第2146話 さて、考えよう。(モニカ帰宅。)
研究所の3階 総務部。
「ヴィクター、アスセナさん、戻りましたよ。」
武雄が席に着いているヴィクターとアスセナに声をかける。
「「おかえりなさいませ。」」
2人が立ち上がり礼をして出迎えてくれる。
「はい、ただいま。
何かありましたか?」
「先ほど、総監殿とスズネ様が所長室に入られました。
書類を置きに来たようです。」
「・・・はぁ・・・書類が増えますね。
他には?」
「特にはありません。
主、今日は早くに・・・16時くらいには退去し、エルヴィス伯爵家に寄ってからベルテ様の所に向かう予定ですが、変更はありませんね?」
ヴィクターが聞いてくる。
「はい、変わりなく。
帰る頃になったら声をかけてください。
所長室に居ますから。」
「「はい、畏まりました。」」
2人が返事をするのを確認して部屋に入っていく。
「・・・あ~、書き置きですか。
何を書き足したんでしょうね。」
武雄が座りながら書類を手前に持ってくる。
「・・・ふむ・・・えーっと・・・」
武雄はマイヤーの初期配置等の書類を見ながら、ノートを取り出して絵にしていく。
・・
・
「なるほどね。
最初のはテンプル家、ゴドウィン家、エルヴィス家、そして私達の横並びでの配置。
追加した方は私達以外の並びは同じだけど、私達はエルヴィス家の後ろに配置、もしくは関に配置か・・・
それで防衛時には小銃改の使用で対応・・・ね。
はぁ・・・砲兵扱いだね。」
武雄が書いた配置を見ながら呟く。
「・・・ふむ・・・コンテナ搭載馬車の屋根に2mの櫓が出来れば5m程度にはなると考えると物見としての役割は出来るし、床面を作れれば伏せ撃ちも出来る。
小銃改での攻撃においては、盾で守っている兵士達を考慮しないで撃てるか・・・
なるほどね、少人数部隊で陣地を構築するよりも展開に労力を食わない案か。
採用するなら・・・さて・・・どうするか。」
武雄がノートに考えを書き出す。
テンプル家、ゴドウィン家に小銃改の威力を知られるのは仕方がない。
だが、詳細に王都に報告されるのはまだ先にしたいという事を考慮すると、実際には一貴族が知っていれば良いとなる。
中央にゴドウィン家、関の真ん前となるけど、ここから撃つというのもね・・・
エルヴィス家はゴブリン等の襲撃時において兵士達が既に見ている関係で秘匿も今更感があるし、エルヴィス爺さんがこっちの意図を知って、はぐらかしての報告をしてくれている。
となると、小銃改での攻撃はエルヴィス家側で行い、戦果のみをあとの2家に見せるのが最善と思われる。
遠目なら何かしらの魔法具で攻撃したと思わせておけば良いだけだし、エルヴィス家との合同での戦闘となれば、はぐらかせて便・・・あ、ゴドウィンさんに小銃改は見せているか・・・口止めしておくか。
となると関に陣取るのは今の所、難しいと考える。
それに夜間偵察をするのもエルヴィス家の後ろに本部を構えた方が便利であるのは確か。
陣地の端から関間を大回りして敵陣地近くに行き、間近で確認する事も出来るし、スコープを使っての監視も出来る。
ゴドウィン家を挟んで真反対のテンプル家には助力は出来ないから、そこをどうするか。
ま、出来ないなら出来ないでゴドウィン家が救援に行けば良いだけの話になるだろうし、距離が遠くなればそれだけ精度が甘くなる事を説明すれば、救援をするゴドウィンさんは小銃改の威力での射撃をされるのは嫌がるだろうから基本的にはエルヴィス家との合同迎撃、本気の突撃を受けるのなら話は別と考えておくのが今の所の考えで問題ないとする。
それにしても・・・いくらなんでもコンテナの上に追加で櫓なんて実施したら馬車の板バネがヘタれる可能性あり。
ラフタークレーンのようなアウトリガーを付ける必要がある。
あれは油圧制御?
・・・無理、となると必要以上にたわまないように支柱をコンテナの下に用意して、たわんだら地面と設置させ分散させるか。
これなら出来そう、さっそくローチ工房に依頼しないといけない。
「エルヴィス家の後ろ一択だな。
さっきローチ工房と話したばかりですぐに仕様の追加かぁ・・・怒られるかな?」
武雄がノートに書き込みをしながら呟く。
そして書くのを止めて、窓辺に椅子を持っていく。
「・・・さっさとした方が仕様変更も楽か。」
武雄が窓を開けて、キセルを取り出すのだった。
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ハワース商会。
「ただいまぁ。」
「戻りました。」
モニカとモニカの旦那が店内に入ってくる。
「おぅ、おかえり。」
モニカの父親が2人に声をかける。
「どうだった?
バーナードとカーティス相手の最終仕様説明は。」
「耐火板が想像以上に期待されているね。
建て方側からの要望だった個室全部屋の間仕切りと厨房内の内装だけでなく、最上級の部屋の内装全体の内側と天井まで出来るのかと言われていたわ。」
モニカが疲れた顔をさせながら言う。
「最上級だけか?
宿内での一番火を使うのは基本的には厨房だ。
各部屋では煙草の火しかないだろう。
それにしたって、最上級の部屋に泊まる者より値段が抑えられる小さめの個室に入る者の方がパイプの火を落としそうだと思えるが。」
「うん、そうなんだろうけど。
両家から言われたのは、他の部屋から出火した際に最上級の人員を確実に避難できるようにしたいという事、でも過剰な費用追加は出来ない。
なので、最上級の部屋を耐火板で覆ってしまおうという事になっているみたい。」
「ふむ・・・なんとも言えないな。
こちらとしては建て方側が作ると言えば耐火板を納入するだけだが。
やるのか?」
「やるって。」
モニカが言う。
「そうか・・・これからは工期の打ち合わせをしながら製造を進めるとしよう。
あ、そうだ、2人が留守の間にキタミザト様が来たぞ。」
「・・・うん、やっぱり来てくれるんだ。」
モニカがなんとも言えない顔をさせて言う。
「ご贔屓にさせて貰っているんだ、悪い事ではないさ。
で、魔王国の件の謝意と今後の輸入についてと馬車の話を話してくれたよ。
馬車の方は楽しそうだから受けるがな。」
「・・・輸入も気になるけど、何話したの?
馬車で私達が出来る事は・・・あれ?前に何か聞いたような・・・」
モニカが考える。
「まぁ今後はあまりないような特殊な仕事が舞い込んだだけだ。」
モニカの父親が苦笑しながら言うのだった。
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