第2147話 武雄ベルテ一家の所に向け出発。(エルヴィス家、領地が人気なのを知らない。)
エルヴィス家の玄関。
「私も行こうかなぁ。
確か、土蔵でしたか?
あれ作っているの見てみたいですし。」
アリスが武雄達がベルテ一家に持って行く苗木を用意しているのを見ながら言う。
「アリス、行きますか?
あ、コノハ、大丈夫ですかね?」
「ただの散歩でしょう?
そこまで心配してもしょうがないわよ。
私とパナちゃんが居るし、タケオも居るから大丈夫だよ。」
チビコノハがアリスの肩に現れて言う。
「うん、わかりました。
アリス、一応、メイドさん達に許可を取ってきてください。」
「はーい。」
アリスが屋敷内に入っていく。
・・
・
「さ!行きましょう。」
アリスが武雄に言う。
「ルフィナが行くのですね。」
武雄がアリスの横に立っているルフィナに言う。
「はい。
3人は座学の時間です。」
「お勉強中でしたか。
ルフィナは出て来て大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。
指導の方も私なら大丈夫だと言ってくれています。
3人共筆記の試験が芳しくなかったので追加で講義を受けています。」
ルフィナが言う。
「補習なの?・・・まぁ、頑張ってくれていれば良いですけど。
まぁ、個人差はあってもいつかは出来るようになるでしょう。
ヴィクター、アスセナさん、用意は良いですか?」
「「いつでも。」」
「よし、じゃあ、ベルテ一家の所に行きましょう。」
武雄が皆の先頭を歩くのだった。
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エルヴィス伯爵の執務室。
「アリスは武雄と散歩じゃの。」
「はい、ルフィナが同行していますが、まぁ問題はないと思っております。」
フレデリックが言う。
「ふむ・・・アリスは妊娠しても塞ぎ込まないから良いの。
楽じゃ。」
「はい、ジェシーお嬢様を妊娠された時の奥様は大変でしたね。」
「懐かしいのぉ。
息子も息子の嫁も大変じゃったからのぉ。
じゃが、孫娘皆が懐妊した。
嬉しい限りじゃよ。」
「はい。
それで・・・どうでしょうか?」
フレデリックが聞いてくる。
「ふむ・・・難しいのぉ。
こっちは農地拡張、こっちは酪農拡張、こっちは産業への投資か・・・全部やりたいのぉ・・・」
エルヴィス爺さんが天井を見上げながら言う。
「はい、皆そう思っております。」
「酪農の拡張は前回の追加の提案書じゃの・・・それほどまでにチーズが足らんか。」
「ピザのお陰で逼迫しておりますからね。
数年後とはいえ、今から増産に動きたいのでしょう。」
「はぁ・・・生クリームやバターはどうするのじゃ?」
「それを含めての今回の追加の提案です。」
フレデリックが言う。
「ふむ・・・農業の方は北町、西町、南町か・・・北町と西町はわかる。
どちらもいきなり増産になったしの、特に西町は作っても作っても足らない状況なのはわかる。
どちらのも新たな農地拡張への資金投入の要望じゃが・・・南町は例の街道新設で1つ村を増やすじゃろう?
それではない南町自体の農地拡張の話・・・という事のようじゃがこれは?」
「実はですね、王都の壁辺りの住人、数家族の農家が引っ越しをしたがっているとの話なのです。
それが小麦の生産農家のようでして、ならば南町でと総務局は考え、相談を受けた経済局も許可を出すのに問題はないとの事です。
なので、あとは主の引っ越しの許可をという所です。」
「??・・・なぜじゃ?
あの地域より確かに税率は低いが、表立って公表はしておらんし、領民達もそういう事は言わないようにしてくれている。
あの地域の領主が著しく不正や高税をしているとは聞こえて来ぬし、わしらに何かしかけても来ておらんじゃろ?」
「はい、そのような話は聞いておりません。
ですが、数家族がこの地に移り住みたいとの要望が向こうの総務局からこちらにありました。」
「それは・・・正式に向こうからこちらにかの・・・
フレデリックの事じゃ、裏は取ったのじゃろう?」
「はい・・・その、要領を得ません。
いや、理由は簡単です、ですが、本当にそうなのか・・・わかりません。」
「フレデリックにしては歯切れが悪いの。
どうしたのじゃ?」
「はい、向こうの言い分ですと、この対象の農家の子供が増え、成人し家族を持ったのだが、所属している町の農地に余裕がないから分家して新たな地域に移り住みたいと考えていた所に我が方の南町で新たな村を起すという話を聞いて、南町で農地に空きが出来ると考えてとの事だそうで。
スムーズに受け入れてくれそうだからと・・・」
「・・・いや、そもそもそこの領主が町なり村の農地を拡張すれば良い話じゃないのかの?
領内全てを農地にし尽くしたわけではなかろう?」
「私もそう思います。
・・・犯罪歴やその本家の情報も取り寄せて確認はしたのですが、何もありませんでした。」
「・・・なんでわしらの所なのじゃ?
地域で言えばロバートやフレッドの所の方が安定していると思うのじゃが。」
「わかりません。
村を起すというのは秘匿でもなんでもないので耳に入ったのでしょうが・・・
かといって、王都の壁の領主達が我が方に農家を数家族入植させたとして何か情報が行くとも思えませんし・・・
何か悪巧みしようにも出処がわかっているのですから・・・何かあれば向こうは抗議を受ける立場ですから、何らかの工作とも思えないのですが・・・
なので、最終的に主の判断をお願いしたいという所です。」
「わからんのぉ。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが首を捻るのだった。
エルヴィス爺さんとフレデリックはこの地が貧乏領であった事から今までこういった正式な引っ越し依頼を受けた事が無く、困惑していた。
実は王都とエルヴィス伯爵領内を行き来している商隊がウスターソースやピザ、ウォルトウィスキーの話を各町や村でしていて、今、エルヴィス伯爵領は各村や町で成長していて、農地拡張にも前向きになってくれており、農家に優しい政策がされているという認識がされていて、若い農家から移住先として密かに注目されているのを知らないのだった。
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