第2133話 その頃のいつもの居酒屋では。3(ベルテ一家も悩み中。)
キタミザト一派の楽しい愚痴飲み会のはずが。
「「「「・・・」」」」
皆が酒も飲まずに個人個人で考え込んでいる。
その顔からはお酒は一気に抜けているとわかる。
「・・・あの~、騒がないのですか?」
鈴音が皆を見ながら聞く。
「え・・・ええ、アリ・・・鈴音さんが私達に教えた内容は大変、喜ばしい事ではあります。
ありますが・・・」
ラルフがそこで皆を見る。
「私達はキタミザト家の信認を受けているでしょう?」
モニカが言う。
「まぁ、やりたいことがあるのなら一番に声をかけますね。」
「そう、だからこそ挙式の際にも組合長達を押し退けて最前列に並べるんだけど、今回もそうなるのよ。
たぶん、アリス様が気を利かせて私達にスズネちゃん経由で事前に連絡を入れてくれたんだろうね。」
モニカが答える。
「というと・・・えーっと?」
鈴音が首を傾げる。
「いつかはキタミザト家から公表されるわ。
その時にお祝いをするのだけどね。
私達が一番にお祝いを持って行く事になるわ。」
「そうなのですね。
何を持って行くのですか?」
「そこが悩み処よ・・・ん~・・・
ラルフさんは、子供服ですか?」
「いや・・・性別もわからずに送るのは・・・それにご趣味に合わない服を送っても・・・
今は浮かんでいるのはタオルの詰め合わせでしょうか。
モニカは子供用ベッドですか?」
「ええ、前はスミス様の時だったけど、あの時は組合として出しているはず。
今回は組合からも出すんだろうけど、私達は個別にだからね・・・
お父さんに聞いて考えた方が良いかも。
キャロルさんはどうしますか?」
「うちはミシンでしょうね。
スズネさん、ステノ技研はどうすると思いますか?」
「ん~・・・懐妊祝いですよね・・・
懐中時計か武雄さんから依頼されている物で何か記念品を作るのかも。
新たに何かという事はないだろうし・・・もしくは実用品か何かを見繕った方が良いのかも。
作っている物でないといけない訳ではないですよね?」
「まぁ・・・そうですね。
ローチの所はどうする?」
キャロルがローチに聞く。
「うちはタオルでしょう。
他にないですし。
ラルフさんの所と色違いを用意した方が良いかもしれません。
ローさんはどうしますか?」
「高級ワイン!
うちは祝い事なら決まっていますからね、ほほほ。
ベッドフォードも決まっているでしょう?」
ローが断言する。
「野菜と小樽のソースだな。
一杯食べて貰わないとな!」
ベッドフォードが笑いながら言う。
「皆、とりあえず持って行く物は用意出来そうね。
・・・当分は社外秘ね。」
「「「「ええ。」」」」
協力工房皆が頷くのだった。
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ベルテ一家では。
「ん~・・・どうしようか?」
ドナートが腕を組んで考えていた。
「ボーナ、エルフの村だと赤ちゃん用の肌着だっけ?」
エンマが聞いてくる。
「そうよ~。
でも、それは生まれた際ね。
懐妊発覚は村で盛大にお祭りよ~。
料理を食べて体力付けなきゃね。」
ボーナが言う。
「キタミザト様だから食事というのは・・・私達が作るよりも体に良さそうな料理でお祝いしていそうだね。」
フローラが言う。
「「そうだね~。」」
エンマとボーナが頷く。
「エンマ、子供が生まれるのは良い事なのですよね?」
ニルデが聞いてくる。
「そうよ。
子供が生まれるのは喜ばしい事よ。
なぜ、そんな・・・あ、ニルデ、ジルダ。
ウィリプ連合国とは違うの、この国やブリアーニ王国では子供が生まれる事は喜ぶべき事なの。
無事に生んで大きく成長して欲しい。
その子供達が安心して過ごして欲しいと思っているの。
地域や国が違うと祝う方法が違うのだけど・・・ドナートがそこを気にしているのよ。」
「「ふ~ん。」」
ニルデとジルダがわかったようなわかっていないような顔で頷く。
「妊娠となると。
アリスの体を気遣った物が良いわよね。
無難なのはタオルだけど・・・お腹を冷やしちゃいけないし、腹巻かな?」
「赤いの送ろう!赤いの!」
ウカとダキニが言う。
「「「腹巻って?」」」
エンマ達が聞き返してくる。
「伸縮性のある布や毛糸で作ったお腹にフィットする太い帯よ。
あ・・・今から作るのだと時間かかっちゃうか。
ん~・・・だーちゃん、作れなそうだね。」
「あー、時間がね~。
私達が作るしかないかな?
エンマやニルデ達に手伝って貰えば作っても問題ないでしょ。」
「まぁ、だーちゃん暇だしね。」
「暇って言わないで。
ドナート達からはダンディ茶で良いんじゃないかな?
ドナート、ボーナ、とりあえずダンディ茶を箱詰めにしたのを送ろうよ。
肌着とかは生まれてからで良いんじゃない?」
ダキニが皆に言う。
「ん~・・・コノハ殿にとりあえず、祝辞を言ってダンディ茶とその腹巻で良いか聞いてからだな。
了解が取れたら、その腹巻に使う物は明日にでも買いに行こう。」
ドナートが言う。
「うん、わかったわ・・・コノちゃんがダンディ茶はこれからアリスはいっぱい飲むだろうから頂けるのならありがたいって。」
ウカが言う。
「公表された後にダンディ茶をお祝いで届けようか。」
ドナートが頷く。
「そうね、アリス様が欲しいという物が一番よね。」
ボーナも頷く。
「で・・・ヴィクターさんと食事に行っているアスセナは帰って来てから教えれば良いよね?」
「「「そうだね。」」」
皆が頷くのだった。
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