第2170話 魔王国で買った物を見て。(流行は仕掛ける物。)
武雄とヴィクターが魔王国の戦力の話を色々し、「どうしようもない」と諦めて終わった。
次の題材は魔王国で買ってきた物になっていた。
「このリストですが・・・随分と色んな種類を買われたようですね。
アスセナが言っておりましたが、どうでしょうかね?」
ヴィクターが武雄から渡された紙を見ながら言う。
「雑貨屋とかの棚にあったのを順に買ってきました。
売れる、売れないとかでは無くね。
輸出入は基本的に出来ていないので、アズパール王国と魔王国は生活形態がほぼ同じであるという認識をさせたいんです。
そうすれば輸入品=異文化というイメージを払拭出来て、街中からも魔王国に輸出入したいと言ってくれる方々が現れてくれるかもしれませんからね。」
「主・・・こう言っては何ですが・・・同じような生活をしていて輸出入品が必要なのでしょうか?」
「・・・ウスターソースやウォルトウィスキーは同じような食文化だから輸出が出来るんですよ。
となれば、逆もあり得ます。
私達が知らないだけで向こうで作っている商品が我が国で受け入れられる可能性はあると思いますよ。
それに衣服や布とかで向こうでは種族的な紋様とか日常の服がこちらでは目新しい物になるかもしれませんよ。」
「ふむ・・・わかりかねます。」
「わからなくて当然ですよ。
誰もした事がないのでしょうからね。
でも極地的な視点で見ると国内で同じような事をしている可能性があるんですよね。
ほら、軍服は地域性を出しているでしょう?
あれを国家間でしてみるようなものですよ。」
「・・・あれは自領の兵士の認識用だと思いますが・・・
それを領民、国民に見せる・・・ん~・・・売れるのでしょうか?」
「品物を置けば売れる・・・訳ではありません。
売れる仕掛けは必要ですね。」
「仕掛け・・・ですか。」
「衣服系の流行を作り出そうとするなら販売側が売れるように消費者に仕掛ける必要があります。
例えば、有名な方に着させて『あの人が着ているのなら』とか、多数の方が着始めた事による『皆が持っているから』といった認識を見せる事ですね。」
「ふむ・・・わかるようなわからないような。」
「ははは、羨望というのは嫉妬に似ています。
『彼、彼女が着こなせるのなら私だって着こなせる、いや、もっと綺麗に着れる。』とか思わせるのも必要かもしれませんが、そこは私達がする事ではありませんね。
それにラルフさん達は今、大量にダウンジャケットとダウンベストを用意していますね。
あれは性能も良いですが、大量に供給する事で後者のような事を皆にイメージさせる戦略でしょう。」
「なるほど・・・そういえば、主、ラルフ様にエルヴィス家とキタミザト家の従業員用に何か頼んでいませんか?」
「頼んでいませんよ。
頼もうと思っていますけど、エルヴィスさんに聞き忘れているだけです。
統一色でエルヴィス家とキタミザト家のワッペンを付けたのを買おうかと思っているんですよ。」
武雄が言う。
「この間、ラルフ様に街中でお会いした際にそれとなく催促されました。」
「あ~・・・そうですね。
本格的に決めましょうかね。
そうか・・・決めておくか。」
「・・・何着頼むのですか?」
「エルヴィス伯爵邸の皆さんとキタミザト家の従業員分だから・・・3、40着じゃないですかね?」
武雄が考えながら言う。
「・・・早めにお決めくださいね。
ラルフ様がソワソワされていましたよ。」
「うん、そうですね・・・ふふっ。」
武雄が嫌な笑い方をする。
「主、何を思いつきましたか?」
「いーえ、ダウンジャケットとダウンベストはありますから、あと裾を伸ばしたダウンコートを作って貰おうかなぁと思っただけです。
ほら、アリスが妊娠したでしょう?
膝丈まであるのを作って貰おうかと、ついでにメイドさん達はそっちの方が良いかもしれないと思いつきました。」
「・・・ハワース商会だけでなく、ラルフ様の仕立て屋からも主は刺されるかもしれませんね。」
「怖い事言いますね。
なら、こっそりと注文しておきますかね。」
「まぁ・・・ラルフ様なら嫌とは言わないでしょうけども・・・お気をつけて。」
「はい、気を付けます。
・・・あ、そうそう話が逸れましたね。
その輸入品を私が居ない間に各組合や協力工房に見せて欲しいんです。
一応、フレデリックさん達には言っています。」
「ふむ・・・この中身をですね。
わかりました。
フレデリック様と話し合って実施いたします。」
「はい、お願いします。
あとは何かなぁ・・・無いですね。」
「では、ルフィナ、セレーネ、ルアーナ、ヴィートの報告が来ております。
あとで報告書を回しますね。」
「・・・ちなみにですが、請求どのくらい来ていますか?」
「そうですね・・・予想よりは微々たる物です。」
「まぁ・・・教訓になれば良いですね。」
武雄が頷く。
「では、主、私はこれにて。」
「はい、ご苦労様です。」
武雄がそう言うとヴィクターが席を立ち、椅子を片付けて退出していく。
「・・・予想ってどのくらいなの?」
言われた瞬間、怖くて聞けなかった武雄がそう呟く。
と武雄が席を立ち、一服をする為にヴィクターが片付けた椅子を窓際に持ってくるのだった。
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