第2142話 ラルフの所に防刃布の話をしておかないと。(特注依頼だよ。)
ラルフの仕立て屋。
「「「「キタミザト様、アリス様のご懐妊、おめでとうございます。」」」」
従業員一同が他の客が居なくなった所で店の扉に「CLOSE」の札を掛けて本日の営業を終わらせてから花束を渡してくる。
「ありがとうございます。」
武雄が花束を受け取り礼を言う。
「では、花束は私達のお店で飾らせて頂きますね。」
女性従業員が武雄から花束を受け取る。
「すみませんね。
アリスにもちゃんと伝えます。
本当ならちゃんと持ち帰って、エルヴィス家の玄関に飾らないといけないのでしょうけど。
まだ、街中には公表しないのでこのような形を取って貰います。」
「いえいえ、構いません。
我ら仕立て屋従業員一同、心よりお祝い申し上げます。
本当におめでとうございます。」
ラルフが言い、頭を下げる。
「ありがとうございます。
はぁ・・・公表したらどうなるんでしょうかね?」
「盛大なお祭りでしょう。
さ、お座りになってください。」
ラルフにソファを勧められ武雄が座る。
「魔王国から戻って来たらアリスの懐妊を聞かされましたよ。」
武雄が苦笑しながら言う。
「それは驚きになったでしょうね。
一応、キタミザト家と契約を結んでいる我々はスズネ様から言われています。
この店の従業員にも伝えてあり、守秘義務である旨も徹底されております。
たぶんどの工房、店等も徹底しての箝口令が敷かれているはずです。」
ラルフも武雄の対面に座りながら言ってくる。
従業員がお茶を出す。
「ありがとうございます。
来月に王都と街中に公表します。
問題が無ければ来年2月半ばの出産予定ですよ。」
「おぉぉぉ、それはよろしかったですね。
来年2月という事は・・・今、妊娠2か月ぐらいでしょうか?
良くお分かりになりましたね。」
「私とアリスの精霊が確認して11週ぐらいだろうと報告してくれました。
10か月程度なのでそのぐらいだろうと言われています。」
「そうでしたか。
精霊方の気付きならば確定でしょう。
どうですか?心境は。」
「元気に生まれてくればそれだけで・・・と言いながらも生まれたら生まれたで色々あるんでしょうね。」
「はい、全ての親がそう思い生まれるのを楽しみにし、成長しては親子喧嘩をする物です。」
ラルフが言ってくる。
「まぁ・・・そこは覚悟しないといけないのでしょうね。
それにしても私とアリスだけなら何とでも生きていけるのでしょうけど、子供もとなるとまた違った重みを肩に感じますね。」
「ははは、そうですね。
しっかりしないといけないと思う物です。
ですが、それは男だけでなく女性も思うようですよ。」
「そうですか。
・・・はぁ・・・変な感じです。」
「その内、覚悟が決まりますよ。
さて、魔王国からの無事のご帰国、嬉しく思います。」
「はい、戻ってきました。
SL-05のポンチョの評価については試験小隊の面々に移動時に風よけとして使って貰っています。
天候自体は崩れなかったので、雨天時の性能はわかりませんが、報告を出すようにとは言っていますので後日お知らせ出来ると思います。」
「そうでしたか。
楽しみに待っておきましょう。
今日はその報告ではないのですよね?」
ラルフが頷いてから聞いてくる。
「はい、ローチさんの所でコンテナ搭載馬車を作っているのは知っていますね?」
「はい、キタミザト様が魔王国に行かれる前の協力工房全体の打ち合わせの時に聞いています。」
「それの発注を正式に依頼する事にしました。
その際にコンテナ搭載馬車を部屋として使用出来るよう改造をするのですが、SL-05の布を使って風雨を防ごうと思っています。
また、同布をコンテナの上部から地上部に張りテントの役目を負わせようと思っています。
まぁ屋根から地面にというよりも少し離れた場所に木か何かで下地か櫓を作ってそこまで布を張ってから下に下ろす感じにしたいのです。
えーっと・・・紙はありますか?」
「こちらに。」
「ここがコンテナでこっちに布を張って・・・こんな感じです。」
ラルフが出した紙に武雄がコンテナから横にテントを設ける感じのラフ画を書く。
「コンテナ搭載馬車の屋根から横に・・・そして垂れ下げる。
なるほど、テントを作ってしまうという事ですか。
結構、幅の広い防刃布が必要ですね。
コンテナ搭載馬車は何台になりますか?」
「計3台の注文になります。」
「3台分・・・なるほど、横だけではなく正面や背面にも必要ですね。
わかりました、とりあえず初期生産として作ってみましょうか。」
「詳しくはローチさんやキャロルさんに聞いてください。
概略は伝えてあるので基礎設計を始めているはずです。」
「畏まりました。
そこは打ち合わせを実施しながら検討させて貰います。
このテントについては私共から買いますか?」
「いや、ローチさんの所で一括で支払います。
コンテナ搭載馬車の備品の一部ですしね。
それにいつかは幌馬車の幌部分をこれに置き換えるのでしょうしね。
それも含めて今の内から準備しておいても良いのではないでしょうか?」
「事前の打ち合わせで搭載にはまだまだ時間がかかると言ってた気がするのですが・・・」
「絶対にされると思いますよ?
と、いうよりラルフさんの事ですからもう見積もりは出来ているんでしょう?」
「まだ、出来ておりませんよ。
やっと防刃布を作る工房が動き始めた感じなのですから。
製品の売価が確定するまではまだまだです。」
ラルフがにこやかに言うが背中にはじっとりと汗をかいていた。
「・・・そうですか。
ま、その辺の費用も見込んだ金額をローチさんには出させてください。」
「わかりました。
手配いたします。」
ラルフが頷くのだった。
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