正室達も今同じように悩んでおるのじゃろう。
タケオだって若いわけではない、手を打つなら早くしないといけないの。
それに今はエリカ殿だけかもしれんが、アリスの妊娠が発覚したならもっと側室の話がくるじゃろう。
タケオはそういう立場と権力を有しているのじゃ。
アリス、妊娠したばかりで酷な事を言うが、選べる選択肢は少なく、考える時間は思っているよりも少ないかもしれないの。」
エルヴィス爺さんが言うのだった。
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