第2165話 さて、リツを呼ぼう。(・・・余計なのが来た。)
昼食後のエルヴィス伯爵邸がある街の裏城門。
表城門横の兵士詰め所に寄ったら「兵士長は今は裏城門に行っている」との事で武雄はすぐに裏城門に向かい、兵士長にレッドドラゴンの件を伝えると。
「・・・まぁ・・・しょうがないでしょうね。」
兵士長が疲れた顔をさせて頷いていた。
「はい、すみません。」
「はぁ・・・伯爵様も認めているのであれば致し方ありませんが、被害は出さないでくださいね。」
「はい、わかりました。
では、失礼します。」
武雄が頷き、詰め所を後にする。
・・
・
試験小隊の訓練場。
武雄は着くなり、ビエラ達に詰め所で被害を出さないようにと注意されたことを伝えた。
「あ~?」
「きゅ?」
ビエラとクゥが武雄に言ってくる。
「主、ビエラとクゥが『話し合いだけだよね?』って言っていますよ。」
「私もそのつもりですよ。
でもほら、私達の知らぬ間にどこぞの冒険者がやって来るかもしれないでしょう?
そして勝手にリツを攻撃するかもしれないですからね。
そうすればリツも反撃して倒すでしょう。
そういった事があった場合に街に被害が出ないようにしてくださいと言われたのですよ。」
「あ~?」
「きゅ。」
ビエラが首を捻り、クゥがそれに賛同し頷く。
「ですよね~、主、街の近くでドラゴンに攻撃をしかける者がいるんですかね?」
ミアが言ってくる。
「ん~・・・いないでしょうね、普通なら。
でも普通でない人も世の中に居ます、そういった人達が何かするのかもしれないと注意喚起をされた程度でしょうね。
それに、ここって私に割り振られているんですよね・・・
要はキタミザト家と第二研究所の所有地です。
私有地に無断で入って来た時点で不法侵入ですからね、普通に捕まえます。」
「・・・主、ここって研究所の人達以外が入らないようにしていましたっけ?」
ミアが言ってくる。
「え?紐を木々の間に渡らせて簡易的な立入禁止の対応をして・・・たっけ?」
武雄が首を捻る。
「ん、タケオ、兵士達が私達の生息地の500m四方の囲いを作った時に一緒に訓練場の周りにも紐を渡らせています。
あと、何か書いてある板が立っています。」
夕霧が言ってくる。
「ミア、されています。」
武雄がミアに言う。
「されているなら平気ですね。」
「そう・・・ですね。」
武雄が「たぶん、板は立ち入り禁止の立て看板でしょうね」と考えながら言う。
「夕霧、人が入って来たら報告をお願いします。
対処します。」
「ん、わかった。」
夕霧が頷く。
「では、ビエラ、クゥ、リツを呼んでください。」
「はい!」
「きゅ!」
ビエラとクゥが前に出る。と
「あーーーーーーー!」
「きゅーーーーーー!」
2人して叫ぶ。
「「・・・」」
2人とも耳を澄ましていたが、頷く。
「ミア!あ。」
「きゅ♪」
「へぇ~、主、リツが『散歩中だから寄る』そうです。」
ミアが言う。
「わかりました。
黒板が小屋の中にありましたから出して来ましょうかね。」
武雄がそう言いながら小屋に向かうのだった。
・・
・
試験小隊の訓練場の上空を2体のドラゴンが周回している。
1体はレッドドラゴン、もう1体はブルードラゴン。
「タケオ、あ~・・・」
ビエラが武雄に申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「主・・・あれ、ビエラの妹です。」
「へぇ・・・何しに?」
「あ~?・・・あ!」
「え!?例のチビッ子化ですか!?」
ミアがビエラの言葉に反応する。
「あれ!知ってる!」
ビエラがブルードラゴンを指さしながら言う。
「きゅ・・・」
クゥはジト目でブルードラゴンを見ている。
「はぁ・・・まぁ遠路はるばる・・・ビエラ、2人ともここに着地をさせてください。
ベッドフォードさんからリツ用にオレンジを1樽分買ったんだけどなぁ・・・足りないかも・・・」
武雄が呟くのだった。
・・
・
降りて来たリツは伏せをして座り、ブルードラゴンはクゥみたいな、ずんぐりしたチビドラゴン化をしていた。
「ぎゅ!」
チビッ子ブルードラゴンが頭を下げる。
「主、こちらはリーザ、ブルードラゴンでビエラの弟?妹?です。
ビエラ、合っていますよね?」
「はい!リーザ!姉弟!・・・ん~?・・・ミア!」
ビエラが言ってから少し悩む。
「あ~・・・主、リーザは成長して人化の魔法が出来たら見た目を女性にするので妹という呼称にすると言っていますよ。」
「そうですか、ビエラの妹さんですね。
私はタケオ・エルヴィス・キタミザト、この地に住む子爵です。
この地はアズパール王国のエルヴィス伯爵領です。」
「ぎゅ。」
リーザが頷く。
「主、『姉とその子供達がお世話になっています』と言っています・・・え?なんでこんなにドラゴンが普通なんですか?
馬鹿みたいに他人に迷惑かける癖に大人しいし、礼儀正しいし。」
ミアが通訳してから首を傾げる。
「ぎゅ。」
リーザが鳴く。
「あ?」
「きゅ?」
「グルゥ?」
リーザが鳴くのを聞いたビエラとクゥとリツが呆れたような声を出す。
「ぎゅぎゅ。」
「あ~・・・あ。」
リーザの言葉を聞いてビエラが腕を組んで頷く。
「きゅ?」
「グルゥ?」
クゥとリツは首を傾げる。
「・・・そういえば、主、魔王国で会ったグローリア様は男性の姿でしたよね?」
ミアが武雄に言う。
「でしたね。
で、なんで唐突にそんな事を?」
「いえ・・・ビエラが子供達や兄弟を皆女性の姿にするのはグローリア様を見たからなのかなぁ・・・と。」
「何かあったのでしょうかね?
まぁ、本人達が成りたい姿になれば良いだけですよ。
で・・・あれは何を話しているですか?」
「リーザがドラゴンロードのグローリア様に『主に迷惑かけたら説教する』と言われたとかで、大人しくしているんですって。
ビエラ達が『なに言われたの?』と聞いているんです。」
「・・・グローリアさん・・・まぁ・・・家族の会話なんでしょうから何も言わないでおきましょうか。
で・・・幼獣化出来るんですね。」
「みたいですね、はぁ・・・大丈夫なんですかね?」
「私に聞かれても・・・」
ミアと武雄がドラゴン達を見ながら嘆息した。
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