第2145話 趣味で作る方が力が入る。(鈴音何かを思いつく。)
武雄はモニカの父親に厨房や個室に拡張出来るコンテナ搭載馬車の話をしていた。
「ほぉ・・・本気で造るのですか?」
「本気ですよ。
需要はないので、個人的な趣味程度です。
ですが、だからこそ力が入ります。」
「そうですね。
簡易厨房はわかりました。
出来るだけ、強度があって軽い物ですね。
かまどと配膳台と水回り・・・キタミザト様、水は屋根の裏にでも水を溜められるようにした方が良いですよね?」
「そうですね。
ですが、個人的には料理をしながら都度、魔法で水を足しておいて、蛇口を捻れば出て来る形が良いです。
飲み水にはならなくても食器を洗うのに重宝するでしょうからね。」
「ふむふむ、なるほど。
となると、棚部分にですか・・・あまり水が溜められないかもしれませんね。」
「食器を水洗い出来るぐらいで良いのですが、無理は言いません、出来る限りで良いです。」
「わかりました。
それと部屋にする方ですが、ベッド、机、椅子を畳める仕掛けですね?」
「折り畳められたら移動時に荷物を載せ易いかな?と思っての発言です。
その通りでなくても良いですよ。」
「ふむ・・・ドアの蝶番やベッドに足を数個作れば・・・出来なくはないですね。
ですが、移動時の軽さを求められてしまいますと意匠については、難しくなりますが、よろしいのですか?」
「そもそも最初から意匠は求めていませんよ。
利便性と効率だけを望んでいます。」
「ふむ・・・ベッドの寝具を入れる場所も必要でしょうね・・・
ベッドは据え置きにしてベッドの下を収納にするという手もありますね。
聞いた限りでは狭いという事ですので、寝る面の板を上に開けると中に物がしまえるようにした方が・・・寝る面の板の強度は筋交いを入れて・・・ベッドには最低限の柔らかさが・・・」
モニカの父親が紙に書きながら言う。
「親父さん、皆で考えた方が良いのでは?」
「あ!これは失礼しました。
キタミザト様、ベッドの硬さは柔らかくは出来ないと思いますが?」
「多少硬くても良いですよ。
今座っているソファーより硬くても問題ないです。
まぁ、かと言って板しかないような物は体が痛くなりますので・・・そうだなぁ・・・毛布を3枚か4枚程度重ねた程度の柔らかさが指標です。」
「・・・むしろ毛布を重ねて布で覆ってしまう方が早いのでは?
あ・・・移動時の収納が・・・」
「ベルトか何かで縛ってベッドから落ちないようにするとか。」
「なるほど、そういうやり方もありますね。
それで敷く物は出来た、毛布と枕はベッドの下ですね。
布団は場所を取りますが・・・どうしますか?」
「毛布を丸めておけば掛布団までの厚みにはならないかと思いますが・・・詳しくは私ではわかりません。
薄くて、保温が効くのなら良いのですが。」
「そこは寝具を扱っている所に問い合わせてみます。」
「お願いします。」
「折り畳みの椅子と机は・・・これは私達の領分ですね。
こちらはお任せください。
あとの服を掛ける仕掛けですか・・・普通に考えれば棒を渡らせれば良いのですが・・・
こちらも何か出来るか考えます。
あとはローチ工房と打ち合わせをしながら決めていく事になると思います。」
「よろしくお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「費用についてはどうされますか?」
「まずはローチさんの所で取りまとめて貰います。
全体でどのくらいかかるか見積もりを提出して頂きますのでその中に入れてください。」
「わかりました。」
モニカの父親が頷くのだった。
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研究所の3階 所長室。
「マイヤーさん、ありました。」
鈴音が執務机に置いてある書類を取り上げて言う。
「良かった、まだ確認前でしたね。
なら、追加の文章を書類の下に置いて、書き置きを乗せておきましょう。」
「机の真ん中に置いていけばわかりますよね。」
マイヤーと鈴音が何やらゴソゴソしている。
「マイヤーさん、すみません、そんな事までして頂いて。」
「ははは、これが私の仕事です。」
「でも・・・私が考えた事のような物で良いのでしょうか?」
「はい、何案も出す事が大事です。
毎回画一的に対応するというのも ある意味で間違いではありません。
同じ動きをすれば良いので間違いが少ないですからね。
ですが、そこに違う案を出すのが私達の役目です。
出来る出来ないは別の話です。
それにスズネ殿の考えも十分に良い案だと思います。」
「試験小隊の配置だけですけどね。」
「いいえ、それが良いのです。
スズネ殿の案は私達第二研究所の戦い方に合っているかもしれませんね。」
「戦争の事を知らない者が机上だけで考えた事です。
マイヤーさん達に比べれば稚拙な考えなのかも。」
「いいえ、それは違います。
戦地に身を置くから考え付く事もありますし、戦場に出ないからこそ見えてくる事もあります。
どんな案でも起案しておく事が重要なのです。
そして それらの考えを見て総合的に考える者が最善策を出せば良いのですよ。」
マイヤーが鈴音に言う。
「武雄さんがそれをするのですね?」
「ええ、所長はそれをするのが仕事ですからね。
まぁ、戦場の事は詳しくないでしょう。
そこは私のような者が補佐すれば良いのです。」
マイヤーが言う。
「武雄さん、どうするんでしょうね?」
「さて?
私達は考え思い付いた案を出しただけです。
このままエルヴィス家に提出するのか、はたまた私に返してくるのか・・・」
「全く新しい事を考え付くかもしれませんね。」
「そうですね・・・どれもが有り得そうではあります。
帰って来たら目を通してくれるでしょう。
さ、私達は自分達の持ち場に戻りましょう。」
「はい。」
マイヤーと鈴音が所長室を出て行くのだった。
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