第2140話 報告です。(予算管理をする者が強いのです。)
「陣地構築と夜間偵察についてはどうでしょうか?」
「はい、陣地構築自体は少数部隊という事で防御的な観点からも実施した方が良いとなりましたが。
流石に盛土と堀、そして柵。
すべてをやると慣例の戦争中ずっと陣地構築をしていないといけない可能性があるとなって、一度、皆が個人で持ち帰って考えるという事になりました。
どういう敵を想定するのかによっても変わるでしょうからその辺も加味するように言っています。」
「うんうん、色々と想定してくれると助かりますね。」
武雄が頷く。
「それで夜間偵察ですが、実は私達ですら実施した事がほとんどありません。
なので、まずは夜間での行動の訓練をしたいとアンダーセンが言ってきています。」
「ふむ・・・予定を組んでください。
事前にエルヴィス家の軍務局や兵士長には伝えないといけないでしょうね。
私は王都に行くので、やるなら安全に考慮してやってくれれば・・・あ、ミアの所のサスケやハンゾウ達を使って臨場感を出しても良いですよ。
夜間襲撃なんかしたら楽しそうですね。」
「所長、それは訓練ではなく実戦です。」
マイヤーが呆れながら言う。
「実践に勝る訓練はないそうです。
双方が安全に出来るような方法を考えてください。
書類が出来た時に私が居なければ、マイヤーさんが軍務局に持って行って許可を取れば良いでしょう。
私の方から言っておきます。」
「了解しました。
アンダーセンに計画させます。」
「うん、お願いします。」
「では、所長、私は部屋に戻ります。」
マイヤーが立つ。
「なら・・・私も。」
武雄も立ち上がる。
「お出かけで?」
「ええ、ローチ工房とサテラ製作所、ラルフさんの店にね。」
「コンテナ搭載馬車と特殊布ですか。
そう言えば・・・研究所やキタミザト家の費用は足りているのでしょうか?」
「うっ・・・ないはずですので、個人的に注文してきます。
後々にキタミザト家の方に振り替えですかね。」
「所長にそんなお金が残っているのですか?」
「ええ、まだ賄えるはずです。
たぶん・・・大丈夫です・・」
武雄が目線を下げながら言う。
「はぁ・・・随行する私達としてはありがたいですが、借金は止めた方が良いですよ。」
「するつもりはありませんよ。
・・・ヴィクターに相談しますね。」
「そうですね。
では、これで。」
マイヤーが所長室を退出していく。
・・
・
「さて、出かけようかな。」
武雄がリュックを持って所長室を出て、正面の奥の方で作業をしているヴィクターに声をかける。
「ヴィクター、(物理的に)大きい買い物してきて良いですか?」
「ダメに決まっています。」
ヴィクターに即時拒否される。
「あの・・・戦争で使うコンテナ搭載幌馬車が欲しいのですけど・・・」
武雄が弱々しく聞きなおす。
「ふむ・・・フレデリック様よりエルヴィス家と合同でキッチンカーなる簡易厨房搭載馬車を作るというのは聞いています。
それに主の方でコンテナ搭載馬車の試験機を作っているのは知っています。」
「はい、それであと何台か作って貰って、寝台や指揮に使用しようかと思うのです。
上手く行けば王都に売り込みをしてみようかと考えているのですが。」
「購入する予算はありませんよ。
簡易厨房搭載車と試験機はこっちに費用の話は来ておりませんがね。」
「費用は・・・とりあえず、私費で立て替えておこうかと。」
「・・・まぁ・・・いつか振り替えますから良いのですが・・・
あ、キタミザト家の馬車を注文したいのですけど、これは前に言っていたエルヴィス家と同じ物で良いのですね?
内々に見積もりは用意しております。」
「はい、同じ物で両家で使った方が良いと思うのです。」
「わかりました。
こちらは進めます。
で、コンテナ搭載馬車ですが・・・買ったとして維持はどうするのですか?
駐機だけしておけば良いという訳ではない様ですし、そもそも商隊に貸し出す訳ではないですよね?」
ヴィクターが言ってくる。
「・・・エルヴィス家に頼もうかと。」
「はぁ・・・ですね。
私達ではまだ管理出来ませんからね。
エルヴィス家から割り振られている幌馬車大の馬車は4台分です。
これはフレデリック様からキタミザト家、研究所で増やして良い台数との事です。
主がエルヴィス伯爵様にコンテナ搭載馬車の話をしていますよね?
そこから何台作るかの話で向こうで検討をして頂いております。
現状では最大4台は留められるように準備してくれているとの事です。
私もそのぐらい作るだろうと思って話を聞いております。
エルヴィス家に委託する費用は1台当たり年金貨10枚とされています。
なので、1台は馬車に当てられますので残り3台になります。
1台は厨房搭載になっています。」
「あと2台ですね。」
武雄が言う。
「はい、あと2台分あります。」
「買って良いですか?」
「はぁ・・・主が買いたい物を買ってください。
2台までですよ。
それと一括でキタミザト家の方に振り替えられるかは来年以降の予算との兼ね合いです。
なので、主に戻すのに数年間かかる事もあると思っていてください。
それで良ければお作りください。」
「頑張って王都に売れるようなのを作ります。」
「それも大事ですが、まずは主が満足する物を作るのが大事でしょう。
勿論、費用は抑えめで。」
「了解です。」
武雄が頷く。
その光景をアスセナが微妙な顔をさせながら見つめるのだった。
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