第2139話 午後も書類の処理だよ。(やっぱり2人乗りはダメだったか。)
午後の研究所の3階 所長室。
「・・・」
午前と変わらずに武雄は書類の処理をしていた。
「失礼します。」
ヴィクターが入ってくる。
そして無言で決裁された書類を持って行く。
「失礼しました。」
「・・・」
武雄は気にせずに書類を読み進めていく。
・・
・
「失礼します。
キタミザト様、休憩ですか?
丁度良かったです。」
アスセナがお茶とお菓子を持って入ってくる。
武雄はというと窓辺に椅子を持っていき、窓枠に両肘をついて、外を見ながらキセルでプカプカ一服していた。
「とりあえずヴィクターが今日中にと言っていた書類は見ましたよ。
お茶は執務机の方にください。」
「はい、畏まりました。」
アスセナが執務机の方にお茶とお菓子を置く。
「会議室賑やかですね。」
「はい、話し合っているみたいですね。
始まったばかりなんですが。
キタミザト様は出席されないのですか?」
「私が出席すると皆が話さない可能性がありますからね。
まぁ、基本は皆で話して貰って、最終的な所で参加して私の意見も言う形になるでしょうね。」
「よろしいのですか?」
アスセナが聞いてくる。
「参加はしたいですけどね。
ですが、私のお役目は発想する事です。
そして出来る出来ないを検討するのが試験小隊の役目ですからね。
私が居たら無理やり私のやりたい事を推し進めてしまうかもしれません。
まずは私がやりたい事を言い、彼らが出来るかどうかの検討をする。
その検討を私が聞いて他に出来る事を提案するという形が望ましいのですよ。」
「結局はキタミザト様のやりたい事をしそうではありますけど。
参加されないと決まるまで少し時間がかかってしまうかもしれませんね。」
「そうですね。
ですけど、それで良いんですよ。
実務を司るのは彼らです。
彼らの意見は尊重しないといけません。
私が居たら言えないかもしれません。
それに彼らは元兵士ですよ?
上司がやりたい事を理解して、その上で自分達で出来る事に置き換えて考え、代替案を出せるだけの経験も能力もあると思っています。
上手く修正してくれるでしょう。」
「兵士と言うか最上位の騎士なんですけどね。
まぁ、キタミザト様が何やら無理難題を言っているのはわかりますけども。」
「無理難題は言ってはいませんよ。
出来たら良いなぁ程度の物を言っただけです。
あとは実際に動く人たちが修正してくるでしょう。
私はその提案を受けてさらに考えを深めれば良いのです。」
「となると、キタミザト様は今は提案をされるのを待っている状態なのですね?」
「そうですよ。
溜まっている書類を処理するのが私のお仕事です。
一応、収支の書類は中身を見て決裁しておきましたよ。」
「はい、ありがとうございます。
サインをされたという事は問題はなかったのですね?」
「まぁ支払いの方は問題がないのはわかっていますけど、収入の方に問題があるか無いかが現時点ではわからないので、今後数か月の推移を把握してから判断しようかと思います。
といっても今の所、協力工房のみから収入なので大丈夫だとは思いますけどね。」
「そうですね。」
アスセナが頷く。
「収入源と言えば、魔王国で色々と買ってきました。」
「はい。」
「今度、経済局や協力工房、街の組合の人達に見て貰い、
注文が発生したら輸入を実施する事になるでしょう。
そして魔王国の取引先の方には向こうで取り扱う商品のリスト化をお願いしています。」
「畏まりました。
では、まずはキタミザト様が買ってきた商品を見た組合等の方からの注文があれば対応をします。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
武雄が頷くのだった。
「では、一旦下がります。」
アスセナが退出して行く。
「・・・」
武雄はキセルに新しい火種を入れてまたプカプカとしだす。
「あ~・・・そうか、増えるという事はアスセナさんにお店をして貰わないといけないかもしれないなぁ。
今の状況では毎日お店を出させると書類の処理が難しいから、週に3日とか1か月に1週間とかでやる程度で良いのかなぁ?」
武雄は通りの人通りを見ながら呟くのだった。
・・
・
「所長、会議をしましたよ。」
会議後、所長室を訪れたマイヤーが疲れた顔をさせながら言ってくる。
「ご苦労様です。
そんなに難しい事を言ったつもりはないのですけどね。
何がダメになりましたか?」
「とりあえずは馬の2人乗りです。」
「あ~・・・」
「そもそも小銃の撃ち方が騎乗して撃つようになっていないというのが皆の意見です。
上下に動いているので常にぶれている状態で撃つのは意味が無いと。
なので、基本は1人で騎乗し、迅速に展開。
下馬後、しゃがんで撃った方が良いだろうと言う結論になりました。」
「なるほどね。
他には?」
「小銃や小銃改の特性上、そもそも騎乗し展開をする必要が今回の慣例の戦争であるのかがわからないと。
それなら味方に流れ弾が当たらない位置・・・まぁ話に出たのは横ですけど。
横に移動して支援をした方が良いのではないか、わざわざ接近する必要性がないのではないか。
との意見が大勢です。」
「うん、なるほど。
では、今回は不採用ですね。」
武雄があっさりと引くのだった。
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