第2156話 243日目 ジーナ、手紙が来たよ。(スミスには真っ先に報告しよう。)
早朝の王都の寄宿舎のジーナの部屋。
「・・・うん、よし。」
ジーナが身支度を整えて姿見で問題がない事を確認していた。
「ジーナ、シウンが来ました。
屋根に止まっています。」
部屋に入って来たスライムを吸収した磯風が報告してくる。
「朝早くから来ましたね。
パラス、窓を開けてください。」
「はいはーい。」
チビパラスが窓を開けると紫雲が窓から入ってくる。
「おはよう、シウン。」
「パラス、おはようございます。
タケオからの手紙です。」
紫雲はそう言って小瓶を出す。
「ジーナ、手紙だよ~。」
チビパラスがジーナに小瓶を渡す。
「朝食までまだ時間がありますから、内容の確認をしますか。」
ジーナが机に向かうのだった。
・・
・
「はぁ・・・ちょっと早く起きちゃったかな?」
エイミーが欠伸をしながら部屋から出て来る。
「あれ?エイミー殿下、もう起きたのですか?」
ドネリーも部屋から出て来る。
「うん、起きた。
トイレに行ってくるわ。」
「はい、部屋内で用意を・・・ん?」
ドネリーがそう言った時にジーナが勢いよく部屋から出て来て、スミスの部屋をノックし返答があったのか。
「スミス様!失礼します!」
少し慌てて入っていく。
「「・・・」」
エイミーとドネリーがその様子をただ見ていた。
「・・・ドネリー、トイレ行く前に寝なおすわ。」
「お漏らししますから行ってから寝てください。」
「わかったわ・・・それと今日は少し寝坊する事にするから。」
「わかりました。
私も少し寝坊する事にします。」
エイミーとドネリーが今見た事を忘却する時間を取るようだった。
------------------------
スミスの部屋。
スミスも着替えは終わっており、机に座ってジーナから渡された手紙を見ている。
「・・・ふぅ・・・」
スミスが手紙から顔を上げて、息を吐く。
「スミス様、おめでとうございます。」
ジーナが頭を下げる。
「あはは、うん・・・おめでたいね。
そっかぁ・・・アリスお姉様も妊娠したんですね。」
スミスはそう言って手紙を机に置き、腕を組んで斜め上を見ながら言う。
にこやかな顔をさせていた。
「手紙には性別が記載されておりませんでしたが。」
「そうだね。
レイラお姉様の時は発覚していたから、意図的に聞いていないのかもね。
でも、男女どちらでも良いね。
生まれてくる事が大事なんだから。」
「はい、それと今朝来た紫雲に祝辞を持たせようかと思います。
文面はどうしましょうか?」
「ジーナに任せます。
僕としても喜んでいますよ。
あのアリスお姉様がね・・・ふふっ母親ですって。」
スミスが笑う。
「喜ばしい限りです。」
「うん、そうだね。
弟としては泣いて喜ぶべきなのかな?」
「そこまでしなくても・・・あ、レイラ殿下への報告はどうしまょうか?」
「う~ん・・・キタミザト家の事だからジーナがまず報告に行った方が良いかな?
ジーナ、遅れる事は学院には伝えておきます。」
「畏まりました。
では、朝食後、私は第3皇子一家にご報告に向かいます。」
「はい、お願いしますね。
・・・ジーナ、アリスお姉様が母親ですよ?ふふっ、なんだか可笑しいです。」
「スミス様、笑いすぎです。
これでエルヴィス家の女性陣3人が懐妊しましたね。」
「そうだね。
あとは僕だけか。」
「あまり急いで作らなくても良いかと。
まだ時間はありますので。」
「そうだね。
僕も焦ってはいないけど・・・出来るかなぁ?」
「さて?どうでしょうか?
スミス様にその気がなければ出来ませんよ。」
「ジーナは?」
「私はその気がありませんので。
では、朝食時にまた食堂で。」
「うん、朝からご苦労様。
朝食までゆっくりで良いからね。」
「はい、失礼します。」
ジーナがスミスの部屋を退出していく。
「・・・アリスお姉様がなぁ~・・・」
スミスが腕を組んで首を傾げる。
「主、まずはタケオとアリスに子が出来た事、おめでとうございます。」
チビマリが言ってくる。
「うん、コノハ殿、パナ殿が居るからね。
流産というのも考えられないけど・・・手紙には公表はもう少し後にするとあったね。」
「ふむ・・・それで性別の報告がなかったと?」
「ジーナも言っていたけど、性別は書いてなかったね。
まぁ・・・今すぐに知る事ではないという事だろうね。
男の子か女の子か・・・甥っ子、姪っ子かぁ・・・ジェシーお姉様とレイラお姉様の時よりなんだか実感が湧くね。」
「それは一緒に住むという事からでしょう。
良き先達にならないといけないです。」
「そうだね。
タケオ様の背中は大きすぎるからね。
僕ぐらいの背中が子供達には見上げやすいだろうね。」
「知識も体力も剣術も!」
「それ全部出来たら凄い事だね。」
「凄い事ではなく、なって貰いますから。」
「はぁ・・・絶対無理だって。
あ~・・・そう言えば乗馬の授業が始まるね。
鞭と服装は用意するんだけど・・・実家から使っていたのを送って貰おうかな?」
「そこはジーナと相談でしょう。」
「そうだね。
あ、クラスの皆を見ていると乗る機会がないみたいだけど、そっちは大丈夫なのかな?
隣で暴れられても困るんだけど。」
「ふむ・・・話を付けておきますか。」
「何に?」
「馬に。」
「へぇ・・・なんて?」
「我らの周りでウロウロするなと。」
「うん、ダメ。
言うにしてももっと穏便にしなさい。」
「善処しましょう。
まぁ・・・我がするより先にジーナが威圧するでしょうが。」
「うん、それは止めるように言わないといけないね。
馬が動かなくなっちゃいますから。
・・・というより、発表されている授業内容だから、もう手なずけている可能性もあるのか。」
スミスが考えながらそう呟くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




