第2171話 スミスは買い物中。(様子見に来ました。)
夕方、王都の乗馬用品を扱っている雑貨屋にて。
「ふむ・・・バウアー、これなんてどう?
バウアーにピッタリじゃないかしら?」
グレースが乗馬用の服を持ち上げてバウアーに見せる。
ちなみに、授業で使うという事でグレース以下皆がオーダーメイドを止め、既製服で裾直し程度で終わる物を選ぶとして探しているのだが。
「いやいやいや、グレース殿下、お高いですって。
私はお付きです。
もっと普通ので良いんです、普通です。」
「普通って何?
乗馬の授業自体が普通じゃないと思うんだけど・・・バウアーが言うのは地味という事かしら?
なら・・・こっちは?」
「殿下ぁ・・・高いですって、私のお給金知っていますよね?」
「私が買ってあげるわよ。」
「グレース殿下に買って頂くのはかなり心苦しいのです。
そのお金はグレース殿下の好きな物を買ってください。
私はお給金で賄える物を買いますから。」
「・・・バウアー、私の好きな物を買うから着なさい。」
「はい。」
「そ、なら・・・こっちはどう?地味めよ。」
「そこに並んでいるの高いですから・・・こっちの比較的安いので良いですから。
そんなに高いのを着たら乗馬出来ません、こっちから選んでください。」
「えー?・・・そう?ん~・・・こっちので良い服あるかしら?」
グレースとバウアーが服を漁っている。
「イーデン、決まった?」
スミスがイーデンに聞く。
「ん~・・・スミス、右と左、どっちがグレース殿下の横に立った時に見栄えが良いと思う?」
「しらない。」
スミスが即答する。
「まぁまぁ、客観的に見て右かな?
グレース殿下より目立つわけにはいかないからね。」
カイルが言う。
「うん、そうだな、なら右にしようか。
カイルとスミスは決まったのか?」
「僕達は無難なのを選んだからね。」
「そうですね。
どうせ1年しか着ないですしね。」
2人がそう言う。
「ん?1年?」
「成長するだろうから来年また買う事になるだろうしね。」
「んん~・・・となると来年も再来年も着れるように大き目を買うか・・・」
「いや、止めなよ。
いくら何でもしっかりとしたのが良いよ。
一応、僕達は貴族なんだよ?
一般生徒の見本になるようにと言われているし、その為に馬とかを優先的に選ばせて貰っているのだからね?
あまり酷い格好は出来ないよ?」
「んん~・・・来年もかぁ。」
イーデンが悩むのだった。
「・・・」
ジーナはさっさと選び終え、室内の端っこで皆を見守っている。
バイロンとブルも主を気にしながら自分達の物を見ている。
「失礼します。」
「いらっしゃいませー。」
店員が入って来た女性客に声をかける。
ジーナから見たら王都守備隊の兵士なのだが。
「あ、居ましたね。」
女性隊員がジーナに近寄ってくる。
「お疲れ様です。」
「はい、ジーナ殿も。
用件ですが・・・今、王城の門の所にビエラと名乗る少女が来ているそうです。
片言でキタミザト殿とジーナ殿とスミス殿に会いに来たと言っている様なのです。」
「・・・単体で来たんですか?」
「はい、お一人と伺っています。
キタミザト殿、来ていませんよね?」
「ご主人様は来ていませんね。
まぁ・・・たぶん『ジーナ、スミス、会いに来た、キタミザト』とか言っていたのではないですかね。
で、なんで王都守備隊に?」
「いえ、今日の城門の当番がウィリプ連合国からの帰路の際に寄られたキタミザト殿をお連れした者とこの間来られた際に受付をした者でして、来られたのがビエラ殿というのもわかっていると言っているのですが、単独で入れて良いのかどうか確認をしてきまして。
ほら、ビエラ殿があれですし。
私達としては入れても良いような気もしますが、ジーナ殿に聞くのが一番だろうと考えました。」
「なんで私の居場所がわかるのですか?」
「それは王立学院に行ってご学友に聞きましたからね。
まぁルークとコートニーに聞きました。
グレース殿下が行くような乗馬用具を扱っているのここだけですから。」
「なるほど。
なら、会いに行きますか。
たぶん、様子見に来てくれただけでしょうしね。
スミス様に言って来ますから待っていてください。」
「はい、わかりました。」
女性隊員が頷くのだった。
・・
・
王城の城門横の兵士詰め所。
「失礼します。」
ジーナが入ってくる。
「あ!ジ~ナ~!」
ビエラが椅子に座って、お茶を飲みながら手を振っている。
「ビエラ・・・すみません、うちの者がご迷惑をおかけしております。」
ジーナが軽く顔を押さえてからその場の皆に頭を下げる。
「いえいえ、大人しく待ってくれていました。
では、ビエラ殿、また。」
「はい!ありがろ!」
ビエラが席を立ち、コップを渡してジーナの下に行く。
そしてジーナと外に出るのだった。
「はぁ・・・どうしたのですか?いきなり。」
「あ~♪」
「あ~・・・ジーナ、ビエラはレッドドラゴンのリツの所に行ってたって。」
チビパラスがジーナの肩に現れて通訳する。
「え?レッドドラゴンの所に?
何をしにですか?」
「あ?・・・あ~。」
「幼獣化の特訓ってなに?」
パラスがビエラの言葉に首を傾げる。
「あ~、あ、あ~。」
「はぁ・・・レッドドラゴンの成獣状態からクゥみたいな体型にね・・・なんで?」
「あ。」
「・・・エルヴィス家に住むの?」
「あ?・・・あ!あ~。
ジーナ、会う。」
「あー、なるほど、ジーナ、レッドドラゴンが武雄の料理が食べたくて特訓しているんだって。
とりあえず反復練習する事になったからビエラは帰ろうかと思ったんだけど、折角近くにきたからジーナに会いに来たんだって。」
「あ~、スミス?」
ビエラがキョロキョロと見回す。
「スミス様は今ご学友方と買い物中でこっちに来られないです。
なので、私だけ来ましたよ。
私もスミス様も元気にしていますからね。」
「あ~♪タケオ、アリス、言う。」
「はい、お伝えください。」
「はい!じゃ、帰る!夕食までに!」
「はは、本当に会いに来ただけなんですね。
わかりました、近くまで私が見送りに行きますよ。
最近なにかありましたか?」
「あ~?」
ビエラとジーナは2人揃って森に向かって行くのだった。
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