第2143話 仕立て屋に色々頼もう。(新素材がさっそく役に立つようです。)
「魔王国から色々と買ってきたのですか?
それほどまで珍しい物が?」
ラルフが武雄から「色々買ってきましたよ。」という報告を聞いて聞き返してきていた。
「いえ、珍しくはなかったですね。
ですが、私にはわからなくてもラルフさんや文官の方々、組合の方々が見たら輸入して欲しいという商品があるかもしれないと買ってきたんです。
結果的に2、3品くらい輸入する事になれば良いなぁという感じです。」
「それは・・・布関係はどのくらいありますか?」
「となりのファロン子爵領や魔王国内の各地での布を数点ですかね。
あと裁縫用の糸も買ってきましたよ。
値段で良し悪しが変わるのかはわかりませんが、売っている物については目に付いた物を、それなりに。
私の協力工房が一番にみるか、文官や組合方と一緒に見るかは現在検討中といった所ですね。」
「・・・私個人としては私達仲間内が先にとは思いますが、まずは文官方、次に組合と私達が文句が出ない方法だと思われます。
輸入不可の物があるかもしれませんので、文官方から見て貰った方が安心です。」
ラルフが言ってくる。
「なるほど。
でも、そこまで規制されるような物は買って来ていませんがね。」
「ふむ・・・ちなみにキタミザト様、布と糸を買ってきたのですね?」
「はい、向こうの雑貨屋に並んでいるのを根こそぎ。」
「ね・・・根こそぎですか。
んんっ・・・それで針はありましたか?」
ラルフが呆れながらも聞いてくる。
「・・・針?」
武雄が不思議そうな顔をさせて聞き返す。
「はい、針です。
布と糸があるのなら針もあったはずです。
特に種族が多い国家ですから色々な種類の針があるのではないかと、あとは一度、魔王国の針を見てみたかったのもあります。」
「針は頭になかったですね・・・・買っていません。」
武雄が考えながら言う。
「そうですか。
なら布と糸を見させて貰います。
キタミザト様としては、買った品物を見てどう感じましたか?
例えば布とか。」
「私ですか・・・刺繍が違うなぁという程度しかわかりませんでした。」
武雄が苦笑しながら言う。
「刺繍・・・わかりました。
予定が来次第、調整して臨みます。」
「はい、よろしくお願いします。
では・・・あ、スニーカーはどんな感じですか?」
立ち上がった武雄がラルフに聞く。
「試作中です。
そう言えばスズネ様が言っておりましたが、前に作った半長靴の靴底をラバーソールに替える可能性があると・・・」
「替える?」
武雄が聞き返す。
「はい、スズネ様が長時間歩いたりしているのを考えると足に負担が少ないようにラバーソールに替えるだろうと。
飲みの席で小耳に挟みました。」
「確かに変更依頼はしようと思いましたけど・・・替えるとは考えなかったなぁ。」
武雄が感心したように言う。
「キタミザト様、何を考えておいでで?」
「半長靴の靴底裏の凹凸を綺麗に真っ平にしてください。
その上にラバーソールを貼り付けて貰います。
そうする事で木や石の凹凸に対しての靴底の強度はある程度、保持したまま、歩き心地は柔らかく出来ると考えます。」
「・・・貼り付ける・・・ですか。」
「ええ、それに既存の靴底を一度撤去して、新たに付けるなんて、そんな事するなら新たに作った方が楽ですよ。
私は木や鋭利な石等を踏み抜いても靴が貫通しないようにしたいんですよ。
たぶん、今の靴の裏に貼れば柔らかい感じの靴が出来るような気がします。」
「なるほど・・・実施の方向でやり方を検討します。」
ラルフが頷きながら言う。
「キタミザト様、スズネ様からインナーソールを作るようにと言われておりますが、如何しましょう。」
「蒸れない物を。
あとゴムで作ったものも欲しいですね。
履いて感触を確かめてからどちらを使うか考えます。」
「畏まりました。
では、半長靴の底の改造は検討し、実施準備が出来次第、ご連絡を入れます。
インナーソールも用意しておきます。」
「はい、お願いします。
では、今度こそ、よろしくお願いします。」
武雄がラルフの仕立て屋を出て行く。
「「ありがとうございました。」」
従業員達が見送るのだった。
・・
・
「はぁ・・・」
ラルフがソファに浅く腰をかけて天井を見上げながらため息を付く。
「店長、また仕事増えましたね。」
カウンターに居る女性店員が言ってくる。
「いやいや、考えようによってはうちの新商品をすぐに使ってくれると考えるべきなんだよ。
作っても売れない商品は性能が良くても継続的に作れないからなぁ。
その意味ではすぐに商品にしてくれるキタミザト様はありがたい事だ。」
男性の職人が言う。
「まぁ・・・致し方ないでしょう。
防刃布の製作を一気に進めなくてはいけないのですが・・・どのくらいの大きさが必要か、ローチ工房と打ち合わせが必要ですね。」
「店長、これから打ち合わせに行かれますか?」
「・・・いや、たぶんですが、キタミザト様はここに来る前にローチ工房に行っているでしょう。
そして新しい馬車を頼んだはずです。」
「今頃、工房内の打ち合わせで大変でしょうね。」
「なので・・・2日後ぐらいに行きましょうかね。
今日話しても上の空でしょう。
多少は落ち着いている頃に話をしに行った方が良いでしょうからね。」
ラルフが言う。
「そうですね。」
「こっちも同じような事になっていましたし、気持ちはわかりますね。」
従業員達も頷くのだった。
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