第2116話 アズパール王と第1皇子一家との打ち合わせ。4(スニーカーを試してみよう。)
「引っ越しの準備は進んでいるのか?」
「「「ええ・・・まぁ・・・」」」
ローナ達皇子妃達が微妙な顔をさせる。
「うん?クリフ、どうなんだ?」
「進んでいます。
ですが、屋敷から王城内ですからね。
持って行ける物がだいぶ少なくなるという事で何を持って行くか・・・迷っているようです。」
「ふむ・・・それは致し方ない。
王城を大きくするわけにはいかないからな。
一応、ウィリアム達と同じように執務室と各皇子妃室、パットとアンの部屋とアウクソーの部屋は用意している。
今度生まれてくるルイスの部屋はまだないが、目途は立っているぞ。」
「父上、確認ですが、客間はないのですね?」
「ないな。
誰かと会議が必要なら会議室を使え。
一家として寛ぐなら皇子妃の部屋か執務室だ。
ウィリアム達は執務室を客間としても使っている。
タケオやジーナ、スミスが来た際は執務室で歓談しているぞ。
ちなみに我も客間というのはない。
来賓用に応接室はあるが・・・あれは些かのんびりと出来ないからな。
執務室兼客間だ。
皆もそれで良いとなっているからな、そこは慣れるように。」
「「「はい。」」」
皇子妃達が頷く。
「ちなみに来賓用の寝室はそれなりにあるが、来る者によって部屋を変えている。
例えばタケオは毎回同じ部屋にしていてな。
アリスや子供達と連れ立って来ているから大き目を用意し、護衛達は1人用の個室の方を宛がっている。
その辺は今後覚える事だろう。」
「そうですか。
王城外の宿にというのはあり得ますか?」
クリフが聞いてくる。
「んー・・・別にしても構わんが・・・タケオを外に泊まらせると誰かが接触してきそうでな。
それなら王城内に居させた方が良いと思って毎回王城内だよ。
ついでに研究所の会議では少数しか集まらないから第二研究所の人員全てが王城内だ。
ま、全貴族が集まる際は護衛達は難しいかもしれないが、主だった面々は全員王城内に泊められるだけの部屋はある。
なので、集める人数が多くなったとしても貴族とその他2名くらいは王城内に泊められると考えてくれて良い。」
「なるほど。」
クリフが頷く。
「ウィリアムに文官や外からの来訪がある場合は会議室ですね?」
セリーナが聞く。
「あぁ、タケオやジーナ、スミスと王族以外は基本的に会議室で話し合っている。
まぁ、タケオが持ってくる報告は他人に聞かせられんか、まだ公表出来ない内容かがほとんどだ。
それにあそこにはエリカが居るからな。
タケオと領地の話などをしているんだよ。
まぁ、クリフ達が王都に越して来た時に武雄が来たらお茶でも誘ってみる事だな。
執務室以外で話をする気はなくなるだろう。」
アズパール王が言う。
「私達はウスターソースで思い知っていますよ。」
ローナが言う。
「そうだったな。
タケオとは腹の探り合いはせずに正直に話しておけば、タケオも色々と話をするだろう。」
「タケオさんと腹の探り合いをして、不興を買ったらタケオさん何も言わないで帰っちゃうでしょうね。」
「そんな事すれば王都がどんどん置いて行かれる。
それは我が家だけでなく王都の住民達にとっても不利益だろう。
アンも含めてだが、タケオに関しては正直に話をしていこうな。」
「「「「はい。」」」」
クリフ達は改めて武雄との友好を維持する事を確認するのだった。
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エルヴィス伯爵領 ラルフの仕立て屋。
「・・・」
鈴音が軽く走ってビタッと止まる、そしてまた軽く走って止まるを繰り返している。
「スズネ殿、どうでしょうか?」
ラルフの所の職人が聞いてくる。
「・・・良いですね。
まだ若干の硬さはありますし、思っていたよりも重く感じますけど、明らかに今の革靴よりも踏み心地が柔らかい感触です。
それに試作品のインナーソールも違和感がないです。」
鈴音が足元のスニーカーを見ながら言う。
それを聞いて他の職人達もホッとする。
「・・・スズネさん、その靴は今までと違うのですか?」
アリスが聞いてくる。
「はい、違います。
アリスさんも履いてみてください。
ちょっと大きめですけど・・・数歩程度なら感触は楽しめます。
ちょっと待ってくださいね。」
鈴音が椅子の所に行き、自分の履いてきた靴に履き替える。
「では、失礼して。」
アリスが鈴音の横に座って今、鈴音が脱いだ靴を履く。
「・・・重いですかね?」
アリスがスニーカーを履いて軽く足を上げながら言う。
「そこはラバーソールの厚さを替えれば変わってくると思います。
今後の商品展開によりですね。」
「なるほど・・・では。」
鈴音の言葉を聞いてアリスが立ち上がり、数歩ゆっくりと歩く。
そして立ち止まり首を傾げる。
「・・・ふむ。」
アリスが店内をウロウロと歩く。
鈴音がしたように軽く走ってビタッと止まると。
「きゃ!?」
ビダンッ!
見事に柔道の前受け身を披露する。
その際にスニーカーは脱げてしまっている。
「アリスさん!?」
鈴音や店員が駆け寄る。
「びっくりしたぁ!」
アリスが立ち上がり言うのだった。
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