第2124話 241日目 武雄帰宅。(ここで解散です。)
14時頃のエルヴィス伯爵邸の玄関。
「あ~・・・着いたぁ・・・」
武雄が荷台から降りて背伸びをしながら呟く。
「はぁ・・・何も起こらずにここに着けましたね。」
「キタミザト殿、長旅ご苦労様でした。」
「無事に着いて良かったです。」
ラングフォード達も降りて体を伸ばす。
「所長!長旅お疲れさまでした。
戦闘もなく無事に着きましたね。」
アンダーセンが馬を降りて言ってくる。
「はい、お疲れ様です。
明日は休暇・・・と言いたいですが、出勤です。
その際に皆と調整して順次休暇を取らせてください。」
「了解しました。
幌馬車はどうしますか?」
「ん~・・・とりあえずエルヴィス家に預けましょう。
アプリコットの苗木とかはベルテ一家に持って行きますし、あとは私の荷物程度ですからね。
あ、制服預かっていましたね。
戻る前に渡さないと。
ちょっと待ってくださいね。」
武雄がリュックから皆の制服を取り出して並べ始める。
「所長、馬の方はエルヴィス家にお返しして良いですよね?」
ベイノンが聞いてくる。
「ええ、構いませんよ。
ラックさん達は打ち合わせの通り、今日はこの街に泊まって明日は出立でしょう?」
「そうですね。
デナム局長とうちの妻が何もなければこのまま王都に戻ります。」
ラックが言う。
「この街の散策程度で結構ですよ、必要なら注文して王都に運んで貰えば良いからなぁ。
専売局の馬車は定期的に来ている訳だし。」
「あ、なら私も今回は局長に便乗しましょうかね。
この地の例の中濃ソースの小樽を買って送って貰おうと。」
ラングフォードがデナムに言う。
「あ、そうか、それは俺も土産で欲しかったんだ。
マークはどうする?」
「私は中濃ソースとウスターソースの両方の小樽を買って送ります。
明日からは馬での移動ですからね。
局長と同じように専売局の馬車に乗せますよ。」
3人が話している。
と玄関が開きフレデリックやメイド達がやってくる。
「タケオ様、おかえりなさいませ。」
「「「おかえりなさいませ、キタミザト様。」」」
「はい、ただいま戻りました。
とりあえず、王都の皆様はこのあとは宿に行って明日には出立、私達は解散となります。
本当なら私が誘って夕飯にご招待をしないといけないでしょうが、お互いに忙しいですし、旅の間に話し尽くしてしまったので今回はなしになりました。
また今度という事で話は付いています。」
武雄がフレデリック達に言う。
「畏まりました。
皆様、お疲れ様でございました。
次回来られた際には夕食の準備をして出迎えさせて頂きます。
今後ともキタミザト家、エルヴィス家をお願いいたします。」
フレデリックが頭を下げる。
「いえいえ、お気持ちだけで結構です。
今回は王都もキタミザト殿が魔王国に行くと言うので便乗したのですから夕食に誘われるわけにはいきませんし、私達程度で夕食をとなると・・・ちょっと王都の人員が何を言い出すか・・・」
デナムが言う。
「専売局長なんだから夕食ぐらい良いのでは?」
武雄がにこやかに言う。
「キタミザト殿、専売局だから特定の貴族と懇意にするのは危険なんですよ。
夕食を共にしたなんてわかったら王都で何を言われるか・・・」
デナムが眉間に皺を寄せながら腕を組んで言ってくる。
「あれ?私は?」
武雄が自分を指差しながら聞く。
「キタミザト殿は王立の研究所の所長でしょ?
陛下直轄なんだから私達が近寄っても良いんですよ。」
「・・・えー?なんかおかしくないですか?」
「そういうもんなんです。
というよりも研究所は出来たばかりなんですから想定がされていません。
ついでに新しい物や事を作る部署だから各局が割と近づかないといけないんです。
なので研究所以外の貴族会議にしても王都の壁にしても局長達はプライベートでは会いませんよ。
夕食を取るなんてもっての外です。」
「ふーん・・・本当に?」
武雄が聞き返す。
「・・・外交局、専売局、財政局はその辺が厳しいんですよ。
他の局は知りません。
しているはずですとしか言えません。
ね、ラングフォード殿?」
「まぁ、そうですね。
財政局は特に予算と税を管理していますからね・・・仕事以外で貴族と会う事はダメなんですよ。
今上げた3局は特に総監局と王家が見ているんで、そんな事がわかったら局を出されてしまいます。」
ラングフォードが微妙な顔をさせて言う。
「・・・あれ?私は?」
「第二研究所は納税の義務はないですよね?
予算は年次予算で決まっていますし、出来高の報告は陛下に直接ですから・・・財政局としても安心して会えます。」
「研究所の予算を増額してください・・・と言ったらどうなるのですか?」
「財政局が単独で研究所の予算を決めている訳ではないのです。
予算の増額をしたいのなら貴族会議と局長達、陛下達の合意が得られたら実施されます。
私に言われても変わりませんよ。」
「・・・なるほど。
研究所の方は局にコネがあるぐらいではどうにもならないから近寄れるという事ですか。」
「ええ、財政局はそう考えています。
まぁ・・・専売局の方は事業拡大が出来る可能性があるから近寄っているのですけどね。」
「国家の収入源の一翼ですよ。
今回は二研でしたけど、次回は一研が何か有益な事業を打ち出してくるかもしれませんからね。
私達、専売局は研究所の大規模実施組織みたいなものです。」
ラングフォードとデナムが言う。
「ふむ・・・まぁ、専売局と財政局には気兼ねなく遊びに行けるという事がわかりました。」
「「気軽にはちょっと・・・」」
デナムとラングフォードが難しい顔をさせる。
「まぁ、王都に行ったら顔を出しますよ。」
「その程度なら。」
「お待ちしています。」
ラングフォードとデナムが頷く。
「よし、なら、魔王国までの旅お疲れ様でした。
王都でも元気で。」
「「「キタミザト殿、ありがとうございました。」」」
デナム達が言う。
「ま、このあと数日したら私も王都に行く事になるんですけどね。」
武雄の言葉に皆が苦笑するのだった。
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