第2169話 帰って来たぞ、返って来たぞ?・・・書類が増えてる。(ヴィクターと話し合い。)
研究所の3階 所長室。
「・・・なんで数時間で書類がこんなになるの?」
武雄が机の上の書類の量を見て再び嘆く。
「これは・・・図面だな。
あ、トレーシーさんと鈴音のダブルチェック済みね。
これは・・・うん、馬車の発注かぁ、あ、見積もりもちゃんと付いてるし・・・
ヴィクター、仕事早いよね。
これは、今日の小銃の弾丸の使用数か。」
武雄が執務机の所に行って座る前にババっと表紙を見て、届いている書類を確認する。
「・・・クゥ、夕霧、勝手にソファの所でお茶でもしていてください。
あ、お茶のお湯を入れ・・・私が軽く用意しますね。」
武雄がお茶の用意をし出すのだった。
・・
・
武雄がいくつかの書類を処理し終わり、今は図面を見ていた。
「ふむ・・・内燃機関に似てはいるものの・・・上手くまとめている感じですかね。
SL-01液(赤スライム体液)が炎系の宝石・・・爆破の宝石の保護液みたいな感じになっている気がするんですけど・・・まぁステノ技研と打ち合わせした結果ですかね。
あとは・・・ガス圧は考慮しないみたいだから隙間やエンジンオイルはそこまで気にしなくて良いと。
・・・あ、違うか、これ以上の精度は出せないのか。
ピストンとクランクシャフトも形は良さそうですね。
・・・うん、開発OKにしますか。
えーっと・・・サインなのかな?
はぁ・・・印鑑(印章)を作るかな。
サインが面倒です。
どこに頼もう・・・」
武雄がそう愚痴りながら図面にサインをする。
「失礼します。」
ヴィクターが入ってくる。
「はい、お疲れ様です。
ヴィクター、見終わりましたよ。」
武雄がサインをした図面を畳みながら決済済みの所に置く。
「はい、各所に戻します。」
ヴィクターが書類を回収していく。
「あ、それと手が空いたら相談したいので来てください。」
「今でよろしいですが。」
ヴィクターが姿勢を正す。
「・・・手に持っている決済済みの書類を置いてから来てください。」
「畏まりました。
では、失礼いたします。」
ヴィクターが一旦下がる。
・・
・
「失礼します。」
ヴィクターが直ぐに戻ってくる。
「・・・早いなぁ。
あー、ソファはミアとクゥの昼寝の場所になっていますね。
ヴィクター、そこの椅子を持って来て座りなさい。」
「はい。」
ヴィクターが椅子を執務机の前に持って来て座る。
「そう言えば、夕霧が居ませんね。」
「夕霧様は初雪様の所に行っています。」
「そうですか。
まぁ、仕事を見たいのでしょうね。」
武雄が頷く。
「さて、ヴィクター。
旅行中に記した簡易的な報告書は見ましたか?」
「はい、目を通しました。
簡易報告書の中身を見て、私の方でアズパール王国の陛下用の報告書を作っていますので、少々お待ちください。
明日中にはこちらの保管用と提出用が用意出来ると思います。」
「お願いします。
報告書の方は簡易的な事で構いません、実際は口頭での報告の足しになれば良いので。」
「はい。
それにしても大変だったみたいですね。」
ヴィクターが頷く。
「はぁ・・・アズパール王国の陛下もですけど、ダニエラさんとカールラさんが気軽過ぎますね。」
「前回の事もありますので否定は出来ません。
報告書を見た限りでは、予想通りデムーロ国相手の戦争ではありますが・・・主、少々戦術を披露し過ぎではないでしょうか?」
「ダニエラさん達にも言われましたよ。」
「でしょうね。
それで感触はどうでしたか?」
「悪くはなかったですね。
まぁあとは向こうの実務者で話し合えば良いでしょう。」
「5軍ですからね・・・主の戦術を加味して現実的な内容に変えて来るでしょう。
はぁ、こんな戦争は見た事がありません。
見学に行きたい物ですね。」
「そうですね。
まずもって規模が違いすぎます。
22000名対6000名・・・これが王軍単体での行動をすると言うんです。
一方的な殺戮にしか見えなくもないですね。
魔王国の総力というのは、どのくらいなのでしょうかね?」
「全領主が合わされば更に15000名は最低でも集結しますね。」
「総兵力37000名・・・ただ、人間種として換算した場合は45000名分くらいありそうですよね。
よくもまぁ今までアズパール王国が存続出来た物ですね。」
「・・・アズパール王国もやる気になった場合の総兵力が22000名を超えるでしょう。
十分に脅威ではあります。」
「だからこそのウィリプ連合国とカトランダ帝国の同時侵攻という事が発生するんですけどね。
ヴィクター、ダニエラさんの義勇軍というのどう思いますか?」
「主が記した内容で国民救出作戦と銘打つような事を書かれていました。
1個大隊、1000名・・・少なく感じるでしょうが・・・多分精鋭が組織されますよ?
私が予想するに移動が得意な第2軍と潜入が得意な第4軍、そして魔法師が居る第5軍からの選抜大隊でしょうか。
率いるのは退官されたダニエラ様が順当かと。」
「抑えきれない兵力を頼ってはいけないでしょうけど・・・西側とはいえ自国兵の困窮が予想出来てしまうと頼りたくなりますよね。
そこ・・・陛下に報告して良い物かな?」
「・・・ふむ・・・言うべきかと。」
ヴィクターが少し考えて言う。
「そうですか・・・なんとなくだけど・・・その大隊は私が率いることになると思いませんか?」
「・・・否定できません。」
武雄の言葉にヴィクターが頷くのだった。
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