第2149話 ベルテ一家と打ち合わせ。2(杏と味噌の話。)
「「アプリコットの苗木。」」
「「「「それは美味しいのですか?」」」」
ドナートとボーナが持ってきた苗木の品種を呟くと子供達が美味しいのか聞いてくる。
「杏かぁ・・・」
ウカが腕を組んで考える。
「うーちゃん、難しいの?」
ダキニが聞く。
「杏は手間がそれなりにかかるのよ。
実も割と大きいからね、落下しないように注意しないといけないし、それに木の栄養状態の管理と水はけは良くして、剪定も毎年しないとなぁ・・・
苗木が2本というのは問題ないけど・・・受粉の事を考慮するなら将来は接ぎ木とかで増やして6本か7本にはしたいかなぁ。
人工授粉は大変だし・・・出来れば自然受粉にさせたいからちょっと多く欲しい所だよね。
それに杏は熟し始めると甘くなるから虫や鳥対策も考えたいよね。」
ウカが考えながら言う。
「ウカ、出来そう?」
エンマが聞いてくる。
「地植えだからね、木自体の生育は問題ないわよ。
割と易しい部類だし。
私が知る杏なら開花が3月から4月、収穫は6月から7月、今時期ね。
米との事を考えれば米の田植え前後ぐらいに受粉させて、米の収穫前に杏の収穫かな?
そこは様子を見ながらやっていくしかないね。
あとは毎年の年末年始に枝の剪定をする感じで。
あとの収穫量は手間をどれだけかけるか・・・かな?」
ウカが言う。
「タケオ、杏で何作る?
私はあんず飴がお薦め!あれ美味しいよね~。」
ダキニが言ってくる。
「それ屋台でしょう?まずは個人で楽しみなさいね。
上手く出来たら作って貰いますから。
ちなみに魔王国ではファロン子爵領でも栽培実験を開始します。
成功すればハチミツ漬けを作るようですよ。」
武雄が言う。
「ハチミツ漬けを作るとなると、ゆくゆくはジャムにする可能性もあるね。」
チビコノハが言う。
「なので、ハチミツ漬けとジャムは輸入するつもりです。
ちなみに先行で輸入されていたハチミツ漬けはウォルトウィスキーで割ると美味しかったですよ。
なので、新たな味として売れそうです。
輸送の時間もそこそこかけて大丈夫ですから輸入品とした方が私は良いと思います。
私が狙うのは梅干しならぬ、杏干しです。」
「「あ~。」」
ウカとダキニが感心したように頷く。
精霊達と武雄以外の皆が首を傾げるがその後のやり取りを見ている。
「米があるから梅干しは欲しくなるよね。
ちょうど2本という数も私達が消費するのにはちょうど良いかな?」
チビコノハが言う。
「でも、商品としてもう少し作った方がドナート達の収入になると思うよ?
梅肉なら野菜のドレッシングに入れるとかで重宝がられそうだし・・・珍味枠かな?」
ダキニが言う。
「ん~・・・来年接ぎ木で増やすかな?
少数生産としてもやっぱりエルヴィス家とタケオ達の喫茶店には卸した方が良いよね。
瓶で10個ぐらいは用意したいよね・・・やっぱり7本ぐらい欲しいね。」
ウカが言う。
「うーちゃん、杏はどのくらいで出来そう?」
「ん~・・・様子は見て行くけど、実を付けるまで3年か4年はかかるかな?
それまでは我慢だね。」
チビコノハの問いにウカが言う。
「まぁ、そこは4年程度で出来る事を期待しますかね。
ウカ、ダキニ、とりあえず苗木が根付くように栽培を始めてくれますか?」
「「了解。」」
武雄の要請にウカとダキニが返事をするのだった。
「それで・・・ウカ、アプリコットは美味しいの?」
エンマが聞いてくる。
「美味しいわよ。
まぁ、タケオが作りたがっているのは、エンマ達からしたら美味しいと思うのかは、ちょっと自信が無いかなぁ。
サラダに合わせるのは出来るから食べて貰えるとは思うけどね。」
ウカがエンマに言う。
「ん~・・・人を選ぶという事?」
「何と言うか・・・製法と味が独特と言えば良いのかなぁ?
まぁ、端的に言うと塩漬けなのよ。」
「「「木の実の塩漬け??」」」
皆がさらに首を傾げる。
「まぁ、端的も何も塩漬けですよね。
それも熟す前の緑色の状態で実を収穫して、硬い内に塩に漬けるという荒業ですものね。
この製造方法を考え付いた人が何を考えていたのか聞きたいですよね?」
「偶然だと思うよ?」
「ほとんどの物事は偶然だよ。」
ウカとダキニが言う。
「・・・甘い杏に嫉妬した隣人が早く収穫して塩漬けにして嫌がらせをしたという想像が今、ふっと浮かびました。」
武雄が言う。
「「かもね~。」」
ウカとダキニが言う。
「あ、そうだ。
タケオ、杏干しは良いんだけど、梅干しと若干違うからね?」
チビコノハが言う。
「まぁ・・・杏は甘いですからね。
熟さなくても甘み成分があるんでしょうかね?」
「うん、まぁ・・・そうなんだけどね、梅と比べると酸味が少ないのよ。
だからちょっとイメージとは違っちゃうかもしれないけど、これはこれで美味しいからね。」
「そこまで再現出来るとは思っていませんよ。
楽しめれば良いので、まずは出来上がるのを楽しみにしています。
それにウカとダキニが見てくれるのでしょう?
安心して待っていられます。」
「任せて~。」
「上手く行ったらドナート達の副収入かな?」
ウカとダキニが言う。
「領内でまずは売ってみて・・・ウィスキーで杏割りかな?
となるとローさん経由で売った方が良いかもしれないけど・・・サラダのドレッシングとしても良いからなぁ・・・
コノハ、その頃には醤油の第2弾か第3弾が出来ていますか?」
「・・・早ければ第4弾かな?味が多少良くなっているかも。
そうそう、大豆はもう来ているようだから、あとは土蔵が出来れば、10L分を2個ずつ、計4個試験仕込みをしてみるわ。
この間見つけた麹菌を使ってね。」
チビコノハが言う。
「・・・豆腐になっていそうだなぁ。
屋敷に戻ったら確認ですね。
それに王都に行くからエイミー殿下に追加の発注をしてみますかね。」
「了~解~。
みそ汁は杏干しより先に出来る予定ね。」
チビコノハが言う。
「「豆腐と長ネギの味噌汁飲みたいねぇ~。」」
「そうだね~。」
ウカとダキニとコノハが久しぶりの日本食に思いを募らせるのだった。
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