第2155話 242日目 武雄とアリスの育児協定。(何事も話し合いましょう。)
その後も色々と話をしてから、「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていき、武雄とアリスも寝室に戻って来ている。
ミア達はアリスと湯浴み後に髪を乾かして貰い、自室に戻って行った。
今は武雄がベッドの横の椅子に座ったアリスの髪を軽く乾かしていた。
「1日経っても実感が湧きませんね。」
「ベルテさんの所でメモしていましたが?」
「実感というよりもやらなきゃという気持ちですね。」
「なるほどね。
帰り道でも言っていましたけど、子供達の性別どうします?」
「ん~・・・知ってガッカリはしませんけど・・・
どうなんですかね?」
アリスが言う。
「私もそうです。
子供の性別を気にはしませんが・・・知るべきか知らざるべきか。
と言いながら少なくとも公表する来月ぐらいには知っておいた方が良いと思うのですよね。」
「へぇ~、タケオ様はそう思うのですか?」
「ええ、性別がわかれば部屋の内装や衣服といった用意する物が狭められるでしょう?」
「あー、確かに。
でも、まずは内々での性別公表ですかね・・・性別の判定を変に解釈されても怖いですし。」
「そうですね。
でも、私達やエルヴィス家が購入する物を見ればわかる人はわかると思いますけどね。
そこは精霊が判断したと言えば良いと思いますけど。」
「わかった人達にのみ言いましょうか。」
「・・・すぐに伝わりそうですけどね。」
「それはそれで。」
「まぁ・・・なるようにしかならないでしょうか。
それとアリス、育児についてですが、私には言葉にしてくださいね。」
「???・・・どういう事ですか?」
「育児中の夫婦仲が悪くなる理由は大概が意思疎通が出来ていない事にあります。
要は『そのぐらい思って』とか『そのぐらい感づいて』と言った事です。
これは私もアリスもです。
長く一緒に居るからわかるだろうとか夫婦なんだからというのは間違いです。
私達は相手が何を思っているのか慮る事はあっても正確に理解は出来ません。
なので、何かをして欲しい、何かを言って欲しいと言った願望を思われても私はわかりません。
これはアリスもそうです、私があれが欲しいと思っていてもわからないでしょう?」
「・・・わかりません。」
「育児は戦争と同じと言います。
母親達は『子供がどう動くかなんてわからないから目が離せない』と常に神経を使って子供を見ます。
自分が予想していない事をされるのは恐怖でしかありません、これは精神的に追い込まれるでしょう。
そういった状態において、母親は父親に『そのぐらいわかって』と思う事が多いです。
これは冷静に考えれば『何を無茶な事を』と母親達も思うものではありますが、育児をしている母親達には冷静に物を見る事は出来なくなります。
そんな事をするより子供を見る事の方が優先されるからです。」
「・・・そうなのですか?」
「わかりません。
客観的に私が感じた事を言っているだけです。
母親達の感性で言えば、子供が一番、旦那は二番です。
それに母親達の視点から考えれば旦那は育児をしないで外で仕事をしていますからね。
育児という戦争を経験していないので自分の苦境をわかっていない。
わかっていないのに手伝わないという悪感情があります。」
「・・・タケオ様、仕事していますよね?」
「はい、今日も書類を処理してきましたよ。
で、そこで出て来るのが『私はこんなに忙しいのだから、そのぐらいわかって』という旦那を精霊かなにかと同じ能力を持っているという仮定の評価です。」
「理不尽ですね。」
「そうですね。
なので、事前にアリスにお願いをしたいんです。
私は精霊ではありませんから、アリスの考えがわかりません。
何かをして欲しい時は言ってください。
私が勝手に動く事もありますが、それが良い方向に行くならまだしも大概、上手く行かないでしょうね。
育児の戦場を知らない人がする事など、している最中の人からすれば意味のなさない物がほとんどでしょう。
だから、アリスにとって余計な事はしたくありません。
必要な事があるなら言ってください。
でなければ動けません。
育児の主導権は私ではなく、アリスが握るべきです。」
「・・・わかりました。」
アリスが頷く。
「とは言うもののアリスの周りには経験があるメイドさん方がしっかりと控えていますし、パナやコノハも居ます。
アリスはその人達と協力しながら育児をして行ってください。」
「わかりました。
育児はお任せください。
タケオ様にも相談をすると思いますが、よろしくお願いします。」
「アリスが今何を思っているのか、何を不安がっているのかを言ってくれるだけでも良いですよ。
それに相談されても正確な答えが出せるとは限りませんが、私なりの考えをアリスに伝えられるはずです。
それをアリスが受け取って、考えてくれれば良いです。
アリス、子供達の育児は任せますが、私は子供達に無関心ではありません。
余計な手出しをして混乱させたくないのです、アリスが指示を出してくれれば私は大いに動きます。
だから、アリス、何事も塞ぎ込まないで、何かあれば相談してください。
毎日の育児の大変さだけでも良いです、私はいつでも聞いてあげられますからね。」
「はい、大丈夫ですよ。
私は1人ではないのですから、皆と相談しながら育児をしていきます。」
アリスが頷くのだった。
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